第131話:豪快の喧嘩士
雒城攻略戦におき、そこで一刀は蜀の喧嘩士と出会う。
楽成城で編成を完了させた俺達は黄忠こと紫苑を仲間に加えて次の攻略目標である難攻不落の雒城へと駒を進めた。
紫苑から齎された情報では、ここを守備しているのは彼女の友人であり、尚且つ古参兵の一人である勇将厳顔と猛将魏延。
しかし厳顔達も劉璋に対して愛想を尽かしているようであり、本音では俺達に降りたいらしいがそこは武将の血。
ただでは降らないつもりのようで、雒城での籠城戦を捨てて野戦という真正面からの“喧嘩”を選んだ。
蒲公英は“脳筋は苦手”といっていたが、逆をいえば実力を見せれば抵抗しなくなるということだ。
俺達はその誘いに乗ることにして策を講じつつ正面からぶつかる。俺も愛馬の飛燕に跨り、神龍双牙を薙刀にして手にしながら戦況を見る。
「・・・やっぱりこっちが優勢だね」
「はい、桔梗(ききょう/厳顔の真名)も焔耶(えんや/魏延の真名)ちゃんも生粋の武人ですから、おとなしく籠城戦をするのは相に合わないのです」
「だけど・・・私達と厳顔さんの兵力差は歴然なに・・・」
「ふわわ・・・お姉ちゃん・・・・・・き・・・桔梗しゃまと焔耶お姉ちゃんは劉璋しゃまと仲が悪いんでしゅ」
「やっぱり?」
「えぇ、私も桔梗達も劉璋様の政の酷さに今まで何度も進言したのですが、聞き入れて下さったことは一度もありませんでした」
「それで韓玄達が派遣された・・・と?」
そういうと紫苑は頷く。
「だけど向こうにはそういう輩はいないようだね」
「は・・・はい。桔梗しゃまにいたら籠城戦にするはじゅでしゅ・・・ふわわ・・・噛んじゃった」
「あらあら・・・相変わらずいい子ね夏雅里ちゃん♪」
そういうと紫苑は夏雅里を抱きかかえて、その反則的な豊満すぎる胸に埋める。夏雅里は相変わらず“ふわわ〜⁉”と言いながら両手をバタつかせる。俺はその光景に釘付けとなるが、紫苑がそれに気付き微笑んで来た。
「あら?、どうかしましたかご主人様?」
「えっ⁉あ・・・いやぁ・・・・・・何でも・・・」
「うふふ♪ご主人様、いま私のどこをご覧になられたのです?」
「なっ⁉い・・・いや⁉な・・・何でもないよ⁉」
「ふふっ♪そんなに遠慮しなくても、何でしたら今度じっくりと・・・」
「はわわ⁉」
「ふわわ⁉」
「し・・・紫苑⁉今は戦の真っ最中だから⁉そういうのはちょっと⁉」
「あら、そうですか♪でしたら戦が終わりました夜にでも・・・「あんた等・・・何やってるんだ?」あらあら♪」
背後を見ると白馬に跨り、二年前にライルさんがあげた彼女専用の得物であるハルバート“馬雷”を手にした白蓮が呆れていた。
俺は内心で助かった気持ちをしながら話しかける。
「ぱ・・・白蓮・・・準備は?」
「あぁ、何時でも行けるよ。白馬義従も出陣を待ち焦がれてる」
白馬義従とは白蓮が幽州にいた頃の騎兵隊で、射撃に優れた者を選抜し全員に白馬を与え、戦場において自身の近くに置いた。その勇名は異民族にまで知られていたとされ、実質上の彼女専属の部隊だ。
今では100頭ほどの白馬しかいない。しかし俺の親衛隊である“劉天刃”の中でも屈指の実力を有した精鋭部隊でもある。
「分かった。斗詩と猪々子は?」
「ここだぜ兄貴♪」
「もう文ちゃんったら‼ちゃんとご主人様って言わなきゃダメだよ‼」
白蓮に続くように白色の鎧を身に纏い、それぜれ大剣と戦槌を手にした顔良こと斗詩に、文醜こと猪々子が現れる。
彼女達はかつての徐州攻防戦の後に袁紹を見限り、命を救ってくれただけではなく居場所を与えてくれた俺達に感謝して、暫くしてから俺達の仲間になった。
なお、鎧や武器も全て袁紹に関わる装具は処分。今の装備はライルさんが記念として用意してくれたのだ。
出陣の用意が完了したのを確認したら俺も気持ちを引き締める。
「朱里、夏雅里、紫苑。それじゃ行ってくるよ」
「はい、ご主人様達は予定通り厳顔軍の中枢に強襲をお願いします」
「分かった。愛紗達にも伝令を出して。“作戦は第二段階に移行。狩を始める”」
「「御意」」
「紫苑も予定通りに俺達の援護を」
「了解です」
「さぁみんな行こう‼」
そういうと俺も白蓮達を率いて敵軍の中枢・・・厳顔に向かって飛燕を走らせる。
戦況はやはり俺達の優勢だ。厳顔がいくら有能で部下達も猛者であっても野戦では俺達に有利だ。
しかも紫苑の部隊もほぼ無傷で手に入れた上に義勇兵が新たに加わっている。兵力差は俺達に分がある。
俺も神龍双牙で敵を薙ぎ払いながら厳顔を探す。
「戦えない者はすぐに降伏しろ‼俺達は命は取らない‼」
「一刀‼」
「白蓮‼厳顔の位置は⁉」
「ここから少し先にいったところにいたって部下が見つけた‼」
「分かった‼俺が行く‼白蓮は敵の掃討を‼」
「あぁ‼だが一刀‼」
「なに?」
「必ず勝って戻って来いよな‼負けたら許さないからな‼」
