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第129話:新しい相棒

ライルの新しい得物が生まれる。

ウルフパックの本拠地ヴェアウルフと海兵隊本部の浦口駐屯地より更に江河を上った先にある八卦洲。俺はとある用事でこの地域にある軍事施設に赴いていた。


孫呉海兵隊の武器や防具を製造する直轄の兵器製造局“孫武呉起”という兵器省だ。


ここには呉鈎などの武器を生み出す鍛治場と、海兵隊専用の軍船を設計する造船所の2箇所に分けられており、職人達が日々制作を行なっている。


そして俺は現在、刀剣類の鍛治場にクラス"A"サービスドレスを着て槍を手にしていた。


「・・・・・・これではないな。全体的に幅が違うし、何よりも重量の偏りがある」

「そうですかい・・・しかし中々難題ですなぁ。ライルの旦那」


孫呉お抱えの刀鍛冶である呂藩が製作した槍を手にして軽く振るう。


なぜ俺がこんなことをしているかというと、前々から調子が悪く、長坂橋で牙刀との戦いで破壊された神斬狼に代わる新しい得物を模索しているからだ。


俺はああいう武器の他に剣術と槍術を使え、呉鈎を採用しているから剣術はそちらを使えばいい。だったら必然的に俺は新しい得物を槍の一種にしたのだが、これが難題だ。


既に何通りもの試作した槍を振るってみたが、どれも何か違う。呂藩の実力が原因ではない。寧ろ彼の作品はどれを取っても最高な逸品で、これは単純に俺の感覚の問題だ。


「すまないなおやっさん。せっかく作ってもらったのに・・・・・・」

「いえ、ボツになった槍は売り物になりますから大丈夫でさぁ。しかも旦那の武器を作るのにはかえって燃えて来るってもんですぜ‼」

「ははっ・・・・・・だが無理だけは絶対にしないでくれよ。身体を壊したら元も子もないからな」

「解ってまさぁ‼まだまだ若い者には負けてませんぜ‼」


元気でいてもらうのは最もだが、元気過ぎるのもどうかと思うが・・・。俺達が入り口まで歩いているとすぐ前に2人の姿を見掛けたが片方に見覚えがあった・・・・・・美花だ。


「お〜い、美花」

「あぅあ⁉・・・ら・・・ライル様・・・」


相変わらず美花は恥ずかしそうにしながらトテトテともう一人の背後に隠れ、顔を少しだけ出してこちらを見る。これが戦場で“孫呉の鬼人”と呼ばれる猛者とは思えない位に可愛らしい姿だ。


「美花・・・・・・くすぐったい」

「すまないが、君は?」

「あぁ、旦那は会うのが初めてでしたな?こいつはあっしの娘でさぁ」

「私・・・呂人・・・・・・字は博嘉」


そういえば確かにおやっさんには娘がいると聞いたことがある。水色のショートヘアーで瞳は藍色。身長は大体140cmの小柄で鳥の形をした髪飾りをした女の子だ。


特徴的な喋り方であり、なんだか恋みたいな雰囲気を醸し出している不思議な女の子だ。しかし彼女と呂藩を見て思ったことが一つある。それは・・・。


(・・・似てないな)


顔がまるっきし似てないのだ。


「・・・旦那・・・・・・今すっごく失敬な

ことを考えてやせんでしたか?」

「いや・・・何でもない・・・・・・俺はライル。宜しくな」

「・・・・・・うん」

「まぁ、口足らずなんですが、あっしの自慢の娘でさぁ。ガキの頃から鍛治場に入って妙に出来がいい刀や槍なんかを作りやすからねぇ。いずれは婿養子を入れて跡を継いでもらいたいもんでさぁ」


