第145話:猫少女を捕まえろ
森林で猫少女を捕まえる。
建業郊外にある森林地帯。とはいっても円形に広がる半径3km程の小さな森ではあるが木々や草が密集して鬱蒼としている先が見えない森でもある。
そんな森の中を俺とサイファーファーターを含めた15人と黄蓋様や穏の30人部隊と一緒に進んでいた。
「黄蓋様、いい加減教えて頂けませんか?」
「何がじゃ?」
「我等がこんな森のど真ん中で移動しているかということです」
「そうですね〜。もうそろそろいいんじゃないですかぁ」
「まあ・・・頃合いか。実は今日は隠密の鍛錬じゃ」
「隠密・・・ということは明命の部隊と合同ですか?」
「いや、今日は儂ら全員と明命一人で鍛錬をするんじゃ」
その言葉を聞いて俺達は呆気に取られる。何しろ45対1で一体どんな鍛錬をするのか分からないのだ。
「そんな顔をするでないわぃ。気を引き締めんかい‼」
「痛っ⁉」
「ぐわっ⁉」
間抜けな顔をしていたのだろう。俺達に喝を入れるように黄蓋様が後頭部を思いっきり引っ叩いた。
「いたたたた・・・・・・で・・・ではどんな訓練をするんですか?」
「うむ、今日はこの森の中で息を潜めとる明命を我等が捕まえるんじゃ」
「そうですよ〜。明命ちゃんは私達全員を返り討ちにしたら勝ちで、逆に私達は明命ちゃんを捕まえれたら勝ちになりますぅ♪」
・・・つまりは鬼ごっこということだろう。
「しかし祭殿、それでは有利なのでは?」
「サイファー、あまり明命を甘く見ん方がよいぞ。この森は明命にとっては庭のようなもんじゃし、何よりも明命に捉えられたりしよれば・・・」
黄蓋様が話している途中で後方にいた孫策軍兵士がいきなり倒れた。俺達はすぐに駆け寄るが気絶しているだけのようだった。
「こうなるのじゃ」
「こ・・・これは明命が?」
「そのようだ・・・つまりは明命ちゃんに捉えられたらこうなると?」
「はいぃ〜♪だけどそれだけじゃないんですよ〜」
「「?」」
「そやつの顔を見れば分かるぞ」
そう言われて俺とファーターはすぐに倒れた兵士を見る。すると言葉が出なかった。何しろその兵士には・・・・・・。
‘1番最初にやられちゃいました♪てへっ♪’
顔にデカデカと黒ずみで書かれていたのだ。
「・・・・・・・・・なんだこれは?」
「つまりじゃ。明命にやられたらその場で顔にこのような落書きをされるということじゃ」
「しかしこれだけなら後で洗い流せば済むのでは?」
「甘いなサイファー。この墨は明命特製の墨でな。一度書かれたら3日は落ちない代物なのじゃ」
・・・つまりはこういうことだろう。明命に捕まえられたら顔に何かしらの洗い流せない落書きをされて、そんな状態で建業市街地を歩く羽目になる。
「・・・なんですか?その公開処刑のような醜態は?」
「これまでは儂らが一方的に負けておるから今日こそは儂らが勝つのじゃ」
そういうと黄蓋様が闘志を燃やし始めるが、その間に孫策軍兵士2名と俺達の仲間が一人餌食になった。
「このままでは埒があかないな・・・早く部隊を散開させた方がいいでしょう」
「うむ、ならば儂等は東へと向かう。一刻後にはまたこの場で落ち合うぞ」
「了解です祭殿。クラウドは半数を率いて南を頼む。私は半分を連れて北側を捜索する」
「了解です。ご武運を」
ファーターに指示を与えられて俺達は担当地区である南側へと向かう。
その間に周囲から恐らく明命に襲われた連中の悲鳴が聞こえてきて、南側に到着した俺達は更に部隊を分けて捜索を始めるが、30分もしない内に次々と刈られていった。因みに顔には・・・。
‘油断しちゃいました♪’
‘つまづいてやられちゃった♪’
自身の詰めの甘さが表されたり・・・。
‘居場所を教えて自滅♪’
‘マヌケな罠に掛かっちゃいました♪’
自身の動作で敗北したり・・・。ここまではまだいい。だが問題は・・・。
‘カツラです♪’
・・・・・・秘密を暴露されたり・・・。
‘私は動物に嫌われちゃいました♪’
・・・ここまでならまだ許せる。だが次は・・・。
‘ニャー’
・・・・・・・・・なんだこれは?・・・。
恐らくだが書く事が無くなったのだろう。哀れに思いながら俺の周りには既に数人しかいなかった。
「くっ・・・まさか明命がここまで強いなんてな・・・」
