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第152話:倒れる銀狼

雪蓮とライル。互いが大事な場所へと向かうが・・・・・・。

この一ヶ月間、何も起きない。一応は曹操軍に何やら活発な動きが見られるという報告を受けて冥琳殿は国境付近に監視部隊を派遣して警戒にあたっている。何かあれば直ぐに伝令が戻って来る。


しかし万一に備えてヴェアウルフにはデフコン3を発令。何か有事が起きれば何時でも出撃出来る態勢を整えている。

俺もすぐに現場指揮が出来るように執務室にMTVアーマーベストとLHWヘルメット、更にはAN/PVQ-31BとAN/PEQ-16、AFG2を取り付けたHK416の10inモデルを鍵付き家具の中に保管している。


俺が執務室で書類の裁断をしていると不意に扉がノックされ、俺は入室許可を出す。


「は〜い♪ライル♪」

「雪蓮殿、どうかなさいましたか?」

「・・・ねぇライル。・・・今日は暇?」

入室してきた雪蓮殿が都合を聞いてきた事態にビックリし、そのしおらしい仕草に改めてドキっとした。

俺は顔を紅く染めながら応える。


「え・・・ええ・・・・・・緊急の仕事は今のところありませんし、細かい裁断はまだ残っていますが、後回しでも大丈夫です」

「・・・ならちょっと付き合ってくれるかな?」


断る理由も無く雪蓮殿からの誘いで二つ返事で返す。

Mk45A1Aが格納されたCQCホルスターを装着すると雪蓮殿に手を引かれて執務室を出て、それぞれ乗馬すると城外へと向かった。






そして俺は城からほんの少し離れた森の中にある小川へと連れてこられた。鳥の鳴き声に河のせせらぎしか聞こえない非常にのどかな場所である。

スレイプニルを待たせると雪蓮殿に手を握られながら連れて行かれ、森林を抜けた先に到着した。小さな滝があり、澄み切った小川には川魚がたくさん泳いでいるのが確認出来る。だが俺は別箇所に視線を向けていた。


