第127話:マスター
マスターの名を持つ狼が下衆の三人を始末する。
俺達は韓玄達によって人質にされた黄忠の子供を救出する為に俺とクラウドと一刀君の3人で敵陣内部に潜入。そして監禁されている空き家へと突入したが、既に人質は別の場所に連れて行かれていた。
場所を突き止めた俺達は取り返しのつかない事態へとなる前に城壁へと急ぐ。
城外では時間稼ぎに徹する劉備軍と戦いを強要されている黄忠軍が戦闘を繰り広げ、楽成城の城壁に異常なまでに太った大男が3人いた。
この男共こそが韓玄、郭石、区星。
なぜ、韓玄達がここにいるのかと言うと、いつまで経っても戦いに何の変化もないことに苛々した。
三人は戦の様子を見に来たようだ。
俺達は物陰に隠れて確保のタイミングを伺っている。
「黄忠の奴・・・さっさっと北郷軍を倒さぬか‼」
「役立たずが・・・おい‼奴の小娘を連れて来たか⁉」
「あんな小娘共に手を焼くなどとは・・・・・・所詮は女ということよのぅ」
「韓玄様‼郭石様‼区星様‼ガキを連れて来ましたぜ‼」
俺達も同じ方角を見ると兵士に抱えられている紫色の髪に桃色の幼稚園児が着るような服を着た子供がいた。俺とクラウドはMP7A1を構えるがまだタイミングが悪い。
「くっくっくっ・・・そうか・・・・・・おい役立たずの黄忠‼‼」
いきなりこの戦場すべて声が届く大声を出す韓玄。
その声に外にいる桃香達や黄忠軍兵士達も声がした方に顔を向けた。
「璃々‼⁉⁇」
「お母さん‼‼」
悲痛な親子の声が戦場に響く。
「テメエ等そこを動くんじゃねぇ‼さもなきゃこのガキをぶっ殺すぞ‼‼」
韓玄がそう言うと腰に差している剣を抜き璃々の首へ近づける。
俺達は段々と奴らに対する怒りを強めて行くのを感じる。卑劣極まりない外道連中を直ぐにでも殺してやりたい。
自分の娘の命の危険に焦る黄忠に、幼い子供を人質にする韓玄達に怒りを露わにする桃香達。その怒りは一般兵士にも芽生えている。
「お母さん‼お母さん‼‼」
「おい役立たず‼その小娘共をさっさと捻り潰しやがれ‼」
「もっとも、無能な輩にも同じ道を歩んで貰うがのぅ」
城壁で耳触りな笑い声を発する3人に対してあまりにも外道なやり方をする韓玄達を睨む黄忠。
その眼には怒りと悲しみが込められていた。
「なんだその眼は⁉まだ自分がどういう状況にいるのか分からないようだな・・・おい‼ガキの腕を切り落とせ‼‼」
「へぃ‼」
黄忠の態度に苛々きた韓玄は璃々を拘束している兵士にそう言う。
命令された兵士は大きく振り上げる。
「安心しな・・・一瞬で終わるからよっ‼‼」
「璃々‼⁉⁇」
“これはまずい”
直感で感じた俺達はすぐさま照準を敵兵に合わせ、4.6mm弾を発砲して倒す。
「なっ・・・なんだ⁉」
「Move!!Move!!」
敵兵を倒して俺達は一気に突入を敢行。俺とクラウドがMP7A1で人質の近くにいた敵兵を始末すると神龍双牙を抜刀して薙刀にした一刀君が確保へと急ぐ。
「ポーさん‼クラウドさん‼」
「俺達が食い止める‼君は桃香ちゃん達の下へ‼」
「分かりました‼頼みます‼」
一刀君は人質を脇に抱えると全速力で城門へと駆け出す。暫く呆気に取られていた敵兵だがすぐ正気を取り戻して弓を射ろうとするが、MP7A1でそれらを倒す。
「なんだテメエ等⁉」
韓玄、郭石、区星がそれぞれ剣や槍、斧を手にして迫る。俺達は互いに背中合わせにして周辺に包囲した敵兵に殺気をぶつける。その手にはグルカナイフと多節棍“百足”を構える。