「軍曹、どうしますか?」
「合流地点に向かうぞ。こっちがこんな状態なら他の隊も同様な状態だろう」
「了解です」
「行くぞ。左右上下に注意を払いながら慎重に向かうぞ」
「「「Hooah」」」
そういうと俺達は縦隊を組んで最初にいた合流地点へと向かう。その間に二人がやられてしまい、残ったのは俺と女性伍長だけになっていたが何とか合流地点へと到着した。
「残ったのは俺達だけのようだ・・・」
「⁉・・・・・・軍曹あれを‼」
伍長が指を指すと黄蓋様と穏、それにファーターが倒れていた。俺達が慌てて駆け寄り、直ぐに身体を起こしてあげたがやはり気絶していたが顔には落書きされていない。
黄蓋様と穏には・・・・・・。
‘存在価値は巨乳のみ’
‘乳に栄養行きすぎ’
反則的な胸にデカデカと書かれていた。というかあからさまな私怨が入ってるだろう・・・。
(明命は胸にコンプレックスを抱いてるからな・・・)
心の中でそう思いながら次はファーターに歩みより顔を上げるが思わず吹いてしまった。
‘お髭男爵であ〜る♪’
などと書かれていて、紳士髭が追加されていた。
「軍曹、やっぱり俺達だけみたいです」
「そのようだな」
「どうします?」
「・・・・・・止むを得ない・・・。こうなったら最終手段を取るぞ」
「最終手段?」
「伍長・・・・・・これを付けろ」
「えっ?・・・・・・えぇえええええ‼⁉⁇」
俺が伍長に渡した物。それは・・・。
「なんでこんな物もってるんですか⁉」
「何って・・・明命にあげようと思って用意していたものだ」
伍長は顔を真っ赤にしながら俺に問い詰めてきていた。対明命用の最終手段とは明命が確実に食い付く“猫耳”だ。まさかこんな場所で活躍するとは思いにもよらなかったが・・・。
「ほら、いつ明命が来るか分からないんだ。早く“魔法の言葉”を言うんだ」
「うぅ〜・・・・・・に・・・ニャー・・・」
伍長は少しポーズを取りながら猫の鳴き声を恥ずかしがりながら顔を染めて口にする。俺は別に平気だが他の隊員からすれば即刻連れて帰られるだろう。
「よし、後は待つだけだ」
「うぅ・・・これで来なかったらただの間抜けですよ〜・・・」
「心配するな。すぐに来るから少しだけ待ってくれ」
「だけどあからさまな手段で来るなんて「おーねーこーさーまー‼‼」・・・マジ?」
恥ずかしがりながら伍長が嘆いていると、すぐ側の枝から目を輝かせながらお猫様と叫びながら飛びつこうとする明命が現れた。
というか本当に飛び出して来るか普通・・・・・・。
俺は飛び付いて来ようとしている明命の前に回り込んでそのまま彼女をキャッチ。しっかりとホールドして逃げられないように包み込む。
「はぅあ〜お猫様ぁ〜・・・あれ?」
「明命捕まえたり♪」
俺がしっかりと明命を抱きかかえながら笑顔で彼女を見下ろす。はたから見たら恋人同士が抱き合っているように見えるが、状況を把握した明命は顔を瞬く間に真っ赤にして慌て始めてしまった。
「はぅうぅぅぅ⁉く・・・クラウド様⁉は・・・放して下さいです⁉」
「だ〜め♪それに明命は俺に捕まったんだから今回の鍛錬は俺達の勝ちだよな?」
「はぅ・・・・・・ま・・・まさかこんな単純な手段で負けちゃうなんて・・・」
「じゃあ明命への罰はこのまま俺に抱っこされながら城に戻ることにしようか?もちろん街中を堂々とね♪」
「えぇええ‼⁉⁇い・・・嫌です⁉恥ずかしいです⁉」
「苦情は受け付けないよ♪それじゃ帰ろうか?」
「はぅううううう・・・・・・」
俺は恥ずかしがってすごく可愛らしく感じる明命をお姫様抱っこしながら建業城へと歩み始める。その間に兵士達は全員目が覚めたが顔に書かれたら落書きで恥ずかしい目にあったのはいうまでもなく、特に・・・。
「うぅ〜・・・何でこんな目に・・・」
猫耳を付けたままの伍長が1番恥ずかしそうであった・・・・・・・・・。
成都の大衆食堂。在り来たりな感じではあるがここには一刀や露蘭、飴里がよく通うことでめ有名だ。そしてその日も3人は一緒に昼食をとっていた。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[義兄弟]
蜀のイケメン三人衆の人気は高い。