第137話:姉妹
孫家次女の蓮華と三女の華蓮。二人が浦口で仕合を行なう。
孫呉海兵隊の浦口駐屯地。この駐屯地内部にある鍛練場では孫呉海兵隊員達がそれぞれの兵科に合わせた訓練を実施していた。
その鍛練場の一角では・・・。
「蓮華♪華蓮♪しっかり頑張りなさ〜い♪」
私と妹の華蓮が対峙していた。
((なんでこうなった⁉))
話は少し前に遡る。私は数ヶ月前から孫呉海兵隊の訓練に参加しており、ライルやアレックス達の指導で連帯の戦い方と槍術を学んでいた処に、孫呉海兵隊で戦闘衛生兵部隊の隊長をしている華蓮と姉様がやって来たのだ。
姉様曰く“二人の成果を見てみたい”と言っていたが、それにしてはあからさまに楽しそうだった。恐らくは仕事をサボりたい理由であろう。
しかし私も自身がどれだけ力を付けたのか確認したかったところだし、華蓮が修業先の張魯が教祖をする五斗米道からどれだけ強くなったのか興味があった。
・・・・・・どこかで“違〜う‼‼五斗米道じゃない‼ゴッドヴェイドーだ‼‼”と聞こえた気がしたがあえて気にしない。
「・・・・・・すまないな蓮華、華蓮。訓練の邪魔をしてしまって・・・」
「アレックスのせいじゃないわ。姉様は相変わらず困ったものだ・・・」
「まぁ・・・そこが姉様のいいところ何ですよね」
「ふふ・・・・・・そうだな華蓮。それより・・・やるからには私も姉としての面子がある。だから負ける訳にはいかんぞ」
「ふっふっふ〜♪私も負けませんからね♪蓮華姉様♪」
そういうと私は姉様の南海覇王の姉妹的存在である江東大器を構え、華蓮も地面に置いていた長柄武器の“覇天双戟”を構える。
あれは一言でいえば方天戟を二つ繋げた長柄武器で、方天戟のように引っ掛けや斬撃、刺突が得意とされていて、それが二つ付けられているからその分だけ扱いが難しい。
私は肩幅に足を広げて両手で江東大器を構えて、華蓮も覇天双戟を数回ほど回転させて左手で構えると開いた右手を私に向けて来た。
その“眼”は武門孫家特有の鋭いものとなった。それ等を確認した審判役のアレックスが片手を上げる。
「では両者の準備が整ったということで・・・・・・構え・・・・・・始め‼」
アレックスの合図と同時に私が構えていた江東大器を横にしながら先手必勝で突っ込み、華蓮に近づくと連続で仕掛ける。
「はっ‼でりゃ‼」
「はい‼はい‼はい‼」
華蓮に反撃の機会を与えない為に私は一気呵成に刺突から引っ込めてすぐに斜めの振り上げ、薙ぎ払い。一回転しながら再び薙ぎ払い。その反動を利用して二連続で回し蹴りを見舞わせる。
:雪蓮視線
私は最初は仕事をサボりたい理由の為に二人の仕合を提案したけど、予想以上に面白くなって来た。
何しろあの蓮華がムダがまだ見られながらも剣術と体術を組み合わせた戦い方をしているのだから。少し前の蓮華では考えられない状況ね。
私が二人の闘いぶりを見ていると後ろから誰かが近付いてきた。
「やってますな」
「あら、サイファーじゃない♪あなたも見学?」
「新兵共を指導していましたが、休息を挟んで見に来たのです。となり失礼します」
来たのはライル達の父親みたいな存在のサイファーだった。私からしても父親みたいな感じで、特に最近は祭と仲がいい。羽田から見たら本当に夫婦とも思える位になのよね。
「しかし孫権様も戦い方をようやく改めましたな」
「ねえサイファー、あなたはどっちが勝つと思う?」
「賭けの誘いですかな?」
「あっ‼ブーブー‼ちゃんとした問いなのに〜‼」
「ハハハハハハ‼冗談ですよ。そうですな・・・・・・まだ始まったばかりのようですから分かり兼ねますが、このまま行けば孫権様が先に息切れを起こしますな」
「やっぱりそう思う?」
「はい。確かに孫権様は宣城の頃と比べても着実に強くなられておりますが、まだまだ全体的な動きにムダがみられます。
対して孫翊様は一見すれば防戦一方ですが、孫権様の攻撃を僅かな動きで全て見切っています」
