第114話:パラディン
交州に砲撃音が木霊する。
少佐達によるパッケージ救出を知らせる無線が入って来た。
少佐達が乗るウォーピック1とウィスキー4は脱出したようだ。これで街には敵しか残っておらず、遠慮なく砲撃出来る。
自走砲部隊“ウォーアックス”の出番だ。部隊長であるこの俺、テイラー・K・ナカタ中尉も車長ハッチからパラディン内部に入る。
<HQからウォーアックス指揮官。作戦の第2段階移行許可が出ました>
「こちらウォーアックス1指揮官。了解したHQ。少佐達の脱出を確認した」
<こちらでも確認しました。対象地域なな友軍及び民間人は無し。敵しか残っていません>
「了解。準備が完了次第、直ちに砲撃を開始する。out」
HQとの通信を終了させて、ヘッドホンを操作して各車両に通信を行なう。
「ウォーアックス1指揮官より各車。状況を報告せよ」
<こちらウォーアックス2。砲撃準備完了。何時でもいけます>
<ウォーアックス3から報告。準備完了>
<ウォーアックス4から1。待機中>
<ウォーアックス5から報告。セーフティ状態で待機中>
<ウォーアックス6からウォーアックス1。砲撃可能。指示を待ちます>
5輌のパラディンからの準備完了と待機中という通信が返って来た。
「ウォーアックス1から観測チーム。聞こえるか?」
<こちら観測チーム。コールサインは“タイガー12”>
「了解だタイガー12。こちらは準備完了だ。何時でも砲撃可能。待機している」
観測チームであるタイガー12に待機中と報告する。俺達が目標から約20km先に展開していることに対し、観測チームは目標の北2km地点にいる。
20kmも離れていては何処に着弾するのか判る訳がない。だから観測チームが砲撃の際に着弾位置を報告、着弾位置を誘導するのだ。
<ウォーアックス1、主要ターゲット“ヴィクター”の座標は1-6-7、3-3-5>
「座標確認。これより砲撃する・・・・・・HE装填」
装填手に使用するM107榴弾の装填を指示して、数秒後には装填が完了。他の車両でも装填が完了して、砲撃準備が整った。
「こちらウォーアックス1。砲撃座標1-6-7、3-3-5。効力射。砲撃開始・・・・・・撃て‼」
俺の射撃命令で6輌のパラディンから一斉にM107榴弾が撃ち出され、周辺にけたたましい砲撃音が鳴り響き、砂塵と発射炎が舞う。
「こちらウォーアックス1。弾着・・・・・・今‼」
<こちらタイガー12‼目標に命中‼ど真ん中だ‼座標修正無し‼連続で吹き飛ばしてやれ‼>
「了解したタイガー12‼続けて砲撃する‼・・・次弾装填急げ‼」
「次弾装填・・・・・・よし‼」
「照準よし‼」
「撃て‼」
ほぼ20秒後に次弾が装填され、ガナーが発射ボタンを押す。先ほどと同じように砂塵と発射炎が舞い上がり、車体が射撃の反動で揺れる。
「3・・・2・・・弾着・・・今‼」
俺は時計で着弾までの時間を計算して、数秒後には撃ち出された砲弾が目標に降り注ぐ。
そしてタイガー12が着弾状況を報告して装填手が必要な砲弾を装填。発砲、確認、装填を繰り返して行く。
17発を撃ち終わった辺りでタイガー12からの追加報告が入ってくる。
<こちらタイガー12‼敵指揮官と思われる奴が脱出を図っている‼仕留められるか⁉>
通信内容は敵指揮官の逃亡。ここで指揮官を逃がせば敵の指揮系統に打撃を与えられない。ならば仕留めなければならない。
「こちらウォーアックス1‼了解した‼ターゲットをレーザーでマークしてくれ‼」
<了解だウォーアックス1‼ターゲットをレーザーでマーク‼レーザーコードは120‼>
観測チームは時々、レーザーを使用して目標の正確な位置を伝える必要があり、その際はレーザーレンジファインダーのLLDRを携行している。
そのデータを受信すると俺は装填手に指示を下す。
「M982装填‼」
「エクスカリバー装填‼」
俺が指示したのはM982 155mm精密誘導砲弾だ。これは内部に安定翼やGPSを搭載した弾頭で、空対地ミサイルのようにピンポイントで目標を破壊する為に開発されている。
電気式信管測合器により、目標の緯度・経度・高度などの座標、信管起爆モード、GPSコード等を設定し、榴弾砲に装填する。
「データ入力完了‼」
「装填よし‼」
「撃て‼」
発射直後、後部カバーが離脱し安定翼を展開する。最高点に達するまでは、装薬のエネルギーを有効活用するため弾道飛行する。
エクスカリバーのCEP(半数必中界)は10m以内とされ、地対空ミサイル陣地などには、地上高約4mで炸裂して、広い範囲を制圧する空中炸裂モードを、施設などには着弾の瞬間に炸裂する瞬発モードを選択する。
頑丈な鉄筋コンクリートの建物には、建物内部に突入後に起爆する延期モードを使用する。
そして今回のターゲットは対人。空中炸裂モードとなる。同じようにターゲットへの命中まで時間を測り、やがてタイガー12からの通信が入った。
<命中確認‼目標排除‼>
これで敵の指揮系統にある程度の打撃を与えることが出来た。
<ウォーアックス1、こちらアイアンマンだ。聞こえるか?>
「こちらウォーアックス1。よく聞こえます少佐」
<よくやった。廃村にいた敵はあらかた始末できた。これより制圧に掛かる>
「了解です少佐。砲撃姿勢の状態で待機します」
<頼む。アイアンマン out>
少佐からの通信を終了させると次は各車両へ通信を開く。
「ウォーアックス1から各車へ。聞いての通りだ。砲撃姿勢のままでその場に待機しろ。何時でも砲撃出来るようにしておけ、了解か?」
≪了解≫
待機命令を出し、俺の車両も何時でも砲撃出来るように待機する。
この砲撃の後、敵は完全に戦意を失って降伏するものと逃げ出すものに分かれた。俺達は廃村を完全に制圧して、次の攻撃目標へと進軍するのであった・・・・・・・・・。
長坂橋で曹操軍を振り切ったライル達は益州へと入り、白帝城へと入城する。
そこでライル達は一刀の新たな仲間と出会う。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[馬一族の出会いと特別任務]
狼、錦と出会う。