「ここは・・・」


小川の畔にある荒削りではあるが設けられた二つの墓石。そこに彫られている名前はそれぞれ“孫堅 文台”と“呉狼 雷藩”。


「ここにね・・・・・・私の母様と父様が眠ってるの」


やはりだ・・・・・・つまりここは雪蓮殿のご両親が眠られている神聖な場所。確か前に祭殿から2人の墓の場所を知っているのはごく僅かと聞かされている。


「ここが・・・・・・しかしなぜこんな場所に?」

「父様が嫌がってたのよ。死んでまで王という呪縛に囚われたくはないからって・・・・・・そして母様は父様の側で眠りたいと・・・・・・」


何と言うか・・・・・・いかにも雪蓮殿のご両親という感じだ。だが分からないこともない。死んだ後くらいはゆっくりと眠りたいものだ。

軽く説明しながら雪蓮殿は懐から布を取り出して汚れを取り始める。


「手伝います」

「ありがとう」


暫く掃除をしていき、やがて二つの墓標は汚れ一つない綺麗さを取り戻した。


「こんな感じでよろしいですか?」

「ええ・・・綺麗になったわ・・・・・・母様に父様。紹介するわね・・・・・・この人はライル。私の・・・・・・大切な人よ」


雪蓮殿から大切な人と言われて少しドキッとしたが冷静さを保ちつつ2人の墓前に軽く頭を下げる。


「・・・・・・お初に御目に掛かります孫堅様、呉狼様。私はライル・ローガン・ブレイド中佐。孫呉海兵隊司令で雪蓮殿を支えております」

「もぅライルったら・・・・・・こういう時は嘘でも恋人だって言うものよ♪」

「なっ⁉」

「ふふっ♪(恋人だって言って欲しいのは本音なんだけどね♪)」


悪戯っ子みたいな笑みを浮かべながら大胆な一言を前に俺は恥ずかしくなって視線を反らしてしまう。

そう語る雪蓮殿は、どこか寂し気で有りながらも嬉しそうで誇らし気だった。


「ねえライル、孫呉の名前の由来を知ってる?」

「確か孫家所縁の呉群の一文字を繋げたと記憶しています」

「それもあるけど、少しだけ違うわ」

「?」

「孫呉は母様の孫堅と父様の呉狼をなぞったのよ。2人の理想を実現させるという意味合いを込めてね・・・」

「理想・・・・・・ですか」

「うん・・・みんなの・・・・・・呉の民の・・・仲間や家族の笑顔の為に・・・大陸に平和を齎す事を・・・・・・」


俺は雪蓮殿の言葉を聞き続ける。


「それが孫呉の悲願・・・父と母の夢・・・私の夢・・・」

「・・・・・・・・・」

「父様、母様見ていて・・・・・・2人の夢・・・呉のみんなの未来の為に・・・あなた達の娘は命の限り・・・戦うから・・・」

「・・・・・・俺も」

「ライル?」

「俺も雪蓮殿と共に・・・俺たちウルフパックを家族として迎え入れてくれた呉という家族の為に・・・・・・戦います」


これが俺の願い・・・民の笑顔、仲間の笑顔、そして何よりも雪蓮殿の笑顔の為に武器を手に取る。それを2人に伝えなければならない気がしたのだ。


「・・・・・・・・・・・・ライル」

「何でしょう・・・⁉」


声を掛けられて雪蓮殿に振り向いた瞬間、俺の顔のすぐ前に雪蓮殿の顔があった。彼女の両手は俺の両頬を添えられ、唇は彼女の唇に重ねられている。


暫く続いた彼女とのキス。そして唇が離れると俺は状況を理解しようと目が点になっていた。


「し・・・・・・雪蓮・・・殿・・・・・・」

「ライル・・・・・・ありがとう・・・」

「・・・・・・・・・」

「ありがとうライル・・・私達と出会ってくれて・・・・・・私達の処に来てくれて・・・」


そういいながら雪蓮殿は俺の胸に顔を埋めて来る。その小さな手は俺の背中に回される。


「ライル・・・・・・愛してる・・・」


俺はその言葉を聞いて彼女を優しく包み込む。


「・・・・・・俺もだ・・・俺も・・・君を愛してる・・・・・・」

「ライル・・・」

「君を離したくない・・・・・・泗水関で初めて出会ってから・・・・・・ずっと君を想い続けていた・・・好きだ・・・・・・雪蓮・・・・・・愛してる」

「私も・・・あなたが好き・・・・・・ライル・・・愛してる・・・・・・ずっと一緒にいて・・・離さないで・・・」


互いの気持ちをしっかりと伝え、俺達は再び唇を重ねようとした瞬間、少しだけ離れた茂みから何か感じた。

草木が不自然に揺れる音に弦を引く音、そして微かな殺気・・・俺はそれを感じた瞬間に何かが光った。そして考えるよりも身体が先に動いていた。


「雪蓮‼‼」

「なっ⁉ライル⁉」


俺はすぐに雪蓮を押し倒し、その瞬間に俺の左肩に一本の弓矢が掠った。


「ぐぅ⁉ちっ‼」


俺は倒れながらもCQCホルスターからMk45A1Aを取り出して弓矢が飛んで来た茂みに連続で45,ACP弾を発射。


「ぐあっ⁉」

「あぐっ⁉」


向こう側から被弾して乾いた悲鳴が聞こえ、7発の弾を撃ち終わった後に一人分の逃げ出す足音が聞こえた。1人だけ取り逃したようだ。俺は左肩を押さえながら茂みを調べる。


そこには死体が二体とまだ息がある敵兵。俺はそいつが目を覚ます前に再び気絶させる為に腹部に蹴りを見舞う。


「ライル‼大丈夫⁉」

「えぇ・・・なんと・・・か・・・」

「ライル⁉」


俺は雪蓮に振り向いた瞬間、左肩に酷い激痛が走る。息が苦しく、力が入らない上に視界がぼやけて来た。

俺は力を振り絞り、掠った際に破けた迷彩を裂いて傷口を調べる。出血はしていないが傷口の色が急速に紫色へと変色していた。


俺はそれが何なのか直ぐに理解できた。


「くそ・・・・・・毒かよ・・・」




ライルが毒矢を受けた。それは雪蓮達の怒りをかうのに充分過ぎる理由になった。暗殺者の所属が曹操軍だと知った雪蓮達は・・・・・・。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[修羅]

孫呉の怒り、ここに覚醒する。

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