第147話:司馬一族
曹操以上の野心を誇る司馬懿にも大事なものはある
一刀達が益州を平定してから暫く経過した頃の洛陽城内にある一室。劉備軍が益州を平定したことで一時は慌ただしかったが、今では平穏を取り戻していつも通りの雰囲気を醸し出していた。
この部屋を執務室としている司馬懿 仲達は日々の執務に時間を費やしていた。
「全く・・・・・・劉備が益州を平定した位で慌ただしくしおって・・・私の時間が無くなってしまうではないか」
「父上。その時間を確保したいが為に非番の私達を駆り出したのをお忘れではないでしょうね?」
「全くだぜ親父。俺だって今日は久々に釣りでも行こうかと思ってたのにさ」
「う・・・うるさいぞ。子元、子上」
私の左右にある机で執務を手伝わされている二人の息子。名前は司馬師 子元と司馬昭 子上。二人はそれぞれ私の私兵部隊の一軍を率いている武将だ。
「だけどなぁ親父。埋め合わせはやってくれよな。それに残業代に美味い飯と美味い酒「今は仮にも執務中だ。そういった話は後にしろ誠璽」うぐ・・・・・・分かってるって誠龍兄さん」
仕事が終わった後の埋め合わせを要請する誠龍に誠璽が口を塞ぐ。確かに今は私が頼み込んだこともあるが執務中だ。そういった話はまた今度にして貰いたい。
「しかし父上、今は劉備の軍勢が益州を平定したがまだ国内は安定していない。それなのに曹操殿はなぜ攻め込む事を容認されないのでしょうか?」
「さぁな。しかし曹操殿は相手が力を付けた頃に決戦を挑んで勝利することをやり方としているのだ。自らの覇道の為にな・・・・・・」
「はぁ・・・・・・相変わらず堅苦しいお方だな曹操嬢ちゃんは・・・・・・」
確かにまどろっこしい。敵は叩ける内に叩いておかないといずれは自らの破滅へと向かうというのに・・・・・・。私が今の指導者であれば遠慮なく攻め込んでいる。そう考えながら筆を進めていると執務室の扉が開けられて誰かが入って来た。
数は二人。一人は男で銀色の鎧を身に着けた大人しそうな青年で、もう一人は長い髪をまとめて不敵な笑みを浮かべている女だ。もちろん私は誰なのか知っている。
「誠白様、お仕事は捗っていますか?」
「うっ・・・・・・し・・・春華・・・・・・」
私に話しかけてきたのは正妻である張 春華。真名は小春。私が唯一愛した女であるが同時に私がもっとも恐れている女でもある。
「あら?息子二人を駆り出しているというのにまだ終えられておられないのですか?」
「うっ・・・・・・そ・・・それはだな小春・・・・・・「まさかとは思いますが、我が子等のせいにさられないでしょうね?」う・・・・・・すまん・・・」
笑顔ではあるがどこか怒っている小春の怒気に私は思わず身を縮まってしまう。
「そ・・・・・・それで・・・お前はどうかしたのか?」
「あら、私は3人に間食の肉まんをお持ちしただけですよ。最も、この子はお仕事の別件で来たようですよ。ねえ」
「は・・・はい」
そういって小春に背中を押されて前に出てくる先ほどの青二才。こやつは諸葛誕。字を公休。我が司馬一族と並ぶほどの名門である諸葛一族の人間で、劉備軍の諸葛亮と呉の諸葛謹の親戚といっていた。こいつは私の下で軍師としての修行をしている最中だ。
「それで・・・・・・お前は何を持ってきたというのだ?」
「はい。司馬懿様に火急の竹簡が舞い込んで来ましたのですぐにお目通りをお願いいたします」
「・・・今は我等は見てのとおり多忙だ。そういうことならお前一人でも出来るだろうが・・・」
「え?・・・・・・し・・・しかし・・・これは曹操様直々の指示でありますが・・・」
「曹操様からだと?」
「はい」
「はぁ・・・・・・分かった。さっさと寄越せ」
本来ならこいつに押し付けたいところだが曹操からの指示であるなら従わなければならない。嫌々ではあるがそれを片手で受け取るとすぐに目を通す。見ると書かれている内容は先日の私兵部隊を用いた賊討伐の報告要請だ。そういえばまだ報告書を出していなかった。
「はぁ・・・・・・」
「どうかなされましたか父上」
「なんでもない。先日の賊討伐の報告書の催促だ」
「あら、まだ報告書を出しておられなかったのですか?」
「ぎくっ・・・・・・」
「私は前にも言った筈ですよ。報告はその日の内に済ませるべきものだと・・・」
「い・・・いや・・・・・・それは・・・その・・・・・・すまん」
「でしたら・・・早く仕事を済ませる必要が出てきましたね。誠璽と誠龍もですよ」
「分かっています母上」
「俺達の方はあらかた終わってるぜお袋」
「まぁ・・・流石は自慢の息子達ね。旦那様も少しは見習われたらどうですか?」
「う・・・うむ・・・」
・・・・・・本当に頭が上がらない。なんというか本当に掴み所のない性格をした怖い女だ。だがそんな小春だからこそ私は惹かれたのだろう。普段からこんな日常をしているのだから飽きはしない。だからこそ私は自らの野心の為に動かなければならない。たとえそれが茨の道であっても・・・・・・・・・・・・。
呉の美周嬢、冥琳こと周瑜 公謹。彼女はとあることで悩んでいた。ある人物の顔が最近になって離れなくなっていた。
彼女が悩んでいた処を親友が話しかける。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[冥琳の憂鬱]
希代の大軍師も恋沙汰には弱い。