第159話:彼方の面影
死神と化したアレックスと曹操達がぶつかり合う。
「・・・・・・アマリチョウシニノルナヨ・・・・・・ザコドモガ‼‼‼」
身体中に力が漲ってきやがる・・・まさか髑髏の真価がこれ程とは思わなかった。
こいつは氣を流し込めことで髑髏と俺を繋げる一刃同体とする。装飾の髑髏が歯をぶつける動きはその同調させる段階で発する動きだ。
それにより今の俺は髑髏でもあり、髑髏もまたこの俺・・・アレックス・ヴォードでめある。
ただ欠点がある。逆を言えば今の俺は人間兵器でもあり、人としての感情はほぼ皆無。戦うことのしか出来ない存在となり、目標がいなくなるかリミッターが発動するまで止まることのない殺戮マシンだ。
だが今は流れに身を任せ、曹操を殺す。俺は最初に夏侯惇目掛けて斬りかかる。
「ウォオオオオオオ‼‼」
「ちぃ⁉舐めるな‼」
俺は身体を回転させながら髑髏を振り下ろし、夏侯惇は七星餓狼でそれを防ぐ。攻撃の隙を与えず連撃を浴びせる。
「くっ⁉なんだこいつ⁉」
「姉者⁉」
夏侯惇に斬りかかる中、少し離れた場所から夏侯淵が餓狼爪で弓矢を3本同時に放つが、夏侯惇を弾き飛ばすと左手でそれを全て掴み取る。
「フンッ‼‼」
「なっ⁉・・・・・・くっ⁉」
掴んだ弓矢全てをそのまま夏侯淵に投げ返すが、奴は寸での処でかわした。
「春蘭様‼秋蘭様‼」
「凪‼ウチ等もいくで‼」
「分かっている‼隊長‼」
「うむ‼些か卑怯ではあるが一斉に掛かるぞ‼そうで無ければ奴には勝てん‼」
「アレックス殿‼覚悟召されよ‼‼」
今の状況でも不利だと判断した徐晃は全員で一斉に攻めることにしたようだ。
「フッ・・・オモシロイ‼‼ジゴクヲミセテヤル‼‼」
「でりゃあああああ‼‼」
「せい‼なの‼」
「はぁあああ‼‼猛虎蹴撃‼‼」
三羽烏の連携にも反応する。李典の螺旋槍を滑らせながら弾き、于禁の双剣“二天”を受け流し、楽進の猛虎蹴撃は刀身で受け止めて左手で楽進の足を掴むとそのまま于禁と李典目掛けて投げ飛ばす。
「でりゃああああ‼‼」
「えぇえええい‼‼」
今度は背後からだ。許褚が大鉄球“岩打武反魔”で、典韋はまるで巨大なヨーヨーのような武器“伝磁葉々”を俺に投げ付けてくるが、髑髏の柄を地面に突き刺すと通過した瞬間に鎖と紐を握りしめ、そのまま二人を遠くに投げ飛ばした。
「うぉらあああああ‼‼」
「アレックス殿‼覚悟されよ‼」
「これは防げまい‼‼」
「悪く思わないでねアレックス‼‼」
・・・本当に鬱陶しい・・・・・・。今度は徐晃、鄧艾、曹仁、曹洪の4人による同時攻撃か・・・・・・。まず曹仁の餓狼岩剣を防ぎ、鄧艾の破城旋棍を脇で受け止めてそのまま曹洪の餓狼風爪を防ぎ、最後に徐晃の赤龍偃月刀を受け止めた。
「なっ・・・なんと⁉」
「其れがし等の攻撃を全て⁉」
「・・・ウットウシイムシダ‼」
魏の武将全ての攻撃を跳ね返され、あまつさえ子供みたいにあしらわれる。奴等からしたらショックだろう。
しかしそのまま身体を捻りつつ、曹洪の横腹目掛けて回し蹴りを見舞う。いきなりだったようなので曹洪は防御が間に合わず、徐晃、鄧艾、曹仁を巻き込むように吹き飛ばされる。
「くっ・・・・・・何という強さだ・・・・・・」
地面に倒れた徐晃は辺りを見渡す。辺りには予想を遥かに上回る威力にダメージが大きくその場に立てずにいる曹仁達。
このままこいつ等全員を皆殺しにしてやってもいいが気が変わった。こいつ等には主が目の前で無様に殺されるという屈辱を味合わせてやる。
俺は髑髏を構え直すと視線の先には絶を構える曹操の姿があった。
「ホゥ・・・・・・キサマモアラガウノカ?」
「私だけが何もしない訳にはいかないわ・・・・・・来なさい“死神”・・・どちらの鎌が強いか・・・」
