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第150話:冥琳とアレックス

仕事を早く終わらせた冥琳。休む為に歩いていると何かが聞こえる。

私の名前は周瑜。親友である雪蓮が率いる孫呉にて大軍師をしている。ここ2年で呉の発展は目を配るものがある。


2年前に袁家という理由で独裁者に祭り上げられた袁術こと美羽を救い出して独立を果たし、袁紹討伐で名を轟かせ、更に交州を平定させて貿易を発展させているというものだ。


だが私達だけではこれほど円滑には進まなかっただろう。これらの偉業には奴等の影響が多大にあった。


ライル率いる天の知識が与えられた孫呉の最精鋭部隊“孫呉海兵隊”だ。天の軍隊とも呼ばれている群狼隊が我等に協力しているということで志願兵や移民が増え続け、今は落ち着いているがそれでも軍民共々充実したものとなっている。


そのお陰で私の仕事も多忙にはなったが、やり甲斐はあるので全く苦にはならない。だが少し前から・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・」

「周瑜様、どうかなさいましたか?」

「いや・・・・・・何でもない・・・」


職務には影響しないのだが“気になること”が頭から離れなくなっていたのだ。


「お疲れなのでしょうか?最近なんだか溜息の回数が増えているように思われるのですが・・・」

「いや・・・大丈夫だ。それに最近になって曹操の動きが活発な時期だ。疲れているだからという理由で休む訳にはいかない」

「それはそうですが・・・・・・」

「それよりも、あと必要な案件は?」

「優先させる案件は先程のものが最後になります」

「そうか・・・」


私と共に裁断している文官は私が育て上げた弟子達。かなり教え込んで並みの文官よりも遥かに優秀だが、優秀過ぎるのも考えものだな・・・。


「後の案件は我等だけで裁断出来ますので、周瑜様はご休息なさって下さい」

「最近になってから働き詰めなのですから、後は我等に任せてお休みになられて下さい」

「そうか・・・・・・ならばお言葉に甘えることにしよう」


部下達に勧められて私は筆を置いて退出する。しかし休息といっても特にやることはないのだ。


「ふふっ・・・・・・それにしても・・・」


軽く笑いながら私は廊下を歩く。


「まさか私の封じた“女”が疼くとはな・・・」


少し前から私は“とある男”に好意を抱いていることに気が付いた。その男は相棒を常に支え、更には自らも最前線で戦う猛者。

だが私生活では誰にも気兼ねなく接し、この前も私の仕事をさり気なく手伝ってくれたという優しさも持っている。


私がそう考えていると中庭から何やら聞こえて来た。どうやら音楽のようだ。

私は趣味として音楽を聴き、私自身も二胡を演奏することもある。気になったので私はそのまま中庭へと足を運んだ。


「あっ・・・・・・」


そこにいたのは木と木に何やら長い網のようなものを結びつけ、すぐ側の岩に腰掛けて弦楽器を引いている迷彩服を身につけた金髪の男・・・・・・アレックスだ。

木々から漏れる木漏れ日やそよ風も合間って何とも神秘的な雰囲気を醸し出し、私は柱の影に隠れながらそれに暫く魅入っていた。


しかしアレックスは弦楽器を弾くのをやめ、軽く笑いながら私の方を見る。


「いつまでそこにおられるのですか冥琳殿?」


気が付かれてしまい、仕方なく私は柱から姿を現す。


「流石だなアレックス、いつから気が付いていたのだ?」

「少し前です。大体あそこの角からこちらに到着する中間辺りですね」

「殆ど最初からでじゃないか・・・・・・相変わらず人が悪い」

「どうも・・・・・・それで冥琳殿は何をされていたのですかな?」


互いに軽く笑みを浮かべながら話している。


「あぁ、私の方は休息だ」

「もう終えられたのですか?」

「いや・・・重要な案件を確認したら文官達が残りを引き受けてくれた。少しは休んだ方がいいとな・・・」

「それは・・・・・・何とも」

「それで、アレックスこそここでなにをしていたのだ?」

「今日は休みなんです。晴れた日だから久々に外でくつろごうと・・・」


そういいながらアレックスは備え付けられた机に置かれている酒を軽く口にする。確か“うぉっか”というかなりキツイ酒だ。


「それでそれは何という楽器だ?」

「ギターですか?」

「ぎたー・・・・・・見る限りでは天の国の弦楽器のようだが・・・」

「概ねそんな処です」


成る程・・・天の国の弦楽器か・・・・・・二胡とは違う音色で心が落ち着く。私が眺めているとアレックスが何か閃いたようで、私の顔を覗き込んでくる。


「それで冥琳殿、確か今はお休みになられるのですね?」

「うむ、しかし特にやることなどはないから部屋に戻って本でも読もうかと思ってな・・・・・・」

「・・・・・・そんなのじゃ休みとは言えませんよ」

「ふふっ、だが仕方なかろう。他にやることがないのだからな」

「でしたら・・・・・・それっ」

「うわっ⁉」


そういうとアレックスは私の手を軽く握って、先端を木に結び付けてある網に私を放り込んだ。


「ちょっ⁉アレックス⁉」

「あなたは無理をし過ぎる傾向がありますからね。無理矢理にでも休んで頂かないと聞かないと判断しました」

「・・・全く・・・・・・だから私は「それに、どんな感触ですか?」感触?・・・・・・」


そう言われて私は放り込まれた網の感触をすぐに調べる。暫く考えていると・・・・・・。


「こ・・・これは・・・・・・」


これは何とも不思議な感覚だ。表現は困難だが包み込まれるような感覚が表現で一番的確だろう。


「お気に召しになられましたか?」

「う・・・うむ・・・・・・何だか不思議な感覚だ・・・・・・まるで揺りかごだな」

「確かにハンモックと似てる箇所がありますね」

「ハンモック・・・・・・これは天の国の寝具か何かか?」


そう尋ねるとアレックスは頷いた。ハンモック・・・・・・これは確かに心地良い感覚だ。そよ風でハンモックがゆっくりと揺れて本当に心地良い。私が暫く堪能しているとアレックスが再びギターを手に取り、岩に腰掛けると再び弾き始めた。


「今日位は休んでもバチは当たりません。身体の力を抜いてゆっくり休んで下さい」

「ふぅ・・・・・・分かった・・・ならば・・・ゆっくり・・・・・・休ま・・・せて・・・」


アレックスが弾くギターの音色に加えてハンモックの心地良さによって睡魔がやって来て、微かな抵抗も虚しく私の意識は夢の中へといってしまった・・・・・・。







アレックス視線


ふぅ・・・やっと眠ってくれた・・・・・・。


俺はギターを弾きながらハンモックで眠る冥琳殿を伺う。その表現は穏やかで本当に気持ち良さそうだ。


彼女は呉にとって掛け替えのない存在だ。それに応えるかの如く彼女も日々努力しているが、それが無理を強いられている状態。

それが続けば確実に倒れてしまい、最悪の場合は正史の周瑜と同様に肺結核でこの世を去ることにもなりかねない。


俺はそんな末路などまっぴらごめんだ。


少しでも彼女の疲れが癒せるのなら俺はどんなこともしてやる。

だが今は・・・・・・気持ち良さそうに安心しきった表情で眠る天女の為に演奏に徹しよう。それが俺の・・・・・・彼女に対する気持ちだ・・・・・・。

魏の許昌。ここに曹操や夏侯惇、更には徐晃や司馬懿達も集められ、とある軍議が行なわれていた。

それは曹操にとって避けては通れぬ大事な局面でもある。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[覇道]

乱世の奸雄が遂に動き出す。

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