第119話:義妹の願い
狼の義妹。義理の兄に祈願する。
劉備軍の撤退支援を完了させ、クラウドとポーの2人を特別任務で残した俺達はヴェアウルフに帰還。
僅かな休息を取るとすぐに補給を済ませ、俺も火力重視で光学機器を取り付けたM27 IARに装備を交換すると交州に向かうCH-53Kに乗り込み、すぐに交州へと向かった。
相棒からの通信によれば国境付近は完全に制圧して、北側から孫策軍。南から交州正規軍の挟撃で反乱軍は敗走を重ねている状態だ。
交州の孫策軍駐屯地に到着するとすぐに本陣へと向かう。
「ライル将軍‼益州での任務、ご苦労様でした‼」
「ありがとう、孫策殿は中か?」
「はい‼報告致しますので今暫くお待ちを‼」
そう言うと本陣前にいた衛兵が雪蓮殿に報告へと向かい、暫く待っていると先程の衛兵が息を上げながら戻ってきた。それで本陣の場所だけ聞くと衛兵は休ませて、すぐに本陣へと向かう。
「失礼しま・・・「おっかえり〜♪」やっぱり来た⁉」
最早お約束となっている状況だ。俺が天幕に入った直後に雪蓮殿が抱きついて来る。
「待ってたわよ♪私のお婿さん♪」
「ちょっ⁉し・・・雪蓮殿⁉だから胸が当たってますって‼あとお婿さん⁉」
「聞いたわよ♪左薬指に指輪を嵌めるのは天の国では婚約って♪」
「・・・・・・誰から聞いたんですか?」
「アレックス♪」
・・・・・・あの野郎・・・・・・。後で覚えてやがれ・・・。
相棒に復讐を考えていると今度は背中に誰かが抱きついて来た。最初はシャオかと思ったが、よく考えたらシャオは建業で祭殿と亞莎、思春と共に留守を任されていた筈だ。
気になったので振り向くとそこには・・・。
「兄様〜♪会いたかったのじゃ♪」
「み・・・美羽⁉」
いたのは俺達ウルフパックの義妹である美羽だった。
「ちょ⁉なんで戦地に美羽がいるんだ⁉」
「だって兄様が心配じゃったのじゃ・・・」
「駄目じゃないか美羽⁉こんな危ない場所に着いて来ちゃ‼」
俺がそういいながら美羽を叱ると、美羽は体をビクッとさせて、俺の目を見ると表情をやがて怯えにさせていき、涙目になっていった。
「だ・・・だって・・・・・・ひぐっ・・・妾が・・・大好きな兄様が・・・ひぐっ・・・心配・・・じゃったから・・・ぐずっ・・・」
「お・・・おい・・・・・・美羽?」
「ぐずっ・・・兄様ぁ・・・・・・ううぇ・・・うぇえええええん‼⁉⁇ごめんなさいなのじゃああ‼⁉⁇」
怖かったのか、大泣きを始めてしまった美羽に俺はアタフタしてしまう。別にそんなつもりじゃなかったのだが・・・。
天幕にいた雪蓮殿や蓮華殿、冥琳殿、穏、明命、千里、美花、優龍、百合はそれぞれの反応を見せ始める。
「あ〜♪美羽を泣かせた〜♪」
「はぁ・・・ライル、心配なのは分かるが怖がらせてどうする?」
「あまり幼い子を泣かすのは関心しないな」
「あら〜。ライルさんってもしかしたら可愛い女の子を虐めたくなる性格なのですかぁ〜♪」
「はぅあ⁉ら・・・ライル様にそんな性癖が⁉」
「・・・ライル様・・・まさか朱里にも同じことを・・・?」
「ライル将軍・・・・・・それは某に対する宣戦布告としても宜しいのか?」
「はぅう⁉み・・・美羽ちゃん⁉泣いちゃ駄目でしゅ‼」
「あ・・・兄上が望まれるのでしたら・・・その・・・・・・」
「こら・・・・・・話が変な方向に進んでる。それから雪蓮殿、あからさまに楽しまないで下さい。それと百合も服を脱ごうとするのはやめなさい‼嫁入り前だろ⁉」
・・・・・・なんだ?・・・この状況は・・・・・・。
俺は泣き続ける美羽を何とか宥め、今は椅子に座る俺の膝に座らせている。かなり機嫌を直してくれたようであり、先程の大泣きとはうって変わって上機嫌だ。
雪蓮殿も俺の膝に座らろうとしてきたが、冥琳殿と蓮華殿によって阻止された。因みに後から七乃と三角力隊の小隊長数人がやって来て、美羽を泣かせたということで先程からジト目で見られている。
「そ・・・それで・・・・・・なんで美羽を連れて来たんですか?」
「はい、それに関しては私達が説明した方がいいでしょう。いじめっ子のライルさん♪」