「分かってるさ白蓮‼そっちもな‼」
そう言い合うと俺は飛燕から飛び降りて厳顔がいるとされる場所に向かって走り出す。すると少し走った先に他の敵とは違って高い闘気を醸し出すのが一人いた。
しかし同時に危険を察知する。何しろ大剣に似た得物を構える敵がこちらを狙っていたからだ。俺はすかさずバク転でかわしたが、俺はそれに驚かされる。いきなり轟音が鳴り響いたと思ったら俺が先ほどまでいた場所が爆発したのだ。
俺はすぐに態勢を戻して構える。俺に攻撃してきたのは灰色に近い銀髪に紺色の服、一番の特徴で紫苑並の胸をして、左肩にデカデカと酒と書いたパットを身につけている美女。
特徴が全て一致している。彼女が厳顔だ。
「ほぅ、さっきのを避けるとはな。やるではないか小僧」
「お褒めの言葉をどうも。あなたが厳顔さんですね?」
「いかにも。儂が雒城を任されておる喧嘩士の厳顔じゃ」
「俺は劉備軍、劉 玄徳が懐刀の北郷 一刀」
そういうと周囲にいた厳顔軍兵士がどよめき始める。しかし厳顔だけは軽く笑って見せた。
「お主が劉備とかいう小娘に仕えとる天の御使いか・・・・・・成る程のぅ。中々の武だ」
「厳顔さんこそ・・・・・・戦わずにして降伏はなしといったところですね?」
「そういうことじゃ。わかっているのなら早くこい‼豪天砲の威力を見せつけてくれよう‼」
「ならあなたを倒して俺達は成都を手に入れる・・・北郷 一刀‼参る‼」
そういうと俺は地面を強く蹴って突撃する。だが厳顔も俺に攻撃を仕掛ける。その攻撃を俺はアメフトみたいにかわしたり、時にはそれを斬り落としながら足を止めない。
しかし俺の接近戦を簡単に許す厳顔では無いようだ。俺が懐に飛び込んだ瞬間にその場で一回転しながら回し蹴りを見舞う。
「接近戦とて苦手ではないわ‼」
俺もすぐに態勢を低くして回し蹴りを避け、立て続けに振り下ろされた豪天砲という武器を前に回避。すぐに俺も回し蹴りを浴びせるが厳顔も回し蹴りをぶつけてきた。
すぐに蹴りの姿勢を解いて神龍双牙で斬り掛かるが、それも振り上げで阻止される。
そんな調子が暫く続き、俺と厳顔は力くらべへと発展していた。
「やるではないか‼久方ぶりに血が滾ってくるぞ‼」
「俺もです‼噂に聞いただけの勇ましさです‼劉璋の配下にしておくのは惜しい‼ますます味方にしたくなった‼」
「だったら儂に勝って奪ってみせよ‼」
そう言うと厳顔は俺の懐に飛び込んできて、そのまま豪天砲で刺突をする。俺はすぐに受け止めるが銃口がこちらを向いていた。
「この間合いなら長柄は役に立たん‼少し痛いが我慢せえよ小僧‼」
そう言って豪天砲のラスト一発を俺目掛けて放つ。
「甘い‼」
「なっ⁉」
そう言うと俺は瞬時に神龍双牙の薙刀を解除して、地で放たれた一発を至近距離で切断。切断された弾丸はそのまま俺の背後で二箇所で爆発する。
「凄く痛いですけど我慢して下さい‼」
俺はそのままもう一方の天の峰で厳顔の腹部に渾身の一撃を食らわせた。
「がはっ⁉」
交わし切れなかった厳顔はそのまま豪天砲を手放し、少し先に飛ばされる。
「ぐっ! 本当にかなり痛いではないか・・・・・・」
「厳顔さんの・・・“豪天砲”でしたっけ?
あれの弾に比べたら痛くは無いと思いますよ」
そう言いながら俺は倒れたままになっている厳顔の首筋にそっと鋒を突きつける
「降伏してくれますね?」
そう厳顔に問う。すると彼女は微笑みながら俺の顔を見る。
「ふふっ。確かに儂の負けじゃ。潔く降伏するとしよう。それに・・・・・・」
そういいながら厳顔は味方部隊の方角を見る。俺も横目で見てみると先ほどまで遠くだが見えていた“漆黒の魏旗”が見えなくなっていた。
翠と蒲公英が担当していた魏延の牙門旗だったが、見えないということは向こうも終わったようだ。
「もう一人も捕まったみたいじゃからな」
「魏延ですね?恐らくは俺達の本陣にいます。立てますか?」
「何とかな・・・」
「さぁ、行きましょう。紫苑達が待ってますよ」
「ほぅ・・・紫苑も降ったとは聞いておったが、既に真名まで託されとるとは・・・」
「ええ。紫苑も既に俺達の大切な仲間です。厳顔さんも「桔梗じゃ」・・・」
「儂の真名は桔梗じゃ。この真名をお主に預けるとしよう。お館様♪」
「お・・・お館?」
そんなやり取りをしながら俺は飛燕に豪天砲を載せ、桔梗に肩を貸して本陣に戻る。
自分達の大将が捕縛されたと知った厳顔軍将兵は次第に降伏していき、雒城も無事に制圧出来た。成都への道のりは目と鼻の先に近づいついた・・・・・・。
厳顔こと桔梗を降し、雒城を陥落させた一刀達は城内にて決戦に向け、英気を養う。
新たな仲間になったが一刀を認めない魏延こと焔耶は一刀に仕合を申し入れた。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[御膳仕合]
剛力少女が御使いに挑む。