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第135話:戦いの後

クラウドとポー。二人が建業へ帰還する時がやって来る。

数ヶ月にも及ぶ劉備軍の益州平定は成都を制圧したことにより幕を閉じた。


形骸に成り下がったてはいたが、実質上の大将であった劉璋と忠義を貫き通し、一刀君達に益州を任せた張仁を失ったことで劉璋軍は戦意を完全に消失。


一部では未だに抵抗を続ける輩もいるが、大半は素直に降伏。抵抗を続ける残党もいずれ降伏するだろう。


一刀君や桃香ちゃん達は現在、内政の改善に尽力を尽くしていたが予想以上に酷かった。


劉璋に侍る官吏達は民から巨額の税を搾り取ったら自らの懐に仕舞い込み、民の為に使われることはなかった。


そのため田畑水田は荒れ放題。道もろくに整備されていないなど、挙げたらキリがない。


一番酷かったのは民そのものだ。中佐から聞かされていた華やかなイメージの成都は面影すらなく、飢えに苦しんで死んだように座り込む民もいれば、そこ等に落ちていた残飯を取り合う子供達。


大通りに虫が集った死体も何体かあった。紫苑殿や桔梗殿達が見限る気持ちが改めて理解できる状況だ。


まずは民に炊き出しを行なうことになったが数が予想以上に多く、交州を平定して帰還していた中佐にMREレーションを片っ端から空輸してもらうことになった。


民の炊き出しを行ないつつ、成都の復興を進めること3日。城内の一室で・・・。


「うえ〜ん⁉ぜんぜん終わらないよ〜⁉」


目を通す必要がある書類に桃香が悲鳴をあげていた。


「桃香、キツイのは分かるけど頑張って」

「ふぇ〜ん⁉ご主人様ぁ〜手伝って〜⁉」

「あのね・・・桃香はまだマシな方なんだよ?・・・俺なんて昨日から寝ずなんだからさ・・・」

「それでもキツイの‼朱里ちゃ〜ん‼雛里ちゃ〜ん‼夏雅里ちゃ〜ん‼早く戻って来てよ〜‼」


扉の向こうから悲鳴と救援要請を発する桃香ちゃん。それを宥めながら自分も必死に書類と格闘する一刀君。まあ、旧劉璋軍の無能な文官共が無視していた民や治安に関する重要な書類を精算しているのだから仕方が無いだろう。

そう考えて俺は扉をノックした。


「はい?」

「一刀君、桃香ちゃん」

「あぁ、クラウドさん。扉は開いてますからどうぞ」

「失礼するよ・・・・・・・・・また何という量なんだ?」


扉を開けるととんでもないびっくり箱だ。二人が仕事をする机の上には積み重なった竹簡、床にも決算を済ませた竹簡と書類が所狭しと置かれていた。


「た・・・大変そうだな」

「まあ・・・全てが民の為になるものですから無下には出来ませんよ。それで、用事は何ですか?」

「あぁ、MREレーションの輸送があらかた終わった。見たくはないだろうが、これが報告書だ。重要じゃないから落ち着いたら確認してくれ」


そういうと俺は持っていた書類を一刀に手渡す。因みにこの瞬間に桃香の涙目が更に増したというのは言うまでもない。


「それと中佐から指示が来た。俺とポーは次の最終輸送便が到着次第建業に帰還せよらしい」

「帰還命令ですか・・・」

「そうだ。忙しい時にすまないが、こちらも任務だ。それに契約は成都制圧完了までだったからな・・・」


中佐からの帰還命令。確かに俺とポーが劉備軍と行動を共にするのはここ成都攻略完了まで。

その攻略が完了した今、任務が完了されて建業へと帰還しなければならない。


帰還命令を伝えると一刀君はその場で立ち上がる。


「そうですか・・・・・・もう少しだけいて貰いたかったですけど仕方が無いですね。輸送ヘリの最終便はいつ来るんですか?」

「予定では明日の朝に到着する。大型機が2機とオスプレイが1機。最後の援助物資を満載してくる」

「分かりました。でしたら仕事の引き継ぎだけして頂いてくれませんか?」

「了解だ・・・・・・それと一つ頼みがある」

「なんですか?」

「俺と君は同年代なんだからさ。堅苦しい敬語はやめてくれないか?」

「えっ?・・・・・・でも・・・いいんですか?」

「いいの。ポーも言ってたぞ。君は少し無駄に固いって」

「はぁ・・・・・・・・・分かったよ。これでいいかな?」

「OKだ。じゃあ俺は失礼するよ。仕事がんばってくれ」

「うん」

「は〜い」


そういいながら俺は二人の執務室を後にする。撤退の準備をする為にあてがわれた部屋へと向かう。










翌日の朝・・・・・・。


予定通りCH-53Kスーパーシースタリオンが2機とMV-22Bオスプレイの3機編隊が最後の援助物資を積載して成都に到着した。補給部隊がすぐに援助物資を降ろしていき、それを受け取った劉備軍の補給部隊が兵糧庫へと格納していく。


