第12話:食事
董卓軍に雇われたライル。警邏の後に食事をする。
俺達が董卓軍に雇われて3ヶ月が経過。季節的にはもうすぐで冬に入るだろう。既に洛陽に住む民達は冬支度を開始しており、食堂では冬に合わせて辛い匂いがくすぐる。
董卓軍に参加した俺達の待遇であるが、基本的には俺が指揮する部隊はウルフパックのみで、他部隊の指揮はその部隊の指揮官が負傷若しくは戦死した場合のみ。
見返りとして洛陽の警邏能力向上に知識を流用することになった。
更に前々から何気に問題になっていた新しい部隊名への改名。流石にこの時代で横文字は読みにくいらしい。だが新しい部隊名など、そう簡単に出てくるものではない。そこで新しい部隊名が出てくるまでの間、“海兵隊”として運用することになった。
部隊名を新しくした俺はその日の朝議で公表して、終了すると午前の警邏に赴いた。
「それじゃ、午後の警邏を任せたからな」
「ハッ‼」
待ち合わせ場所で交代に来た董卓軍警邏部隊に引き継ぎを済ませると俺は城に戻るが、腹が小さく空腹だと告げる。幸いにも俺がいる場所は繁華街で、至る店から旨そうな匂いが立ち込めている。
「時間もまだあるし、腹ごしらえを先にしていくか・・・」
考えに至ると繁華街を歩き出す。
洛陽では既に俺達の存在は有名であり、俺の今の格好はいつものデジタル迷彩服に野戦帽、防弾能力がない黒色のタクティカルベスト。
警邏任務向けに採用しているMP7A1小口径サブマシンガンと俺専用にカスタマイズしたMk45A1Aを装備しているからか、周囲の民から珍しい目で見られている。更に女性からの視線が多く、挨拶代わりに微笑むと顔を真っ赤にして俯いてしまう。
寒くなって来ているから風邪でも引いたのだろうと判断した俺は気にせずに歩く。
手頃な店を探していると近くの店で見覚えのある人を見つけた。
白黒の別れた服に触角を思わせる2本の髪が立った赤い髪。
董卓軍第1師団師団長で“真紅の鬼神”で恐れられている呂布こと恋だ。どうやら恋も食事をしているようだ。俺も店の入り口をくぐり恋に話しかける。
「やあ恋」
「モキュモキュ・・・・・・ライル」
奇妙な音を出して、リスなどの小動物みたいに食べ物を溜め込み、つぶらな瞳で反則とも思える位に可愛らしく食べる恋は、食べ物を飲み込むと俺に気付く。
「珍しいな、恋が1人で食事なんて・・・・・・ねねはどうした?」
「・・・ねねは家でお仕事・・・だから1人でご飯、食べに来た」
そういえば城から帰る際にねねの悲鳴に近い声がした気がしていたが、恐らくは大量の書類整理で悲鳴を上げているのだろう。
ひとまずは恋と同じ席に座ると店員がお茶が入った湯飲みを持って来た。
「いらっしゃいませライル将軍。ご注文は?」
「炸醤麺と白米、それから餃子を二人前頼む」
「畏まりました」
店員は一礼をすると厨房に注文を伝えに行く。視線を恋に戻すと自然に彼女が平らげた料理の皿が眼に飛び込んでくる。
「・・・相変わらずよく食べるな・・・・・・どれだけ食べたんだ?」
「・・・まだお腹一杯じゃない」
しかしどう考えても20人前以上は平らげている。
見ていてこっちが満腹になりそうだが、1つ気になった。
いつもはネネと一緒に食べて会計はネネ。そして財布はネネがいつも持っている。
だが今ネネは城で仕事をしている。何故か知らないが嫌な予感がしたので、聞いてみる事にした。
「・・・・・・えっと・・・恋?」
「モキュモキュ・・・・・・?」
「野暮な質問だが・・・・・・財布は持って来てるよな?」
そう言うと恋は自分のポケットを調べ、一通り調べると何時もの表情で予想通りの言葉を言った。
「・・・忘れた」
その言葉で思いっきり転けた。俺は頭を摩りながら呆れる。
「わ・・・・・・忘れたって・・・」
「(ジィー)」
「え・・・・・・えっと・・・れ・・・恋さん?」
「(ジィー)」
何時もの犯罪級にすごく可愛い無垢な表情でこちらを見る恋。あからさまに何かを訴え掛けているが、それが何なのかすぐに理解した。
「(ジィー)」
「・・・・・・・・・ハァ・・・・・・分かったよ・・・俺の奢りだ」
「(コクリコクリ)」
嬉しそうな表情をすると再び食べ始める。こうなると確実に満腹になるまで食べるだろう。
幸いにもジーンから貰っていた資金でなんとかなるが、店側にとっては災難だろう。何しろ店の食材がなくなるのだから店の運営ができなくなる。
暫くすると俺が注文した炸醤麺と白米、餃子2人前をお盆に乗せて持ってきた。
「お待たせしました」
「ありがとう」
そういうと店員は新たな客を接客するために小走りをする。
箸を手にして食べようとした瞬間、いきなり視線を感じる。そして視線の先には・・・・・・。
「(ジィー)」
目線の先にあるのは出来たての餃子。試しに左右に振ってみると面白いように付いて行く。
「食べるか?」
「(コクリコクリ‼)」
首か取れるのではないかと思う位に首を縦に振る。それを小皿に分けようとした瞬間、箸から餃子が消えた。恋が取り分ける前に食らいついたのだ。
「モキュモキュ・・・」
「・・・旨いか?」
「モキュモキュ・・・・・・ゴクン・・・・・・・・・美味しい」
本音をいったら本気で可愛すぎる。というよりも本当にこの子は別次元の雰囲気を醸し出している。餃子を一口放り込むと恋が焼売を箸に刺して俺に差し出して来た。
「・・・・・・・・・俺に食べさせてくれるのか?」
「・・・恋、ライルの餃子たべた。だからライルも恋の焼売、食べる」
そういいながら恋は少し顔を赤くしながら食べさせようとする。その表情も破壊力抜群だが、仕方がないので俺は恋の差し出した焼売を頬張る。
「・・・美味しい?」
「あ・・・ああ・・・・・・」
その後も追加した料理を恋が食べさせようとしたねはいうまでもなく、嬉しかったがそれ以上に恥ずかしかった。
更に一緒に城に戻るとネネによる必殺“ちんきゅうキック”が飛んで来て俺がそれを避けるとネネが思いっきり壁に激突したのは別の話・・・・・・・・・。
ライル達が董卓軍に参加して暫く、平原にいる“天の御遣い”と“仁徳の王”が束ねる劉備義勇軍にも袁紹からの轍文は届いていた。
しかし御遣いと臥龍と鳳雛は始めから仕組まれたことを悟るが、決断に迫られる。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
「天の御遣いの決断」
天の御遣いが動き出す。