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コラボ作:2匹の狼

コラボレーション作品、遂に登場。


別の外史から“傭兵”が降臨する。


*このストーリーは他作品とのコラボレーション作品で、本作はもちろんですがコラボレーション先のストーリー展開には影響はありません。

お気軽にご覧下さい。

これは決して表に出ることの無い話だ。袁紹を抹殺して官渡の戦いが終結した7ヶ月が経過した頃のとある晴れ渡ったある日。

俺は一週間の休暇と雪蓮殿達に頼まれた用事で、愛馬のスレイプニルと共に長沙へ訪れていた。

そして用事を済ませた帰り道で出会ったのだ。



“狂気的な狼の名を持った傭兵”と・・・・・・。


「ふぅ・・・・・・しかし相変わらず量が多いな・・・」


俺はスレイプニルに積まれた荷物を見て溜息が出てしまう。それは雪蓮殿達から頼まれた土産であり、初めは冥琳殿に頼まれた長沙大守への手紙をついでに届けるだけだったが、後からほぼ全員に土産を買ってくることになった。


雪蓮殿と祭殿には酒。

蓮華殿には長沙で人気の果実。

シャオにはペットである周周にあう首輪。

明命には猫にあげる魚の干物。

穏には最近発行された軍略書。

思春には何故か存在したクナイ。

亞莎には注文していたという調理服。

美羽には桃の蜂蜜漬け。

その他に俺個人のお香も買ったから結構な量になってしまった。


「すまんなスレイプニル。城に帰ったら美味いものを食わせてやるからな」


そういうとスレイプニルは進みながら頷く。やはり俺の考えが分かるようで、俺もこいつの考えが分かるようだった。

首を撫でながら進んでいたその直後、いきなり背筋が凍りつくような感覚に襲われた。

スレイプニルはその方角を見ながら立ち止まり、俺もホルスターからM45を取り出し、初弾を装填して臨戦体制を整える。


(なんだ・・・・・・こんな異様な気配は・・・・・・)


スレイプニルから飛び降りると野戦帽を被り、M45を構えながら周囲を警戒する。


「気配は・・・向こうの森からか・・・・・・スレイプニルはここで待ってろ」


頷いたのを確認したら、俺はM45を構えながら森の中へ入って行く。だが、やはりなにかおかしい。

大抵なら動物の鳴き声がする筈なのだが、その鳴き声が聞こえてこないのだ。

周囲を警戒しながら慎重に進み、少ししてから森が途切れ、結構な大きさの湖へと辿り着いた。


「・・・・・・・・・あれか?・・・・・・まさか・・・」


暫く辺りを見渡すと男が湖の側で立っていたが、俺はその煙草を咥えた男の姿に驚愕する。


M81 BDUに同色の野戦帽、各種ポーチを取り付けたODカラーのピストルベルトにホルスター、更に右手にはこの世界には有りはしない筈のロシア軍主力アサルトライフルである5.45mm×39弾のポイズンバレットを使用するAK-74と40mmグレネードランチャーのGP-30に二本の刀。

しかし一番印象だったのはその“眼”だ。そこから発せられる“殺気”や身体から発せられる“濃すぎる血の臭い”に思わず身体を震わせる。

だが、それが不味かった。暫く様子を伺っていたらいきなりその男が振り返り、AK-74を構えてこちらに銃口を向けて来た。


「⁉・・・Shit⁉」


俺は素早く横に転がって近くの岩に隠れる。その直後に俺がいた場所にGP-30から放たれた弾頭・・・恐らくVOG-25瞬発破片榴弾と思われる弾頭が着弾して周辺に土埃が舞い上がる。