「そうどすなぁ〜。ウチ等が言いはった方が分かりやすぅてよろしゅうおもいます。いじめっ子のライルはん♪」
「だから俺は虐めてないって・・・七乃、八枝」
俺は美羽の頭を撫でながら2人に返事する。八枝という女性の名前は雷薄だ。
腰にまで伸びる黒のロングヘアをマーメイドウェーブにして、小柄だが胸が星や恋なみにデカく、七乃の来ているスチュワーデスに似た服に制帽を被ったのが雷薄の姿だ。京都弁で喋るのは失笑したが・・・。
「まあ、ライルさんにお嬢様が会いたかったというのもあるんですが、出征前に届いた報告で連れてくるしかなかったんですよ」
「情報?」
「ああ、反政府軍側に旧袁家に組みしている輩は知っているな?」
冥琳殿に尋ねられると俺は無言で頷く。
「実は寿春の戦いで殆どがウチ等と一緒に雪蓮はんの処に移ったんどすが、狸や狐のお人等がその少し前に交州に派遣されとったんどすえ」
「つまりは・・・交州に部隊を派遣した時に俺達が反乱したって訳か?」
「そうどす。それでえらい厄介になっとるんどすわ」
「厄介だと?」
「その・・・実は・・・・・・・・・私達の仲間・・・家族がいるんです」
七乃の言葉で俺を除く全員が表情を暗くするが、一番辛そうなのは美羽だった。
「兄様・・・・・・」
「美羽、辛いなら私が言うわ」
「雪蓮・・・」
雪蓮殿が俺の膝に座っていた美羽を抱きかかえて七乃と雷薄の側にそっと下ろした。
「交州反乱軍にいる旧袁術軍を指揮してるのはね、紀霊っていう武将よ」
三国志の中でも謎に包まれた人物はたまにいるが、その中でも有能であったのにも関わらずあまり記されていないのが紀霊だ。
「紀霊は美羽を実の娘みたいに大事にしてたからな。我等が流した“袁術殺害”を間に受けたのだろう」
「紀霊殿は我等にも親しく接して来た御仁だった。だからそれを裏切ったと勘違いしているようだ。偽情報が仇となったか・・・」
「はぃ〜。あの人は武や美羽ちゃんを大事にする気持ちは凄いんですけど、考えるよりも行動が先に出てしまうんですよねぇ〜」
なんというか・・・・・・冥琳殿と蓮華殿、穏の説明で大体の人物像が想像出来た。
俺が直感で感じた紀霊の人物像は一言でいい纏めると“極度の親バカ猛将”というところだろう。
「やけど、もしあのお方を説得出来申したら役に立つはずどすぇ」
「妾も・・・紀霊・・・・・・九惹(くじゃ/紀霊の真名)を助けて欲しいのじゃ‼じゃから兄様‼」
そういいながら美羽は俺に抱き付いて来た。身長差があり過ぎるから性格には足にだが・・・。
「じゃから兄様ぁ‼九惹父様を助けて欲しいのじゃ‼妾はもう‼家族がいなくなるのは嫌なのじゃ‼」
「美羽・・・」
必死に願う美羽の祈願に全員が言葉を失う。こんな小さい女の子がここまで必死になって頼んで来ているのだ。
俺は美羽の頭を撫でながら軽くしゃがむ。
「・・・分かった」
「ほ・・・本当かえ?」
「ああ、美羽の家族なら俺の家族みたいなものだ。それに今は少しでも仲間が欲しい。雪蓮殿達が認める程の実力ならば、味方に出来れば頼もしいだろう」
「ふふっ♪そう言うと思ったわライル♪ねえ冥琳?」
「ああ、それでこそライルだ。穏」
「はぃ〜。九惹さんの場所は明命ちゃんが調べてくれてますよぉ♪」
「はい‼九惹様や旧袁術軍は奠邊府という場所に集結してます‼」
「位置は分かるか?」
「はい‼ここです‼」
俺はポケットから交州一帯の地図を取り出して明命に見せる。すると明命が指差した場所に俺は言葉を失った。何しろそこはかつて強大国だったフランスが徹底された戦術の前に大敗北した土地・・・・・・。
「・・・・・・・・・ディエンビエンフー・・・」
益州に入った劉備軍。着々と成都への道を進んで行き、20以上もある支城の一つを制圧。オブザーバーとして派遣されたクラウドは軍神と会話を交わす。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[形見]
オーストラリアの暗殺者。形見の内容を口にする。