「貴様等何者だ‼」
「お前等クソに名乗る名前なんざ無いんだよ」
「この国に蔓延るゴミの掃除屋とでも言っておく」
郭石が大声で叫ぶと、俺達も殺気全開で睨みつける。すると韓玄と区星の2人がMP7A1を見て何かを悟ったようだ。
「黒く見えない弓矢を放つ筒・・・・・・くっくっくっ・・・・・・そうか‼貴様等、孫呉の“天の軍隊”だな⁉」
『天の軍隊⁉』
天の軍隊という言葉を聞いて周辺の敵兵がざわめき出す。まさかここでも俺達の存在が有名とは・・・。
「くっくっくっ・・・・・・どうやら俺様にツキが回って来たようじゃねえか・・・郭石‼区星‼」
「おぅ‼俺等の時代が来たみてぇじゃねえか‼」
「お主等はもはや袋の鼠じゃ・・・」
「なんのことだ?」
「貴様等・・・・・・俺等の手駒になるかこの場で八つ裂きになるか、どっちか選びやがれ」
「何をふざけたことをほざく?」
いきなり勧誘を始めた韓玄、郭石、区星の3人。
「テメエ等バカだろ⁉こんな状況で貴様等が勝つなんてねぇんだよ‼」
「孫策のような田舎の小娘にそんな力は勿体無い・・・・・・その力は全てわし等のもんじゃ」
「断んなら構わねぇぞ。孫策や野良犬のクソガキに仕える大バカなんだからよぅ・・・ひゃひゃひゃひゃ‼」
郭石の耳触りな笑い声をきっかけに周りのクソ共が笑い出した。もはや同情の余地などありはしない。こいつ等は皆殺し決定だが、一つだけ聞いて見たいことがある。
「なら貴様等に一つだけ問う。あんな小さな女の子を人質にして恥ずかしいと思わないのか?」
「あぁああん?」
「おかしなことを口にしよる・・・あんなガキの1人や2人、そこら辺に湧いて出る」
「はん‼家族やらなんやら耳触りなことを言う連中なんて知ったことじゃねぇんだよ‼家族なんざ食いもんでしかねえんだからよ‼」
その言葉で俺等の怒りは最高潮を向かえたように感じる。俺は百足の特性である七節棍と五節棍の二つに分け、両手で構える。
「・・・・・・クラウド」
「あぁ、周りの雑魚は俺で充分だ。お前はあのゴミ連中を始末してくれ」
「任せたぜ。アサシン」
「そっちもな、マスター」
「何を話してやがんだ?」
「俺等の方針が決まったぜ・・・・・・」
俺がそういうとクラウドがグルカナイフを構えて敵集団の中へ突入していき、周辺の敵を次々と切り裂いていく。
「なっ⁉」
「貴様等を・・・・・・殺す‼‼」
そういうと俺は郭石の懐に飛び込み、七節棍で奴の顔に叩きつける。
「がはっ⁉」
「貴様等を許さない・・・家族を食物だと?・・・・・・ふざけるな‼貴様等三人はこのポー・リーチェンが殺してやる‼‼」
「くっ⁉だったら望み通りに殺してやらぁ‼」
俺の攻撃に対して郭石は槍を突き出し、韓玄は剣、区星は斧で仕掛けて来たが楽に回避する。
「テメエ等‼邪魔すんな‼」
「貴様こそ邪魔なんだよ‼このクソガキは俺の獲物だぞ‼」
「貴様が邪魔じゃ‼引っ込んでおれ‼」
今度は仲間割れか・・・・・・何とも救えないクソ共だ。俺は遠慮なくこの3人を纏めて痛めつけてやる。今度は七節棍でこいつ等の汚物が溜まった腹めがけて一撃を加えて吹き飛ばす。
「くそくそくそくそ‼‼」
「景気付けだ。まずは貴様から殺してやる」
郭石に狙いを定める七節棍に氣を流し込み、強度を高める。俺の百足には氣を流し込むことで硬さを調節できる。
今の七節棍は岩をも貫通する程に強度が増した多節鞭のようなものとなっている。それを腹を抑えながら膝をつく郭石に振るう。
「ぎゃっ⁉」