「くそ⁉いきなりかよ⁉」


いきなりの攻撃で少し戸惑うが、俺も岩を盾にしながらM45で反撃。

敵はそれを横に移動しながら銃撃を続行。溝に隠れて同じように身を隠しながらAK-74を発砲する。

俺もマガジンチェンジをして新しい弾丸を装填して射撃を加える。


しかし向こうの方が火力が上で、こちらも予備マガジンは残り2本しかない。加えて向こうは確実にこちらを殺そうとしている。

仕方がないので向こうのリロードの隙に俺は一気に森の中に入って行く。

敵はそれに反応して追尾する。幸いにも敵は俺を見失ったようであり、AK-74を構えながら近づいてきた。

そしてAK-74の銃身が姿を現した瞬間に一気に掴みかかった。


「はぁあああ‼」

「⁉」


敵の手を離れたAK-74は発砲しながら吹き飛んで、敵はAK-74用バヨネットナイフを取り出しながら殴り掛かって来た。

俺もすぐに反応して姿勢を低くして回避。直後に回し蹴りを回し蹴りを放つが、敵も同じように屈んで回避。

立ち上がりながら回転しつつ俺にナイフを突き刺そうとしたが、それをすかさず受け止める。


「ふんっ‼」

「くそ⁉」


そのまま敵は膝蹴りを数回するも、俺も反動を利用して肘打ちをかます。裏拳をかましたがこれも回避されて敵は押し倒そうとしてタックルしてきたが、足を掴まれないように素早く後ろに下がる。


そのまま取っ組み合いになり、身体を木にぶつけながら抵抗する。その内に敵が俺の背後を取ってナイフで喉を斬ろうとしたが、俺は敵の顔に肘打ちを食らわし、一瞬だけ怯んだ隙に背後に回り込み、ナイフを弾き飛ばすたと首に腕を回して締め上げるが、敵は腕を掴んで一気に俺を投げ飛ばす。


「「‼‼」」


俺は転がりつつ神斬狼、敵は振り向きながら刀を抜刀して互いに鋒を向けた。


「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・日本人か?」

「・・・・・・さあな。てめえこそアメ公か?」


鋒を外さずに敵を伺う。


どう見ても日本人であり、野戦帽が外れて見えた髪は白兵戦を意識しているのかGIカットであり、その殺気を隠そうともせずこちらを睨みつける眼は歴戦を遥か昔に通り越して、もはや鬼畜。もしくは冷酷で狂気的だ。

