第125話:歌姫
魏の歌姫達、久々の休暇に向かう。
徐州の北部に位置する青州。ここはかつて袁紹が納めていたが、度重なる過度の増税や兵達による横暴が酷く、袁紹が死んだ後に旧黄巾党の残党達が蜂起。
しかし曹操の尽力で暮らせるだけの畑と土地を与えるという条件で組み込むことに成功した。
現在は“青州兵”とされており、元々は歴戦をくぐり抜けて来た猛者ばかりだったので、曹操軍の中でも屈指の士気を秘めている。
その高い士気を保つには其れ相応の技量が無ければ不可能だが、彼等にはある“特別な手段”がある。そしてその手段は・・・・・・。
「みんな大好きー?」
『てんほーちゃーーーん‼‼』
「みんなの妹ー?」
『ちーほーちゃーーーん‼‼』
「とっても可愛い」
『れんほーちゃーーーん‼‼』
今日も青州兵を集めて歌を歌っていた。彼女達は“数え役満姉妹”という現代でいうところのアイドルグループで、その個性の可愛らしさと歌声で絶大な人気を誇っている。
しかし彼等からの絶大な人気の理由は他にもある。
漢王朝が無能であると知れ渡るキッカケとなった“黄巾の乱”。その黄巾党の首謀者とされる天公将軍こと張角に姉妹の張宝と張梁。
この名前が彼女達の本当の名前であり、かつて世間を騒がせた張三姉妹その人達である。
曹操は表向きで彼女達を“男”であるとして死んだことにし、徴兵活動と慰安活動の役割をやらせる条件で陣営に保護したのだ。
「みんなぁ〜♪今日は来てくれて本当にありがとう♪」
「やぁ〜ん♪ちぃ、と〜っても嬉しい♪」
『わぁあああああああああ‼‼‼』
「じゃあ早速いっくよ〜♪みんなも楽しんでね〜♪」
桃色のロングヘアで三人の中で一番胸が大きい長女の天和がそういうと観客の青州兵達は歓喜を挙げて楽しみ出す。そして彼女達の歌が始まった。
ライブは何の問題もなく終了して、彼女達は打ち上げも兼ねて夕食を摂っていた。
「うぅ〜ん♪やっぱり美味しぃ〜♪」
「肉まんおかわり♪」
「姉さん達、慌てて食べると喉に詰まらせるわよ」
美味しい料理で舌鼓をうつ天和と地和に対して落ち着いて食べる末っ子の人和。すると扉が開けられて蒸籠を抱えた2人の青州兵が入ってきた。
「「お待たせしました‼追加の点心です‼」」
「ありがとうね張ちん♪波ちゃん♪」
「おっそ〜い‼ちぃ待ちくたびれちゃったんだからね‼」
「すみませんね。二人とも」
「いえっ⁉皆さんが喜んで頂けたら我等は満足です‼」
「その通りです‼」
お礼を言われて2人は嬉しそうに蒸籠を机に置く。彼等の名前は張 曼成と波才。
三人が旅芸人をしている頃から付き従っている熱狂的な信仰者で、彼女達が曹操軍に裏から加わることになると自ら進んで付き人を申し出た。
「ねえねえ‼明日の予定は何かあったっけ?」
「いえ、曹操様から日々の活躍で兵の調達は順調なので明日から10日間はゆっくり休むようにと伝令がありました」
「本当に⁉」
「はい。遠出をするのでしたら旅費も出すとのことです」
「やったぁ〜♪おっやすみ♪おっやすみ♪」
「じゃあじゃあ‼ちぃは美味しいものい〜っぱい食べたい♪」
久々に休みと聞いて天和と地和は手を挙げて喜ぶ。ここのところ纏まった休みは無かったから、丁度いい機会だ。
「私は久々に温泉に行きたいわね」
「あっ⁉だったら私も行きたい‼」
「分かりました‼でしたら明日すぐに手配します‼」
「うん♪ありがとうね張ちん♪」
「でしたら皆さん、呉に行ってみませんか?」
「うにゃ?呉に?なんで?」
「旅商人から聞いたんですけど、何でも建業の近くに眺めがいい温泉宿があるらしいんです」
「ほんとに⁉」
「あと建業に新しい店が出来たらしいですよ」
「わぁ〜‼じゃあみんなで行こうよ‼」
「・・・まあ、身元が分からなかったら大丈夫でしょうから、呉にしましょ」
「うん‼」
「じゃあ僕は出国手続きを済ませますね」
「おっねが〜い♪」
そういうと5人は夕食を再開させ、翌日から休暇を楽しむ為に旅人の服装と荷物を手に馬車で向かう・・・・・・。
交州での戦いに勝利した孫策軍は無事に平定を果たした。その交州本城ではささやかな宴が執り行われていた。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[戦いの後]
宴に神秘的なことがある。