モロに横腹に食らった郭石の身体は見事なまでに真っ二つとなり、上半身は音を立てながら地面に落ち、俺の足下に腐ったこいつの血が流れ出す。
「まずは一匹目・・・」
「くそ⁉郭石の役立たずが⁉」
「隙ありじゃ‼くたばるがよいわぁ‼」
今度は背後から区星が斧を振り下ろすが、俺は背中を向けながはそれを軽く受け止めて防ぐ。
そして左手に持った五節棍も同じように氣を流し込んで強度を高めて、区星の左目目掛けて突き刺してやった。
「これで残りは一匹だけだ・・・・・・」
突き刺した五節棍を引き抜き、氣を止めて元の状態に戻す。韓玄は俺の返り血を被り、殺気あふれる眼を見て後ずさりを始めていた。
「くっ・・・⁉」
「念仏は・・・唱え終わったか?」
「う・・・く・・・来るな⁉来るな化け物⁉来るんじゃねぇ‼」
少し暴れただけでさっきの勢いが完全に消えて、韓玄は剣をただ振り回すしか出来なくなっているようだ。俺は百足を繋げて元の十二節棍に戻すと氣を練り、それを百足に流し込む。
「貴様はゆっくりと殺してやる・・・」
「な・・・なにが⁉」
百足を手にして俺は奴の剣を弾き飛ばし、身体を回転させながら奴の首に百足を巻き付けた。
「なっ⁉なんだよこりゃ⁉多節棍じゃねえのかよ⁉」
「冥土の土産に教えてやる・・・こいつは氣を流して硬さを調整できるんだよ」
「ま・・・待て⁉お・・・・・・俺が悪かった‼だ・・・だからどうか命だけは⁉・・・あがっ⁉」
「今更遅いんだよ・・・・・・おっ、向こうは終わったようだな?」
俺は百足で奴の首を締め付けながら横を見ると全身に返り血を浴びて両手にグルカナイフを持ちながら歩いて来るクラウドの姿。
「ポー、こっちは終わったぞ」
「相変わらず手際がいいな・・・・・・凄い姿だぞ」
「それはお前も同じだろ?」
確かに俺の姿もクラウドほどではないが返り血を浴びている。第三者から見たらその姿に加えて辺りにはクラウドが皆殺しにした韓玄達に組みしたクソ共の亡骸。
その光景はまさに“地獄”そのもの。そして俺達は罪人に罰を与える鬼というところか・・・。
「で・・・・・・まだそいつを殺らないのか?」
「おっと・・・忘れてた」
「ぐがっ⁉がっ・・・あがっ・・・・・・」
俺は徐々に締め付けを強くしていき、韓玄は口からヨダレを垂らし、顔色も青くして言葉を発せられなくなっている。そろそろ俺の氣も限界に近付いていたので、ひと思いにトドメを刺してやることにした。
「じゃあな・・・・・・クソブタ野郎‼‼」
そういうと一気に百足を締め切り、奴の首は骨が砕けて肉が締められる音を出しながら切断された。
奴の首は俺の足下に転がって来て、それを一気に踏み潰してやった。
「任務成功だな?」
「ああ、ひとまずはセーフティゾーンに向かうぞ。返り血の服で彼等と合流したくない」
「了解だ。行くとしよう」
そう言うと俺達はこの修羅場を後にして、血塗れの服を着替える為にセーフティゾーンへと向かう。
この戦いの後、人質が助けられたことで戦う理由が無くなった黄忠軍は劉備軍に降伏。そのまま楽成城は劉備軍に託されて、黄忠もそのまま劉備軍に降った。
関羽、張飛、趙雲、馬超、そして黄忠。これで五虎大将軍が集結したのであった・・・・・・・・・。
洛陽にある鍛錬場。牙刀と春蘭は久々に仕合をしていた。兵士達が見守る中、2人の得物がぶつかり合う。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[魏武の龍と魏武の大剣]
2人の武将がぶつかり合う。