第132話:御膳試合
自身の力を過大評価している魏延に一刀が灸を据える。
雒城を陥落させ、見事に厳顔と魏延を配下に加えることに成功した俺達。今は再編成の為に雒城へと駐留。益州の都である成都に万全の状態で挑む為に、今は少し休息することにする。
そして俺達の本陣では桔梗と魏延が桃香達と顔合わせをしていた。
「劉備殿ですかな?」
「は・・・はい‼私が劉備 玄徳です‼」
「そんなに賢たまらないで下され。儂の名は厳顔。真名は桔梗。今後は劉備殿の為にこの喧嘩士の力をお使い下され」
「はい‼でしたら私のことも桃香って呼んで下さいね♪」
「あ・・・あの‼劉備様‼わ・・・私のことも焔耶とお呼び下さい‼」
「うん♪だったら私のことも桃香って呼んでね♪焔耶ちゃん♪」
真名を託されて前髪の右側にメッシュを入れて、黒のホットパンツや首に巻かれたチョーク、両腕を覆うような赤い手甲を身につけた魏延は嬉しそうだ。
なんだか分からないが、どうやら桃香に一目惚れしたようだ。すると魏延は桃香に抱きかかえられている刀瑠に視線を移す。
「ほぅ、桃香様にも子どもがおられますのか」
「うん‼私とご主人様の子どもです‼」
「・・・・・・・・・桃香様」
「なに?」
「その・・・ご主人様という者は?」
「えっ?いま桔梗さんの隣にいるのがご主人様だよ♪」
桃香が俺を教えると魏延は俺に歩み寄ってきた。それも相当な気迫と共にだ。
「・・・・・・・・・・・・・」
「これ焔耶‼名乗らんか‼」
「は、はい桔梗様・・・・・わたしの名は魏延だ」
「俺は北郷 一刀。よろしくな魏延」
「それじゃあ愛紗ちゃん達が帰ってくるまで「お待ちください‼桃香様‼」・・・・・焔耶ちゃん?」
「北郷 一刀‼」
「なんだ?魏延?」
「これからわたしと試合え‼」
魏延は肩幅に足を開くと人差し指を刺しながら俺に試合を申し込んできた。いきなりのことだったので全員が呆気に取られてしまう。
「・・・・・え・・・えっと・・・いきなりどうしたの?」
「お前が本当に桃香様に相応しい奴か確かめたいだけだ‼」
どうやら俺はあまり魏延から印象をよく受けられていないようだ。
「やめぬか焔耶よ‼お館様は儂を退かせる程の武人ぞ‼未熟なお主に勝てる筈がなかろう‼」
「いえ‼桔梗様がただ負ける筈がありません‼どうせこいつはあの馬岱とかいう奴と同じ何か卑怯な手を使ったに決まってます‼そのようなこいつが桃香様に相応しい筈がありません‼」
“カチンッ”
何だか分からないが魏延の一言が癪に触った。戦ったこともない奴が何を言うか・・・。
「いい加減にせぬか焔耶‼実力も図らぬのに相手を見下すなと何度も「いいぜ・・・やってやるよ」・・・お館様⁉」
「戦後処理でみんなが帰ってくるまでやることが無いんだ。それに・・・そこまで言われて黙っているほど俺は背負ってない‼」
俺がそう言い放つと本幕にいた全員が驚愕したがどうでもいい。
彼女にはきついお灸を据えてやる必要があるからだ。俺が先に天幕を出ると魏延も後に続いた。
「すみませんな桃香様、焔耶の奴は昔から喧嘩癖が強いじゃじゃ馬でしてな」
「あ・・・あははは・・・・・・大丈夫かな?焔耶ちゃん・・・」
「なぁに・・・お館様なら手加減をして下さるじゃろて。それに今のは確かに焔耶が悪い。一度きっちり灸を据えて貰ったほうがよいでしょう」
楽しそうな表情をしながら桔梗も天幕を後にして俺達の後に続く。
