第15話:ウルフパック出撃
泗水関で時間を稼ぐために籠城するウルフパックと董卓軍。だが劉備義勇軍が出現したことで問題が発生する。
泗水関で防御線を構築して2日、その間に俺達は偵察隊を送ったり、レイヴンを飛ばして上空偵察を実施したりして情報を集めた。
予想通りあれから大小様々な勢力が合流。その中でも偵察写真で注目の勢力を2つ見つけた。
深紫の曹旗に明緑の劉旗、“乱世の奸雄”こと曹操 孟徳率いる魏軍と“仁徳の王”こと劉備 玄徳率いる劉備義勇軍だ。
俺はアレックスと共に端末でその様子を伺っている。
「本当に名高い武将が集まったな・・・・・・」
「ああ、今朝方から曹操軍と劉備軍も到着した。敵の総戦力はこれで20万を超えた計算になるぞ」
「だがその中で脅威なのは孫策、劉備、曹操の3つだろう。見る限りだと統制も取れているし、全体的な指揮も高い」
「反対に袁家・・・・・・特に袁紹の軍勢は数に頼り切っている。それに何なんだ、この派手で仕方がない金ピカの鎧は・・・・・・」
映像を見る限りでも袁紹軍兵士の装備は理解しがたい。自分達の威厳を誇張するかの如く派手な金色の鎧。
俺たちからすれば何のタクティカルアドバンテージ(戦略的優位性)も存在しない。実用と観賞用は違う。完全に無駄な装備で連合からすれば凄い“お荷物”だろう。
「そして・・・・・・一番気になるのが・・・」
アレックスはそういうと映像を次のものに変える。そこに映し出されたのは1人の青年と牙門旗。
「白い学生服を着た男か・・・」
「それにこの牙門旗、部下に確かめさせたら日本の武将が使っていた旗印らしい。確か島津一族の家紋って言っていたな」
「・・・てことは、この少年が・・・・・・」
「ジーンが言っていた俺達と同じ別世界からきた“天の御遣い”だ」
この世界に来て約3ヶ月。ようやく見つけ出せた。これが味方同士なら文句無しだったのだが、生憎と今は敵同士。下手に接触するわけにもいかないだろう。それに今後のこともある。
考えていると無線機に通信が入った。俺が出ると内容は“関の牙門旗を掲げた一段が急速接近”。
俺は警戒態勢発令と待機命令を指示すると城壁から外を見る。
「我が名は劉備 玄徳様に仕える義の刃、関羽だ‼敵将華雄よ‼門を開けて私と勝負しろ‼」
関羽と名乗る黒髪の少女を見て俺達は内心驚かされた。確かに手にある武器は青龍偃月刀で間違いないなさそうだが、目の前にいる関羽は髭ではなく髪が美しい美少女。
まさしく美髭公ならぬ美髪公と呼ぶに相応しい。
「どうした華雄⁉言われてばかりではないか‼噂に聞いた猛将も廃れたと見える‼そのような臆病者は一生そうやって引きこもっているのがお似合いだな‼」
あからさまな挑発に俺達は城壁で失笑しながら聞いている。
「よくもまぁあんなに・・・・・・」
「挑発して誘い込もうとしているのがバレバレだな。馬鹿らしさを通り越して感心するよ」
「しかし何で対象が華雄なんだ?」
「さあな・・・・・・なあ・・・何か忘れてる気がするんだが・・・」
「お前もか・・・俺は何だか嫌な予感がしていてな・・・・・・」
2人が何か引っ掛かると思って必死に思い出そうとした矢先、いきなり関に銅鑼が鳴り響いた。それもこのリズムは確実に出陣のものだ。
「なんだ⁉」
「出陣の合図⁉誰が指示した⁉」
いきなり鳴り響いた銅鑼に戸惑っていると泗水関の城門がいきなり開いき、関羽軍は方向転換して退却していく。俺が見下ろしてみると華雄が部隊を率いて出陣し始めた。
「お・・・おい‼マジかよ⁉」
「どうした⁉」
「あの馬鹿・・・・・・・・・部隊を連れて出陣しやがった⁉」
「なんだと⁉」
「嵐‼戻って来い‼罠だ‼」
大声で必死に戻るように促すが暴走状態の彼女には届かなかった。そしてようやく思い出した。正史で華雄を討ち取ったのは孫堅だが、三国志演義によれば華雄は関羽に討ち取られている。今回と状況が全く同じだ。
その直後に霞が慌てて駆け寄ってきた。
「大変やライル、アレックス‼嵐が挑発されて勝手に行きよった‼」
「分かってる‼・・・・・・あの馬鹿が・・・・・・・・・あんな安っぽい挑発に乗せられやがって⁉」
「どないしよ⁉こんなん予定にないで⁉」
霞が慌てている様子を横目に俺は相棒に視線を合わせる。すると意図を理解したのか、アレックスは小さく頷く。
「霞、関の防衛を任せる。俺達であの馬鹿を救い出す」
「大丈夫なん⁉」
「分からない・・・・・・だが俺達は仲間を見捨てたりはしない・・・・・・ウルヴァリンからA中隊各員へ‼A中隊は完全装備で城門前に集合せよ‼」
無線で指示を下すと俺もフォアグリップとC-MOREオープンドットサイトを取り付けたHK416をCIRASアーマーベストのスリングに取り付けて城壁を降りる。
城門前に着くとHK416、HK417、HK417 DMR、Mk46 Mod1などを装備したA中隊全員が整列していた。
俺もMICH2001を被ると彼等に視線を向ける。
「これより出撃する‼我らA中隊は先行した華雄将軍を救出‼遅滞攻撃を行ないながら関に帰還だ‼」
『Sir yes sir!!』
「アレックスとレオンの隊は引き続き警戒維持‼退却の際にはA中隊を援護しろ‼」
「「Yes sir!!」」
「銅鑼を鳴らせ‼城門を開けろ‼」
そういうと城門の警備にあたっていた董卓軍兵士が扉を開け、銅鑼を高々と鳴らす。そしてその出撃を腕に貼り付けられたウルフパックの部隊章“牙を剝いたフェンリル”が待ち焦がれていた・・・・・・・・・。
独断で出陣した華雄を救い出すために出陣するライル率いるA中隊。この世界で初の実戦の相手は劉備義勇軍。
そして華雄に追い付くとライルは天の御遣いと遭遇する。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[サーチ&レスキュー]
戦場で狼と御遣いが対峙する。