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第133話:忠義の武人

一刀達の前に最後の劉璋軍武将が対峙する。

劉備軍による益州平定は間も無くで達成されようとしていた。雒城が陥落してから俺達に降伏する劉嶂軍が相次ぎ、瞬く間に軍事力は拡大していった。


そして俺達は成都に軍備を進ませる。成都は豊かな成都平原の中にあって古くから“天府の国”と呼ばれてきた。


しかし今の成都は劉璋により疲弊の一途を辿り、無理な軍備増強とそれに伴う増税という先軍主義で民は疲弊している。だから一刻も早く成都を解放するのだ。


俺達は既に成都城を包囲。民の避難も完了させた。残るは籠城する劉璋軍を降伏させ、劉璋本人を捕らえるだけだ。

俺は飛燕に跨り、神龍双牙を両手に構えて城門前に陣取る。


「劉璋軍‼すぐに城門を開けて降伏してくれ‼俺は北郷 一刀‼劉備軍大将の劉 玄徳が懐刀にして天の御遣いと言われている‼俺達は侵略しに来たのではない‼俺達はただ、この益州に暮らす民を護りたいだけだ‼」

「劉璋軍の皆さん‼私は劉備 玄徳といいます‼お願いです‼どうか門を開けて降参して下さい‼私はこれ以上の戦いは回避したいんです‼」


俺達の名前を聞いて城壁にいる劉璋軍兵士に動揺が広がる。更に俺は畳み掛ける。


「もう一度いう‼すぐに城門を開けて降伏してくれ‼無駄な殺生はしたくはないが、民を救う為ならお前達を倒さなければならない‼だが俺もそんなことはしたくはない‼

だから頼む‼武器を捨てて降伏してくれ‼」


今一度降伏を促し、城壁からはなにやら言い争っている声がしてきた。恐らくは降伏したい敵と籠城する敵が揉めているのだろう。

暫く様子を伺っていると、城門が音を立てて開門し始めた。

降伏してくれるのかと思い、俺は思わず安堵の表情をしてしまうが、それもすぐに元に戻る。


開いた城門から鎧を身に纏った男がいたが、その男から発せられる気迫と覇気によってだ。

袖の無い白い龍が描かれた黒の服装に裏地が赤色の腰に身に付けるマント、猛禽類を思わせる額当て、太めのベルトのようなものが左右2本ずつ付いた黒いブーツ、右目に出来た切傷を隠すように眼帯を付けた灰色の髪をした初老の男性だ。


その人は俺達の前に立ち止まると正规揖礼をして、俺と桃香もすぐに正规揖礼の姿勢をとる。


「劉備軍総大将の劉備 玄徳様と、天の御遣いの北郷 一刀様ですな?」

「はっ・・・はい‼劉備です‼」

「北郷 一刀です」

「私は劉璋軍宿将。劉璋様が家臣の張仁と申します。名高きお二人に御目にかかり、まこと光栄であります」


俺は驚愕した。暗愚と称されても最後まで劉璋に付き従った忠義の武人が目の前にいるのだから当然だ。


「お二人の噂、ここ成都にも響いておりますぞ。暮らす民も劉璋様より劉備様に益州を納めて欲しいと聞きますぞ」

「それなら話が早い・・・俺達に降伏してくれませんか?」

「お願いです‼私達はこの国を救いたい・・・だから私達に力を貸して下さい‼」

「この国・・・この大陸から戦を無くし・・・・・・皆が笑って暮らせる仁の世を作るために・・・あなたの力をどうか・・・俺達に貸してくれませんか?」


俺と桃香の思いを力強く訴えかける。張仁は少しだけ俯き、そして首を横に振るう。


「・・・・・・すまぬ。それは出来ない相談だ」

「⁉・・・どうしてですか⁉劉璋さんは民を疎かにして、保身に走っているんですよ⁉それなのに・・・それなのに何でそんな人に仕えるんですか⁉」

「・・・・・・私は武人。そして我が主は劉璋様のみ。例え劉璋様が圧政を敷き、独裁者に仕える飼い犬と陰口を叩かれようと一度忠を誓ったからには、二君には従えぬ」

「・・・そんな・・・」


張仁さんの言葉に俺は言葉を失い、桃香は悲しい顔をする。


「故にここで私を取り逃せば、再び貴方達を狙いましょう。情に駆られる位なら私は貴方を道連れに致します。劉備様」

「そんな・・・私には分かりません‼私には「それまでにしておこう、桃香」ご・・・ご主人様?」


俺は一歩だけ前に出て桃香の言葉を遮る。


「これ以上は張仁さんへの侮辱になる。言葉ではまずこの人は考えを変えない」

「うむ・・・ご理解くださったかな?」

「えぇ、あなたのように忠義を誓う人はライルさん以外に会ったことがありません」

「おぉ、呉に仕える銀狼か・・・ふふ。そのような素晴らしい御仁と比べられるとは嬉しい限りだ」

「えぇ。しかしだからと言って俺の大事な家族を傷付けられる訳にはいきません」

「・・・・・・・・・うむ、よい眼をしておる。流石は天の御遣いと称される英雄だ・・・・・・・・・ここからは言葉は不要・・・」


そう言うと張仁さんは背中に背負っていた得物・・・赤色の刀身が印象的な双鉤を抜刀して構える。


「己の信念を貫きたくば、我が身を屍に変えてみせよ‼」

「・・・・・・分かりました。俺はこんなところで負ける訳にはいきません‼北郷流二刀心眼術師範‼天の御遣い北郷 一刀‼」

「我が名は張仁‼劉璋軍宿将にして巴蜀の守護者‼」

「いざ尋常に‼」

「推して‼」


それを互いにいいながら、姿勢を少しだけ互いに低くして足に力を貯める。そして・・・・・・。


「「参る‼‼」」


同時に地面を蹴って、互いの刃がぶつかった・・・・・・。

“天の御遣い”北郷 一刀と“忠義の武人”張仁。2人の戦士が刃を交え、雌雄を決する為に武を振るう。勝つのは御遣いか、それとも忠義か・・・。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[強い意思]

四筋の刃が舞い踊る。

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