第111話:燕人と銀狼と刃と龍
豪傑2人に龍と刃が襲い掛かる。
霞と露蘭が馬に乗って戻って来た。露蘭の左腕には抱きかかえられた阿斗の姿。無事に救い出して戻って来たようでよかった。
「ライル‼鈴々‼」
「後は任せたぜ‼」
それだけ言うと俺達の横を抜けて行き、全速力で馬を走らせる。その直後に後方から二人を追撃して来た敵が凄い勢いで迫り来る。
だが鈴々は地面に突き刺していた丈八蛇矛を抜き取り、それを構えると回転し始めた。
「燕人張飛‼参上なのだ‼」
そう言うと蛇矛の矛先を敵に向ける。
「鈴々達と生死を決したい奴は・・・・・・」
その間に敵は迫り来るが、息を大きく吸い込むと凄い気迫と共に・・・・・・。
「いるかぁああああなのだ‼‼‼」
もの凄い気迫と共に大声で叫び、信じられないことにそれで先頭集団にいた敵部隊が吹き飛んだのだ。
確かに正史でも長坂橋で仁王立ちした張飛の気迫に追撃を仕掛けてきた曹操軍は怯んだとされているが、まさか気迫だけで敵を吹き飛ばすとは思わなかった。
「にゃにゃ‼ガオーーなのだぁ‼‼」
そう叫ぶと蛇矛を片手に敵布陣に突撃していく。俺もすぐに立ち直って神斬狼を展開させて鈴々の後に続いた。
「うりゃうりゃぁああ‼‼ここから先は誰も通さないのだぁあ‼」
「鈴々‼あまり前には突っ込むな‼向かって来る奴だけを片付けるぞ‼」
「分かったのだ‼」
「ハンター1-1からハンター各員‼援護しろ‼」
<こちらハンター1-2‼援護します‼>
無線で指示すると対岸で待機していたハンターキラーが向かって来る敵部隊に対して攻撃を開始。
俺も神斬狼で向かって来る敵兵を次々と仕留めていく。敵はその光景に怯みながらも仲間や部下を鼓舞して俺達に立ち向かって来る。
「なんて奴等だ⁉これが人の成す業なのか⁉」
「皆‼恐れるではない‼敵は2人‼分は我らにあり‼・・・・・・がはっ⁉」
「こ・・・この2人・・・・・・まさに・・・万夫不当・・・」
「くっ⁉絶対的な戦力差を覆しやがるなんて⁉」
指揮官がどれだけ鼓舞しても次々と俺の神斬狼で切り伏せられ、鈴々の丈八蛇予で吹き飛ばされる。それがやがて敵が新兵を中心に恐怖へと変わり、攻撃の手が止む。
俺と鈴々は橋の前に戻り、得物を構えながら殺気と気迫をぶつける。
「天下無双と呼ばれた燕人張飛の丈八蛇予‼雑兵の千や二千‼地獄に送るのは軽いのだ‼」
「鈴々」
「なんだのだ?」
「敵集団から凄い勢いでこちらに来る気配があるぞ。しかもかなりの気迫だ」
「にゃ‼そいつは強いのかなのだ⁉」
「それは直接会った方がいいだろう。・・・・・・構えろ」
俺の警告で蛇予を構え直す鈴々。その直後に敵集団の中から2人の敵が突っ込んで、その攻撃を受け止める。すると予想通りの人物だった。
「私が相手をしてやるぞ張飛‼」
「にゃにゃ⁉盲夏侯なのだ‼」
「その名を言うなぁあ‼‼」
現れたのはやはり夏侯惇だった。彼女は七星餓狼で単調ながらも凄まじい斬撃を鈴々に放つ。俺も援護で駆け寄ろうとした直後、襲いかかって来た敵の攻撃を受け止める。
「やはり徐晃か⁉」
「ライル殿‼何故貴公がここに居られるのかは聞かぬが、敵ならば私と手合わせ願おう‼」
俺の前に現れたのは赤龍偃月刀を手にして、立て続けに仕掛けて来る徐晃 公明。
尖兵部隊が2人の指揮する部隊だから、合間見えるタイミングがあるとは思っていたが、まさかこうも悪いタイミングとは・・・。
「ふん‼」
「はぁあ‼」
徐晃の一撃を受け止めて軽く飛ばすと俺は間髪入れずに右の神斬狼で突きを見舞う。徐晃にはそれを受け止められ、今度は左の神斬狼を振り上げるが弾き返される。
「うりゃうりゃぁああ‼鈴々はその程度じゃ殺られないのだ‼」
「くっ⁉・・・舐めるなぁあ‼」
対してこちらは鈴々が余裕で夏侯惇を挑発して、その挑発に短気の夏侯惇は怒りを露わにしながら仕掛けていく。向こうは大丈夫だろう。
力なら恐らくは互角だろうが鈴々が条件的に有利だ。何しろ小柄特有の身軽さに加えて蛇予は攻撃範囲が広いし、鈴々の勘がある。
それに対岸にはハンターキラーが援護態勢を整えている。
一騎当千の豪傑が橋の前に陣どれば一般兵は迂闊には動けず、まともに相手を出来るのは名高い武将のみとなる。これが俺達の狙いだ。だがその武将に徐晃が出てきたのは本当に厄介だ。
徐晃は身体を回転させながら赤龍偃月刀を連続で振り上げ、最後に6回目で一気に振り下ろす。
「流石は徐晃だ‼血が滾って来たぞ‼」
「ライル殿も見事な武‼私も感服いたす‼」
「だがな‼俺は負けられん‼仲間や祖国の為にもな‼」
「それは私も同じ事‼我が忠誠の誓いを立てた曹操殿の為にも‼貴殿を討ち取らせて頂くぞ‼」
そう叫ぶと徐晃は更に勢いを強め、俺は防戦一方になってしまう。更にここで問題が生じ始める。
神斬狼が妙な軋み音を出し始めたのだ。以前から調子がおかしかったことに加えて、徐晃の猛攻に悲鳴を上げ始めたのだ。
だが俺も隙を見つけて攻撃を仕掛けるが、徐晃は一歩下がって、偃月刀を構える。
「しかと見よ‼これぞ武の極み‼」
徐晃は飛び上がりながら振り上げ、俺もその勢いで少し態勢を崩してしまう。それを徐晃が見過ごす筈もなく、そのまま両手で構えて振り下ろす。
「武の髄を見よぉお‼」
「ぐぅっ⁉」
俺は神斬狼を重ねて攻撃を防ぐが、その瞬間に俺の周りに小さな破片が舞い散った。
「くっ⁉神斬狼が⁉」
その破片とは、俺の得物である神斬狼の破片。刃は全て折れ、稼働部は根元から完全に折れてしまった。俺はすかさず徐晃を蹴り、その隙にM37K PUP SEALsナイフとOKC-3Sを抜刀して構える。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
そしてそれぞれが武器を構えて睨み合う中、その沈黙が打ち破られる。
「そこまでよ‼」
俺達は声がした方角を見る。するとそこにいたのは・・・・・・。
「・・・曹操・・・孟徳・・・」
ライル達の前に姿を現した曹操。圧倒的不利の状況の中、乱世の奸雄は欲している狼に降伏を促す。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[乱世の奸雄]
ライルの忠誠心が問われる。