第128話:魏武の龍と魏武の大剣
牙刀と春蘭による訓練風景。
洛陽にある鍛錬場。ここでは現在、私が率いる部隊と夏侯惇殿と夏侯淵殿が率いる黒騎兵隊による合同訓練が行なわれている。
各員がそれぞれ剣や弓、槍に分かれて掛け声と共に武を振るう。黒騎兵隊は私の隊に比べても統制が取れ、私の部下達にはいい手本となるだろう。
訓練の指導には凪や真桜、沙和、張郃殿が担当していて、その訓練に季衣と流流も参加してはいるが、まだ幼いということもあり力の加減が出来ず、既に何人か医務室に直行となってしまったが・・・。
そして私はというと・・・・・・。
「でりゃあぁああああ‼‼」
「そんな大振りでは私に当てられませんぞ‼」
夏侯惇殿と仕合をしていた。彼女の攻撃は凄まじい勢いで怯むこと無く向かって来るが、まだ無駄が見られる。
「もっと間合いを意識しながら闘って‼大振りだとかわされたら一巻の終わりです‼」
「だったら避けていないで大人しく当たられればよいだろ⁉」
私の言葉に彼女は七星娥狼を振り上げるとそのまま姿勢を低くして、回転しながら振り払う。
しかし私はそれを冷静に見極め、一撃目は後方に回避して、二撃目は赤龍偃月刀で防ぐ。
それを防ぐと同時に弾き、素早く回転すると反動を利用して偃月刀の石突で突く。それに何とか反応した夏侯惇殿は刀身で受け止めるが、反動で少し後方に押された。
「くっ⁉まだまだぁあ‼‼」
「その動きも予想済みです‼」
夏侯惇殿はその場を力強く蹴るとそのまま物凄い勢いで刺突を繰り出して来たが予想済みの範囲だ。
私は偃月刀を左手で持つと彼女の右側に回り込んだ。
「なにっ⁉」
「うらぁああ‼」
「うわっ⁉」
腕を掴むとそのまま彼女を振り回し、勢い付いた処でそのまま放り投げた。流石に態勢を整えられなかったようであり、着地に失敗した彼女はそのまま地面を何度か転がった。
「ぐっ⁉なんのこれしき・・・・・・」
ふらつきながらも何とか七星餓狼を手に取ろうとするがそうはいかない。素早く彼女の下に歩み寄り、地面に落ちたままの七星娥狼を足で押さえ込むと偃月刀の鋒を彼女の喉元に突き付けた。
「・・・・・・まだやりますか?」
「ぐっ⁉・・・・・・わ・・・私の負けだ・・・」
「これでまた私の勝ちです」
「次は私が勝つ‼だから早く構えろ‼」
「・・・・・・確か三回までのお約束だったはずですが?」
「そんなの知らん‼私が今だといったら今だ‼」
私は軽く溜息を吐いてしまう。最初の約束で確かに三回までの仕合だったのに、夏侯惇殿はまるで駄々をこねる子供のようにせがむ。
私達は所属も階級も違うからこういった合同鍛錬でしか手合わせが出来ないし、前回の合同鍛錬に私は幽州にいたので参加は出来なかった。
どうもその際に夏侯惇殿は私との仕合を楽しみにしていたようであり、今回はその侘びも兼ねて一回の処を三回にしたのだ。
流石に手こずっていると弓を手にした夏侯淵殿が歩み寄って来た。
「どうかしたか姉者?」
「しゅうら〜ん‼牙刀が仕合をしてくれんのだ‼」
「はぁ・・・確か三回までだったであろ?」
「しかしまだ私は勝ってないぞ‼」
「いちど結んだ約束は守らないとならないだろ?それに・・・・・・華琳様に知れたらお怒りになられると思うが?」
「うっ⁉・・・そ・・・・・・それは嫌だ・・・」
「そういうことだ。すまないな牙刀。姉者が我儘を言って・・・」
「いえ・・・何時ものことですから問題ありません」
しかし何というか・・・夏侯惇殿も曹操殿が絡むと大人しくなるな・・・。しかし余程私と闘いたかったのだろう。仕方がないので約束を新たにすることにしよう。
「でしたら夏侯惇殿」
「なんだ?」
「5日後には真桜の工兵隊と参刃の実験部隊が合同で訓練を行ないます。その鍛錬に私も同行致しますから、その時にお越し頂けましたらまた仕合を致しましょう」
「本当か⁉約束だぞ‼約束を守らないと許さんぞ‼」
・・・あなたがそれをいいますか・・・。まあ私が約束を守れば問題ないの話だ。そんな約束をしていると城から伝令が走って来た。
「徐晃将軍‼曹操様がお呼びであります‼」
「解った・・・・・・すみませんがお二人共。鍛錬の指揮をお任せしても宜しいか?」
「あぁ。後は任しておけ」
「牙刀‼さっきの約束を忘れるなよ‼」
「大丈夫そうですね・・・・・・では頼みます」
2人に鍛錬の指揮を頼むと私はすぐに曹操殿の処へと向かう。
余談だが、この後に夏侯惇殿がかなり無理のある鍛錬を実行したようで兵の大半が使い物にならなくなり、曹操殿に折檻されてしまったのは言うまでもなかった・・・・・・・・・。
交州から帰還したライル達。最も活躍したライルは破壊された神斬狼に代わる新しい得物を手に入れる為に行動する。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[新しい相棒]
英雄に新たな武器が齎される。