更に外人部隊かと思ったがどうも違うようだ。外人部隊は正規軍なのである程度は軍歴に似合う雰囲気を放つが、この日本人からはそういった風貌は感じられない。


となると、答えは一つだ。


「・・・貴様・・・・・・傭兵か?」

「・・・そうだったらどうする気だ?ジャーヘッド野郎」

「どうやってこの世界に来た?」

「さあな・・・」

「武器を降ろせ。ここで死んでも何もならないぞ」

「勝った気でいるんじゃねえクソ野郎。てめえこそ下げやがれ・・・その気に食わねえ顔を斬り落としてやる・・・」


殺気と共に何とも品の無い言葉を放つ。ここまでくると逆に清々しいが、はっきりいってこいつの印象は“狂人”だ。

戦うことに快感を得て、相手の血を求める狂気野郎だ。当初は捕縛して事情を聴こうと思ったが、恐らく不可能だろう。ならばせめて解放してやる。


暫くの沈黙の後に俺達は同時に後方に飛び上がり、着地したと同時に一気に斬りかかった。互いの鋒が相手を捉えようとしたその時・・・


「「待った‼‼」」

「「‼⁉⁇」」


いきなりの静止に互いはほんの数ミリ手前で鋒を止めて、声がした方角を見る。


「・・・ジーン」

「ライル、武器を下げて」

「神、なんで手前がいるんだ?」

「まあまあ、そんなに熱くなるなよ。ちゃんと話すからさ」


暫く睨み合うが、ほぼ同時にそれぞれの得物を納刀。少し離れて様子を伺う。奴はポケットから煙草を取り出して、咥えるとジッポで火をつけて吸い始める。


「ジーン。隣にいるのは?」

「俺は“神”だよ。そいつを迎えに来たってところだ」

「神?」

「ごめんなさいねライル。ちゃんと説明するから・・・」


ジーンはそういって奴から少しだけ俺を離し、ことの成り行きを説明してくれた。


奴の名前は偽名だが性は韓、名は甲。字を狼牙。


俺と同じ現代から戦死して飛ばされた傭兵部隊の隊長をしている傭兵で、しかも俺達と同じく別の外史で孫策軍に在籍しているようだ。

孫策への暗殺を防いで負傷して意識を失い、その時に生じた影響で誤ってこの世界に迷い込んだらしい。


奴に説明しているのはジーンと同じく外史の管理者らしく、奴があの男の世界を管理しているみたいで、あの男を迎えに来たということだ。


「理解してくれたかい、兄ちゃん?」

「ああ、そこにいる気違いがくたばって別の孫策軍に居座っていることはな・・・」

「ふん・・・お前こそ、核で吹っ飛ばされたそうじゃねぇか。・・・・・・“俺の国を核の焔で焼き払った国の軍人が核で死ぬ”か・・・・・・面白い冗談だな」


その言葉と舐め切った態度に腹が立ち、一発ぶん殴ろうとしたが慌ててジーンがそれを止めてきた。


「韓甲、あまりあの兄ちゃんをからかうなよ。向こうはこの外史で英雄なんだからさ」

「ふん」

「おい、分かったからさっさとそいつを連れて帰ってくれ。はっきり言って気に食わない」

「あいよ。早く帰ろうぜ。雪蓮ちゃん達が心待ちにしてるぜ♪」

「ああ・・・早く相棒と隊の奴等の処に帰るとしよう」

「・・・・・・おい。日本人」

「・・・なんだ?」

「・・・・・・俺はライルだ。クソ野郎じゃない」

「・・・・・・・・・」

「孫呉海兵隊・・・本部直属第0大隊[群狼隊]大隊長兼海兵隊指令・・・ライル・L・ブレイド中佐だ」

「・・・・・・気が向いたら覚えておいてやる」

「お前は?」

「・・・・・・・・・・・・」


暫く沈黙する韓甲だが、煙草を指で挟みながら振り向く。


「・・・・・・ジョン・ドゥ。お前をいつか殺す奴の名前だ」


それだけ言うと、神と名乗る男と共に韓甲の身体が薄くなっていき、やがては小さな粒子となって空に消えて行った。

それを俺はジーンと共に見上げる。


「さてっ。私も帰らなきゃね。折角の休暇だったのに騒がせちゃってごめんなさいね」

「・・・もうあんな珍客はごめん被る」

「大丈夫よ。今度から気をつけるから・・・・・・それと、私がいなくなったら右胸ポケットをみてね」

「なんだ?」

「私からの細やかなお詫びよ♪じゃ、またね♪」


それだけ言い残すとジーンも消えていった。残された俺はそれを見送りながら言われた通りに胸ポケットを調べる。


「なんだ?・・・さっきまで無かった筈だが・・・・・・・・・あいつ・・・」


そこに入れられていたのは一枚の写真。映し出されていたのはそれぞれの得物を構えている俺と韓甲だ。

いつの間に撮影したのか・・・・・・。俺は溜息を吐きながらそれをポケットの中に仕舞う。城に帰ったら何か癪に触るが、折角のジーンからのプレゼントだ。取り敢えずは壁に貼っておこう。

仕舞うと口笛を高々と吹いて、暫くするとスレイブニルが駆け寄ってきた。どうやら心配していたようであり、近付いて来ると顔を俺にすり寄せて来た。


「すまないな、スレイプニル。心配掛けたようだ・・・・・・早く城に帰ろうか」


スレイプニルにそういうと跨り、スレイプニルを建業城に向けて掛け出させた。





俺と韓甲。別々の外史で孫策軍に所属する“狼”の名前を持った2人のスリリングな一度っきりの出会いだった・・・・・・・・・。

次回から本編に復帰致します。


また、コラボ作品とはブレイズ様の“真・恋姫†無双 外史の傭兵達”で、登場したのは主人公の韓甲 狼牙こと和樹に自称神でした。


監督:ブレイズ様

制作:ウルヴァリン



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