「ふふっ♪相変わらずいい着眼点ね♪それに気が付いているでしょ?」
「はい・・・・・・孫翊様は・・・」
「「一歩も動いていない」」
:蓮華視線
私は華蓮へと立て続けに仕掛ける。その攻撃を前に華蓮は防戦一方だが、何かがおかしい。私は少し息切れをし出してきたのに華蓮はそんな様子は見当たらない。
それどころかその表情にはまだまだ余裕が感じられるのだ。
「くっ⁉」
流石に息切れを整える為に攻撃を一旦停止して後方に飛ぶ。着地と同時に鋒を華蓮に向けながら警戒する。
対して華蓮はその場から動かず最初と同じ構えを崩さなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・・・・華蓮」
「何ですか姉様?」
「なんでお前は仕掛けてこないんだ?」
「なんでって・・・・・・姉様の攻撃が激しすぎでしたから反撃が出来なかっただけですよ」
「だったらなぜそんな平喘とした顔をしているのだ?まさか私が姉だからといって遠慮しているのか?」
「い・・・いえ⁉遠慮だなんて・・・」
「だったら次はお前が打ち込んで来い」
「・・・・・・いいんですか?」
「構わない。遠慮無く来い‼」
「・・・分かりました・・・でしたら・・・」
そういうと華蓮は肩幅にまで足を広げると中腰になり、右手を再び私に向けて来る。まるで私を狙うようにだ。
「・・・武門孫家三女。孫 叔弼・・・・・・参ります‼‼」
そう叫ぶと華蓮はその場で地面を一気に力強く蹴り、瞬く間に私の懐に飛び込んで来た。
「くっ⁉」
なんとか反応して私は振り上げをすぐに受け止めるが、華蓮は続けて身体を回転させながら反対側で薙ぎ払い、それをしゃがんでかわすがすぐに再び振り上げがきた。
「甘いですよ姉様‼」
「ちぃ⁉まだまだぁあ‼」
刺突、薙ぎ払い、振り下ろしという連続攻撃を見極めながら合間を見つけて反撃する。私はその中に体術を加え蹴りや肘打ち、膝蹴り、更には頭突きも喰らわせるが華蓮は怯まずになおも反撃してくる。
私は防がれた振り上げから反動を利用して一気に身体を捻りながら振り下ろしを見舞う。だが華蓮も柄の中間でそれを受け止め、力比べへと発展してしまう。
「ぐぅううう‼‼」
「くっ⁉負けませんよ姉様‼」
そのまま華蓮は弾き返すが、これが私の狙いだ。私は素早く江東大器を水平に持って来て刺突を加える。
これで決まった。
私は勝ったと思ったがそれは違っていた。華蓮は横に小さく飛んで回避すると覇天双戟を地面に突き刺すとそのまま勢いで信じられないような動きをしてきた。
「な⁉」
「後ろがガラ空きですよ姉様‼」
華蓮は突き刺した覇天双戟を軸にして勢いを保ちながら私の背中に蹴りを仕掛けて来た。
流石に予想外で受け止められず、背中に蹴りを喰らった私は前に飛ばされてしまった。
「くはっ⁉」
なんとか息を整えると立ち上がろうとするが、膝を地面から離す寸前に華蓮が駆け寄って来て覇天双戟の鋒を私の喉元に突きつけて来た。
「それまで‼華蓮の勝利‼」
審判役のアレックスが片手をあげて華蓮の勝利を宣言した。華蓮は覇天双戟の鋒を外すと一歩後ろに下がる。
私もその場で立ち上がると江東大器を鞘に納めて礼をする。
「大丈夫でしたか姉様?」
「大丈夫だ華蓮。しかし見事だったぞ。鍛錬は怠っていなかったようだ。私も負けないように日々精進せねば・・・」.
「ふふっ♪一緒に頑張りましょうね姉様♪」
仕合では私は負けてしまったが、新たな気持ちで精進に励めそうだ。笑顔で華蓮を讃えるとアレックスと華蓮と共にその場を後にした。
その後、仕事をサボっていたところを冥琳に見つかって耳を引っ張られながら連行されていったのは言うまでもなかった・・・・・・。
蜀建国を成し遂げた一刀達。建国から暫く経過してから彼等の頭脳が東屋に集まっていた。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[天の頭脳陣]
異名を持つ頭脳陣達が集結する。