「クックックックッ・・・・・・ナラバ・・・ソノナマクラオオガマゴトキサマノクビヲ・・・・・・」
笑いながら絶を短く持つ曹操に照準を合わせ、一気に地面を蹴った。
「キリオトシテヤラァアアア‼‼」
「くっ⁉」
曹操は素早く俺の薙ぎ払いに反応して絶にて受け止める。しかし俺は攻撃の手を緩めず猛撃を見舞ってやる。
「くっ⁉まだまだぁ‼‼」
「クソガキガ‼‼」
互いの大鎌がぶつかり合う。だが状況的には俺が押している。向こうは既存の技術で作られた戦闘用大鎌だが、こっちはジーンが作り上げた言わば天界の武器だ。
俺の猛撃を前に曹操の表情は厳しいものとなっていた。
「くっ⁉・・・まさしく死神ね・・・・・・」
「マダツヅケルノカ・・・・・・イイカゲンアキラメテクビヲヨコシヤガレ‼‼」
俺は一瞬だけ姿を消し、次に現れたのは曹操のすぐ目の前。曹操はすぐに絶を構えたが渾身の力を込めて奴の大鎌を粉砕してやった。
「なっ⁉・・・・・・がっ⁉」
刀身が全て砕け散り、柄にだけなった絶を見ている曹操の首を左手で掴み、そのままつるし上げる。
「コレデ・・・オワリダ・・・・・・」
それだけいうと俺は髑髏を構え、曹操の首を刎ねようとする。
「曹操殿⁉・・・・・・くっ・・・」
主を助ける為に徐晃達が立ち上がろうとするが身体がいう事を聞かないようだ。そして曹操の首に刃が届こうとした瞬間、俺の左腕に一本の弓矢が突き刺さった。
「クッ⁉・・・コシャクナ⁉」
「華琳様‼‼」
矢が飛来した方角を見ると丘の上には弩“裂空”を構えた張郃。それに軍師の郭嘉に程昱、負傷した曹仁達に駆け寄る黒騎兵。
「今の内に皆さんを回収してください‼‼」
「ありったけ投げちゃってくださいです〜。その隙にトンズラしちゃうのです〜」
そして一部の黒騎兵が何か投げ付けてきて、暫くしてから辺り一面に煙が立ち上り始める。
奴等が投げ付けたのは煙玉か・・・・・・。
流石にいきなりの発煙に対処が遅れ、俺は煙に巻かれてしまう。
そして暫くしてから煙が収まったが、辺りを見渡しても誰もいない。そして離れた場所に馬に乗らされて退却している曹操の姿を確認出来た。
「・・・・・・サクセン・・・シッパイカ・・・」
曹操に逃げられた。どうやら将は誰も仕留められなかったようだが、膨大な数の敵を仕留められたのも確かだ。
俺は氣を鎮め、瞳の色が深紅から灰色へと戻って行く。そして深く息を吸い込むと・・・・・・。
「曹操 孟徳‼‼」
大声で奴を呼ぶと、向こうも聞こえたようで振り向いた。
「今回だけは貴様等の将に免じて見逃してやる‼‼だが再びこの地に足を踏み込めば、次こそは貴様等を八つ裂きにしてくれる‼‼それを覚えておけ‼‼」
それだけ叫ぶと俺は髑髏を肩に担ぎ、いつの間にか掛け声が聞こえなくなっていた合肥へと引き返して行く。
合肥の戦いにて曹操軍は出陣させた20万もの兵力の内、14万が死傷。捕えられた捕虜もその場で首を刎ねられた。
対して怒りに満ちていた孫策軍は10万の兵力差を覆し、奇跡的にも死傷者は3万にまで抑えられていた。
正史における魏軍の勝利で終わったとされる合肥の戦いは孫策軍の圧倒的勝利で幕を閉じる。
この戦いで魏軍は占拠した寿春を別働部隊により奪還され、揚州からの完全撤退を余儀無くされた。そしてアレックスもライルの容体を気に掛けてすぐ建業へと帰還していく・・・・・・・・・。
合肥での戦いから10日後、ライルが倒れたという事実は予想以上に影響されていた。その報は一刀達にも届いていた。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[慰安部隊の派遣]
盟友の事態に御遣いが駆けつける。