どこにでもいる親バカだな・・・。まあ、超が付く程の妹バカである千里と比べたらまだマシだ。

すると高々と笑っている呂藩は何かを閃いたようであり、実の娘に話しかけた。


「おぅ、そうだ‼博嘉、おめぇ当面は客からの注文はないか?」

「ううん・・・・・・注文の剣は・・・二日前に出来た。・・・お客さん・・・喜んでた」

「そうか・・・だったら旦那の新しい得物を造ってみねぇか?」

「新しい得物?」

「そうだ。いいですかい?ライルの旦那」

「あぁ、おやっさんが任せるんだ。それに実力も認めているんだから腕は確かだろう」

「決まりですな」

「・・・じゃあ、新しい得物の特徴・・・教えて・・・出来たら・・・・・・指定したい箇所も・・・」

「了解だ。仕様書はこれになる。材料や資材も必要なものがあればいってくれ。すぐに用意させる」

「(コクリ)・・・分かった。だったら・・・お願い」


博嘉は俺の傍に歩み寄り、身長差もあったので軽くしゃがんで顔を見る。


「・・・甘いお菓子・・・食べたい」

「・・・・・・・・・はい?」


彼女からの頼みに自分でも素っ頓狂な声を出してしまうが、彼女は気にせずに頼みを口にする。


「前に・・・美花から聞いた・・・・・・“ちょこ”・・・博嘉も食べたい」

「生チョコか・・・・・・いいよ。出来上がったらすぐに届ける」

「(コクリ)」


そういうと博嘉は笑顔で頷く。なんというか・・・何処と無く恋と雰囲気が似ているな。俺が立ち上がろうとしたら美花が俺の上着を握り締め、何かを訴えていた。

それを悟った俺は美花の頭を撫でながらその訴えに応える。


「解ったよ。美花も軍船の設計で多忙だしな。ちゃんと美花の分も用意するよ」

「はぅあ・・・あ・・・ありがとうごしゃいましゅ・・・噛んじゃった・・・」


・・・本当に可愛らしいな・・・この義妹は・・・。そんなくだらないことを考えながら俺は鍛治場を後にする。










・・・・・・それから2日後、驚くことに注文した得物が出来上がったと呂藩が品を手にして城を訪れたのだ。

はっきり言って早過ぎる。


彼等のルールで出荷前にはおやっさんが一つ一つ確認するらしいが、問題どころか今までで彼女が作った中でも最高の出来らしい。

どうやら彼女は注文した直後に彼女専用の鍛治場に籠り、食事どころか睡眠も無しで48時間ぶっ続けで製作していたようだ。そして今はグッスリと眠っており、起きるのは明日の夕方頃という。


後日、彼女にお礼の品を持っていくことを考えながら雪蓮殿達が待つ玉座へと足を運んだ。


「ねぇねぇ、どんな風の武器にしたの⁉」

「落ち着きなさい雪蓮。まずはライルが見てからよ」


玉座には雪蓮殿と冥琳殿、蓮華殿、華蓮殿、シャオ、祭殿、穏、思春、明命、亞莎、千里、美花、優龍、百合、美羽、七乃、八枝、九惹、アレックス、レオン、南郷、それにおやっさんという重鎮達だ。


「ねぇねぇライル‼早く見せてよ‼」

「見る限りでは槍に見えるわね」

「はい、しかしそれにしては短いかと・・・」

「ふむ・・・じゃがあやつの考えた得物じゃ。興味が湧くわぃ」

「はぅあ‼もったいぶらないで下さい⁉」

「あ・・・あの・・・・・・わ・・・私も・・・楽しみです・・・」

「ライル様は確か鉤爪を使ってたけど・・・」

「や・・・・・・やっぱりライル様は凄いお方です・・・」

「うむ。それがしも楽しみである」

「(ワクワク・・・ワクワク・・・)」

「のぅ七乃、みなが集まってどうしたのじゃ?」

「これからライルさんが新しい武器を見せてくれるんですよお嬢様♪」

「ほんまに楽しみどすなぁ、九惹はん♪」

「あぁ、ライルは教えて頂けなかったからな」

「俺は槍にウォッカを賭けるぜ♪」

「自分は剣にフィッシュ&チップス‼」

「・・・賭けにならないと思うが・・・」


全員が俺の新しい得物を楽しみにしているが、そこのロシア系とイギリス人・・・何を賭けてやがるんだ?

しかもフィッシュ&チップスを賭けるな。せめてビールのスピットファイアにしろ。


「・・・・・・では、さっそく披露させて頂きますが、よろしいですか?」


全員を見渡すとそれぞれが楽しみにしている。確認した俺は呂藩からデカイ大布に巻かれた得物を手にして、それを一気に解いて全体を露わにした。


「・・・凄いな」


全員がその出来に言葉を失う。そこから現れたのは二筋の槍。だが全体的に短く、反りを持たせていて稲先が鋭い中央が膨らんだ片刃で、峰にはスパイクが設けられている槍が二本。


「・・・それがライルの新しい武器・・・」

「・・・何という輝きか・・・」


稲先は全体が黒であり、そこから光が反射して黒く光っているように見える美しさ。俺の新しい武器の正式名称はグレイブ。

それを2.0mから長さ1.2mに縮めて稲先を薙刀みたいに反りを持たせている。


「どうですかい旦那?」

「・・・・・・凄過ぎるな・・・重量も抑えられてシックリ来る」


俺は両手に・・・ショートグレイブを手にして軽く振ってみる。本当に軽くて使い易い。博嘉の実力には本当に驚かされた。


「ねえライル、その槍の名前は?」

「名前・・・・・・こいつは・・・」


俺は二つを見て暫く考えて、ある文字が閃いた。


「こいつらの名前は・・・“雷”と“雪”です」


俺はそれぞれ雷と雪という名前を付ける。ここに英雄の新たな得物が得られた瞬間であった・・・・・・。

人質を救い出し、黄忠軍を配下に加えることが出来た劉備軍。ポーとクラウドも城外の野営地で寛いでいると来客が訪れる。


次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”

[優しい花]

益州の弓使いが2人に訪れる。

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