すぐに作業は完了して補給部隊の隊員がスタリオンに登場。もう1機にグロウラーを搭載する。それを確認した俺とポーは同伴していた南郷大尉と共に一刀君と対峙していた。


「武久さん、お久しぶりですね」

「あぁ、元気そうでよかったよ。それと巴蜀の平定おめでとう」

「ありがとうございます。クラウドとポーも今までありがとう」

「こっちこそ、君達と一緒に行動できて楽しかったよ」

「また遊びに来るから、その時には頼むよ」


俺は手を差し伸べると一刀君も差し伸べて握手を交わす。 続いてポーと大尉も同じように手を差し伸べて彼と握手を交わす。

すると彼の背後から朱里と夏雅里と雛里が歩み寄って来た。


「あの・・・南郷さん」

「よう朱里に雛里。元気そうでよかったよ」


歩みよってきた二人を大尉はその場で屈んで頭を撫で始める。二人は相変わらず“はわわ〜”と“あわわ〜”といいながら照れてしまっている。


「それで君は?何だか朱里に似てるが・・・」

「ふわわ⁉わ・・・私は朱里お姉ちゃんの妹でしゅ‼し・・・しぇいは諸葛‼名はき・・・均‼あ・・・あじゃ・・・あじゃにゃは子魚‼まにゃ・・・真名は夏雅里でしゅ‼・・・ふわわ・・・・・・噛んじゃった・・・」


・・・・・・相変わらずだが・・・舌足らずである上に噛みまくりだが、そこが何とも可愛らしい。というか本当に保護欲に駆られてしまう。

気が付けば俺は夏雅里ちゃんを抱きしめていた。


「ふわわ⁉く・・・クラウドしゃま⁉」

「・・・・・・連れて帰る。そんで育てる」

「ちょ⁉・・・クラウド⁉」

「落ち着けクラウド‼気持ちは本当に分かるが人攫いみたいなことをするな⁉」

「はっ⁉・・・・・・俺は何を・・・」


気が付けば俺はオスプレイに向かって夏雅里ちゃんを抱きかかえながら向かっていた。しかしポーが後頭部を叩いてくれたお陰で正気を取り戻した。


「ふわわ〜・・・・・・お姉ちゃ〜ん・・・きゃん⁉」


俺から解放された夏雅里ちゃんはトテトテと姉の側に向かうが、その手前で躓いて転んでしまう。再び保護欲に駆られてしまいそうだったが何とか制止して見ていた。

そんな光景に一刀君は苦笑いをしていた。


「ははは・・・・・・相変わらずだな・・・」

「中佐と千里から聞かされてはいたが・・・何とも可愛らしい光景だな・・・」

「す・・・すまなかった・・・一刀」

「ご主人様・・・これを・・・」

「いえ・・・・・・そ・・・それよりこれをライルさんと孫策に渡してくれませんか?」


そういうと雛里から親書と思える手紙を受け取り、それを大尉に渡す。


「大尉、離陸準備が完了しました。何時でも帰投可能です」


後方からオスプレイのパイロットが敬礼をしながら準備完了を報告する。俺と大尉とポーも敬礼を返すとパイロットはすぐにオスプレイに戻って行った。


「じゃあ俺達は帰るよ。中佐に何か伝言はあるか?」

「そうだね・・・・・・情勢が安定したら使者を送るっていってくるないかな、クラウド?」

「分かったぜ。任せてくれ」

「じゃあな」


伝言を預かると俺達は敬礼をしてすぐにオスプレイに乗り込む。搭乗を確認したオスプレイパイロットは後部ハッチを閉鎖し、メインローターを始動させてゆっくりと高度を上げていく。

そして一定の高度に達するとローターの向きを変えて建業に向かう。俺は窓から劉備軍を眺めていた。


「一刀とかなり仲良くなったようだな?」

「えぇ、彼等は本当にいい奴等ですよ。中佐が目を掛けるのもよく理解出来ました」

「まったくですよ師匠。もし最初に彼等と出会っていたら恐らく彼等についてた位に」

「流石は北郷一族きっての武人だ・・・お前達二人の心も掴んだようだ・・・今度くる時には土産でも用意してやるか・・・」


一刀達の印象を話しながら俺達を乗せた輸送部隊は途中でジーンへの要請を行ない、燃料補給を繰り返しながら建業へと帰途についた。


劉備軍が蜀を平定したことにより、漢の勢力は孫策様の呉軍に一刀君と桃香ちゃんの蜀軍、そして曹操率いる魏軍。天下はこの三つにより動くことになる。

時がくれば曹操が攻め込んで来るだろう。だが今は身体を休めるとしよう。帰ったらなにをするか・・・・・・・・・・・・。

久々の休みであるライルが目を覚ますと見覚えのない少女がいた。

みんながライルの隠し子だというが・・・。



次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[雪蓮パニック]

天真爛漫の雪蓮が騒動を巻き起こす。

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