第14話:大戦前
遂に動き出した反董卓連合軍。それに対応する為にライル達も最前戦となる泗水関に急行する。
12月、洛陽に雪が降り積もるある日、俺達の動きは活発になり始める。詠殿が放っておいた密偵からの報告で袁紹が動き出したのだ。
しかも既に袁紹は東部に位置する防衛ラインとなる泗水関近郊に軍勢を進軍させる準備を始めたらしい。
玉座の間で執り行われた軍議で泗水関と虎牢関で防衛ラインを構築することになった。
配備としては俺達と霞、嵐が率いる第3師団と第4師団の5万人が泗水関。恋率いる第1師団3万とねねが虎牢関。洛陽守備軍2万の指揮を詠殿が指揮を執る。
そして俺達と霞と嵐の部隊から派遣された緊急展開部隊2.500名が泗水関へその日の昼に出発して、夜には到着した。防衛態勢を構築するとあてがわれた一室に部隊長クラスの兵士が集められた。
「気を付け‼」
俺とアレックスが入室すると中にいた一番上の階級の部下が号令を出し、続いて全員が立ち上がって敬礼をする。
「全員いるな?早速だが部隊の報告と現状確認を行なう」
そういうと全員が情報を記した書類に目を通す。
「董卓軍の斥候からの報告によると連合軍本陣はこの泗水関から東北に約3km進んだ高台だ。確認出来た牙門旗は“金色の袁旗”と“銀色の袁旗”、“純白の孫旗”、“烈火の孫旗”、“蒼天の馬旗”の5種類。袁紹、袁術、公孫瓚、孫策、馬騰の勢力だろう」
「更にレイヴンによる上空偵察によれば後方にも接近している部隊を確認した。方角と兵力からすると曹操と思われる。まだまだ増えると予想される」
到着して直ぐに俺達は敵本陣とその周辺の状況を把握すべく、小型UAVのRQ-11B[レイヴン]を飛ばし、夜間偵察を敢行。そのおかげで敵兵力と陣営を把握出来た。
「董卓軍は戦の準備中だ。明日の昼頃には張遼将軍率いる第3師団と華雄将軍率いる第4師団の5万人が到着する。後方の虎牢関には呂布将軍と陳宮軍師率いる第1師団3万、洛陽の守備には賈詡軍師率いる第2師団が守備を固める。だが判明している兵力差で我々が勝つことは不可能。民を巻き込む可能性がある。そこで我々の役割は民の避難が完了するまでの時間を稼ぐ」
確かに反董卓連合軍と董卓軍の兵力差は歴然。何とか10万の兵力をかき集められたが、敵の兵力は20万を超えるとされる。
「つまり状況としては最悪だが、周辺地形を利用した籠城、敵軍への一撃離脱戦法で時間を稼ぐぞ」
『了解』
「次に部隊配備状況を確認するが、最初はC中隊。レオン大尉」
「了解」
そういうと部隊のNo.3であるレオン・キャメロン大尉が立ち上がる。前世で海兵隊タンククルーだった彼はもともと機甲部隊の隊長だが、今回は3つに分けた中隊の1つを指揮する。
「我が中隊は予定通り関の右翼に展開。銃座にはM2重機関銃を配備。丘の上にはスカウトスナイパーを配備させています」
「了解だ。次はアレックス」
「俺の隊も左翼に展開中だ。敵の攻城部隊に備えてSMAWとジャベリンを配備。いつでも攻撃が可能だ」
「最後は俺だ。A中隊も関の中央に布陣。城壁には狙撃部隊と機関銃チーム。各隊員はいつでも打って出れるぞ」
俺たちが執る手段は入り組んだ渓谷が続く泗水関の地形を利用して、ウルフパックの兵力を3つに分けて広範囲を攻撃するものだ。いざとなれば敵本陣を攻撃できる。
「中佐、民の退避が完了したらその後はどうするのですか?」
「民の退避が完了次第、我々は董卓軍の指揮下から離れて脱出する」
その言葉に全員がどよめく。しかし俺とアレックスは表情を変えずに説明を続ける。
「落ち着け、これは董卓殿達から容認は受けているし、脱出するのも“仕上げ”が完了したらだ」
「仕上げとは?」
「連合軍に情報を流している奴を見つけ出し、始末する」
これは俺の提案で詠殿が容認した作戦だ。何しろ連合の動きが俊敏過ぎる。恐らくではあるが董卓軍内部に連合軍と結託している裏切り者がいる。
そいつを見つけ出して排除。更にその死体を利用するというのが作戦の大まかな流れだ。一応は洛陽に10名ほど残している。何かあれば無線で知らせてくる。
「脱出地点は南、荊州にある南陽という場所だ。タイミングを見計らって少しずつ脱出していく。質問は?」
促すが誰も手を上げない。心配はないだろう。
「ではこれで解散とする。各員は所定のポジションで待機、指揮だ。各員の健闘を祈る」
『はっ‼』
部下達の敬礼を返すと俺とアレックスはブラックベレー帽を頭にはめ込んで退室する。外では雪が降り積もる。まるで戦場となる場所を染め上げる様に。間もなくで“陽人の乱”が開幕する・・・・・・・・・。
遂に戦いの幕が切って落とされた。時間を稼ぐ為に泗水関で籠城するが、嵐が挑発に乗ってしまい勝手に出陣する。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[海兵隊出陣]
一人の勝手がみんなを殺す。