桃香も呆気に取られてしまうが、ようやくその後に続いて来た。
外に出ると担当地域の戦後処理から帰って来たクラウドさんとポーさん、それに紫苑と朱里、夏雅里、白蓮、斗詩、猪々子も帰って来たようだ。
愛紗達はどうやらまだ掛かるらしいと斗詩が報告してきた。
「桔梗、あなたもご主人様に?」
「おぉ紫苑ではないか‼もちろん焔耶もじゃが見ての通りだ」
「ふふっ♪焔耶ちゃんは相変わらずね♪」
「えっ・・・えっと・・・・・・こ・・・これはどうしたんでしょう?」
「ふわわ〜・・・」
「あいつって確か・・・魏延だよな?」
「ご主人様と試合する見たいだけど・・・」
「あっ⁉あたいもアニキと試合したいよ‼」
・・・最後あたりの発言は欲望のような・・・。
「なら儂が審判役を務める。よいな?」
「お前なんか瞬殺してやる‼」
「・・・やれるならね」
魏延は何処からか棍棒のようなデカイ打撃武器を取り出して両手で構える。俺も神龍双牙の片方である天を抜刀して片手で構える。
「はっ‼なんだその細い剣は‼私を舐めているのか⁉」
「舐めてるかどうか、やってみれば分かるよ。負ける気なんて鼻から無いけどね」
「ふんっ‼そんなものわたしの鈍砕骨で文字通り粉砕してやるぞ‼」
「それでは・・・・・・始め‼」
「はああああああああああああああ‼‼」
開始早々、魏延は鈍砕骨を俺に向かって振り下ろしたが、その動きを冷静に見極めてパターンを瞬時に選び、身構える。
「ふっ‼」
恐らくは見ている彼女達は何が起こったのか分からないだろう。振り下ろされた鈍砕骨を弾き飛ばし、天の鋒を魏延の喉元に突き付けていた。
「し・・・勝者‼お館様‼」
桔梗からの勝利判定を受けて鋒を下げて、天を鞘に納めた。
「き・・・・・貴様‼汚いぞ⁉」
「は?」
「私の鈍砕骨を簡単に弾き飛ばすだなんて一体どんな妖術を使った⁉」
「妖術なんか使える筈がないじゃないか。君の振り下ろしに隙が見えたからそこを突いただけだよ」
「嘘をつけ‼こんなことはありえん‼」
「それくらいにしておけ焔耶」
「しかし、桔梗様⁉・・・ギャフッ⁉」
「武人なら武人らしくこういった時くらい潔くするものじゃ‼馬鹿者‼」
「・・・・・はい」
桔梗に頭頂部にモロ拳骨を喰らい、魏延は頭を抑えながら蹲って敗北を認める。
「ほれっ‼お主が負けたのだから詫びも兼ねて真名を預けんかい‼」
「ええ⁉」
「なんじゃったらお主のだ〜いすきな犬猫を大量に小部屋に一緒に閉じ込めて貰いたいのか?」
「ひぃ⁉そ・・・それだけはどうか勘弁してください桔梗様⁉」
「分かったならさっさと真名を預けんかい‼」
「うう〜・・・・・・わ・・・私の真名は焔耶だ・・・お館」
「分かった。宜しく頼むよ、焔耶」
「ふんっ‼」
この後、桔梗と焔耶は全員に真名を預け、孫呉海兵隊と聞いたクラウドさんとポーさんに2人はまた試合を挑んだが、結果は2人の敗北というのは言うまでも無い。
俺達は二日後に軍備の再編成を完了させ、そのまま進軍を再開させて青白江と新都城を無血制圧。
士気は最高潮のまま、俺達は最終目標である成都に進軍する・・・・・・。
青白江、新都城を無血制圧した俺達は遂に成都へと辿り着く。士気で遥かに下回る敵は次々と降伏していく中、一刀達は最後の障害と立ち向かう。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[天の御遣いvs忠義の武人]
愚者に忠義を貫く武人が御遣いに挑む。