第151話:覇道
乱世の奸雄が遂に動き出す。
私達徐晃隊は許昌におられる曹操殿の呼びかけに応じてすぐに副官の凪を引き連れて許昌へと馳せ参じた。
許昌には既に夏侯惇殿や夏侯淵殿、曹仁殿、曹洪殿、凜、風、桂花と我が軍の重鎮達が集められ、物々しい雰囲気に包まれていた。
「曹操殿、お待たせしてしまい申し訳ありません」
「構わないわ牙刀、すぐに軍議を始めたいから席についてちょうだい」
そう言われて我等はあてがわれた椅子に腰掛ける。隣には参刃がいた。
「みんな揃ったわね。早速軍議を始めるわ」
曹操殿が全員に話し掛け、視線が一斉に曹操殿へと向けられる。
「みなのお陰で我等は漢の北側全域に荊州北部を手中に治めることがなった。しかし我が覇道を世に実現させるには我が軍は南軍をしなければならない」
「遂に始まるのですな曹操殿」
「そうよ参刃」
参刃の問い掛けに曹操殿は頷く。確かに我が軍は既に漢の北部にある10個の州に加えて中心に位置する荊州北部を陥落させ、残る領土は孫呉が治める揚州と交州、劉備が治める益州、そして荊州中部と南部を残すのみとなった。
兵力、国力共に二つの陣営を上回っている。
「だから私はここに上意を命ずる。我が軍は準備が整い次第南に軍を進め、呉を降す」
その言葉に全員が様々な反応を示す。呉にはライル殿が率いる天の軍隊の他に精鋭揃いの孫呉水軍、更には英雄孫策や軍師周瑜。
名高い武将や軍師が多数在籍していて、今は兵力の調達が滞っているらしいが一兵卒も練度が高い。
すると反対側に座っている司馬懿殿が口を開いた。
「曹操様、お一つよろしいか?」
「何かしら?」
「なぜこの時期に呉を攻めるのか理解しかねます。今は呉ではなく統治してまだ日も浅く、兵力が安定していない劉備を攻める方がよろしいのではありませぬか?」
「司馬懿の言うことにも一理あるわ。だが我が覇道にそのような楽な道など不要。相手が力を付けてから全力で倒す。それが曹 孟徳の戦運びよ」
自ら困難な道へと挑む。それが曹操殿の信条であり、これまで何度もそれで勝利を勝ち取っている。
「それに・・・呉を先に攻め込んで降すという理由はあなたも分かっている筈よ」
「・・・天の軍隊と呼ばれている群狼隊を手中に収め、その圧倒的な武力と戦闘力を用いて一気に攻勢を掛ける」
「そうよ。そして私は天の御遣いと呼ばれる北郷 一刀よりも現在の呉の礎を築いた江東の銀狼ライルの方が脅威と認識している。
だが逆を言えばあの男を配下に加えられればこの上ない戦力となる。我が覇道を実現させるにはあの男の力と名声が必要となるわ」
それだけ言うと司馬懿殿は“ならば私は何も言いません”とだけ口にして着席する。
「それで桂花、兵力はどのくらい用意できるかしら?」
「はっ、18万は用意が可能です」
「キリが悪いわね・・・・・・20万を一ヶ月以内に用意なさい。出来るわね?」
「は・・・はい‼」
「凜」
「はい」
「あなたは攻城兵器の手配を。第一目標の寿春で必要になるわ」
「御意」
「風」
「はい〜」
「あなたには兵糧の手配を命じるわ。長期戦を考慮にいれて余分に用意して頂戴」
「分かりました華琳様〜」
桂花、風、凜の3人に的確な指示を下す。
「春蘭、秋蘭はそれぞれ前衛の右翼と左翼。牙刀と参刃は中央、司馬懿の私兵部隊には中衛を任せるわ」
「「「「「御意」」」」」
「季琳と愛琳にも前衛を任せるわ。季琳は春蘭と共に右翼、愛琳は秋蘭と行動しなさい。いいわね?」
「あぁ、任せてくれ華琳」
「よっしゃ‼腕がなるじゃないか‼」
「頼もしいわね。それと牙刀」
「何でしょう?」
「確実にライルは最前線に回されるわ。この中であの男に立ち向かえる武を秘めているのはあなただけ。だからライルだけは必ずあなたが倒しなさい。いいわね?」
そう言われると全員が私に視線を集中させる。確かにこういうのも何だが、ライル殿の武に敵うのは私だけ。夏侯惇殿や凪では難しいだろう。
私はそれ等を見て拝礼をとる。
「・・・・・・分かりました。この徐 公明。必ずやライル殿を討ち負かしてご覧に見せましょう」
私に任された任務は重要だ。我が好敵手のライル殿との一騎打ちに勝たなければならない。もしライル殿との一騎打ちに勝利出来ればその時点で呉軍の士気は地に落ち、呉軍を屈するきっかけともなろう。
この後にそれぞれの兵力と戦準備を命じられて解散となった。次代をゆく孫呉との戦い。本来なら心踊る状態ではあるが、何だが嫌な予感がする。
次の戦・・・分からないが何かとんでもない事態が起こる予感がして仕方が無い。
しかしもはや呉侵攻は可決した。今更覆すことなど叶わない。気合を入れ直して私は凪と共に部隊の調子を整える為に部隊へと戻る・・・・・・・・・。
とある晴れた日、ライルは雪蓮殿に連れられてとある場所へと赴いていた。そこは彼女達にとって大切な場所。
そこで話している2人に何かが動き出す。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[倒れる銀狼]
呉の怒りのきっかけが生まれる。




