第102話:イーグルアイ
イリーナ達による逮捕劇。ここに開幕。
交州から帰還した中佐から驚く情報が齎された。孫呉内部に裏切り者がいて、そいつが交州反乱軍に情報をリークしているらしい。
その証拠として提出された侵攻計画の初期計画書を渡すと、雪蓮様は進発前に謀反人を見つけ出して処断することを可決。
そこで中佐は私が指揮官となって内部調査をするように命じ、極秘裏に容疑者をうかがっていた。
「ストームからイーグル各員。目標は依然と酒を飲んでるわ」
<イーグル2了解>
<イーグル3了解>
私達は旅商人の変装をしてターゲットを監視する。そして私達がいる場所は長沙南部に位置する桂陽の居酒屋だ。ここは荊州と交州の行き来に適した街であり、その影響で様々な商人によって賑わいを見せている。
ひとまずは緑茶を飲みながらパッケージを店の一番の隅で見張る。こうすれば背後を取られることは無い上に店に入ってくる人達を観察出来る。
そして部下はそれぞれ店の外に待機。万が一に備えて確保出来るようにだ。
私も緊急時に備えて荷物の中にサプレッサーを装着させたMP7A1を忍ばせている。何時でも取り出せるように荷物は手元にある。
こういう任務はアフガンを思い出す。あの時はテロリストの首謀者を捕縛するスナッチミッションで、勘付かれてタクティカル仕様のAKMSで応戦したが・・・・・・。
なお、私達が監視しているのは許貢という文官配下の副将だ。中佐によると許貢は正史において実際に孫策を裏切ろうとしたが、孫策がそれに気付いて処断。
その後に許貢残党が孫策を暗殺したとされている。この世界でも孫策様の配下に入っているがどうも何やら裏で良からぬことを企てているらしい。
私が緑茶を飲み終わったと同時にパッケージが席を立つ。
「タンゴが移動したわ。これから追跡する」
<了解、離れて続きます>
部下に小声で通信すると私も代金を机に残して荷物を手にして店を後にする。
タンゴは自分が追尾されていることなど気がつかず、両手を裾に入れながら歩いていく。
暫くしてから辿り着いたのは露店が集まる一画で、辺りに珍しいものを扱う露店が商売をしていた。近場の荊州から来た商人もいれば遥々羅馬から品を輸入してきた商人もいる。
私に商人が声を掛けて来るが、軽くあしらうと見失わないように少し近付く。
<中尉、タンゴはそこから15m先の露店です。何やら品定めをしているようです>
「そのまま動きを観察して。小さな動作も見逃しちゃ駄目よ」
<了解>
<こちらイーグル3、屋根上に到着。周辺に敵らしき奴等は見えませ・・・・・・いや、妙な奴を見つけました。そこから左前方で壁にもたれ掛かった男。先ほどからタンゴを見ています>
「その男の特徴は?」
<身長は低めですが体格は中々。恐らくは武芸の経験があると思われるスキンヘッド野郎です>
「了解。確認した」
イーグル3からの報告で怪しい男を見つけ出す。確かに先程からパッケージを見ている。しかも私は直感で感じ取った。あれは何かを企んでいる暗殺者の眼だと。
私は思わずMP7A1に手を延ばして臨戦態勢を整えた。
「各員、警戒して。不明者は何かするつもりよ」
≪了解≫
指示を下した直後、先程の男が動き出して、ゆっくりとタンゴに歩み寄る。そしてタンゴの背後に立った瞬間・・・。
「きゃぁああああ‼⁉⁇」
「こ・・・殺しだぁあ‼」
男は袖の中から短剣を取り出してタンゴの後頭部に突き刺した。私はそれに驚きながら駆け出した。
「くそっ⁉ストームからHQ‼」
<こちらHQ>
「コードブラック発生‼繰り返す、コードブラック‼犯人は北側へ逃走‼これより追撃します‼」
<了解したストーム。直ちに対応部隊を送る。イーグルチームは目標の確保に向かえ>
「ストーム了解‼聞こえたか⁉すぐにあの男を追うわよ‼」
<イーグル2了解‼>
<イーグル3了解‼先回りして退路を断ちます‼>
私は荷物をその場に捨ててMP7A1を手にすると犯人を急いで追いかける。しかしいきなり起こった殺人で周辺は混乱して、逃げ出す一般人のお陰で上手く追えない状況だ。
「孫呉海兵隊だ‼道を開けなさい‼道を開けろ‼・・・くそ⁉民間人が邪魔で後を追えない⁉」
<こちらイーグル3‼屋根伝いで奴を先回りします‼>
「了解‼こちらは迂回路を捜索して追撃をする‼ストーム out‼」
「中尉‼こっちから抜けられそうです‼」
「分かった伍長‼」
伍長が見つけた露地裏を使って奴が向かった方角へと急行する。ここにも何人か逃げ込んだ民間人がいたが、私達がMP7A1を構えながら前進すると直ぐにみちを開けた。
隣の通りに出ると人目についてしまうが気にしている余裕は無い。走りながら私はインカムで無線を使用する。
「イーグル3‼ターゲットの位置は⁉」
<ターゲットは繁華街から西側市街地に逃走‼。進路上には馬小屋があります‼>
「馬で逃げるつもりね‼イーグル3‼足を狙える⁉」
<ダメです‼民間人が多過ぎる‼・・・チャンスだ‼奴が引き返して建物に入った‼二階から城壁に飛び移るつもりだ‼このまま取り押さえます‼>
「分かったわ‼私達も急行中‼間も無くで接敵‼」
イーグル3が全速力でターゲットを取り押さえる為に屋根上を走り、私達もMP7A1を構えながら城門前に到着。すぐ側の二階建ての建物から男が飛び移ろうとしていたが無駄に終わる。
<逃がすか‼この野郎‼>
イーグル3が背中からアメフト選手顔負けのタックルをお見舞いして、そのまま真下にあった屋台を下敷きにして落ちて来た。
幸いにも怪我は無いようだ。
イーグル3はM45A1、私達はMP7A1の銃口を敵に突きつけてホールドアップする。
「こちらストーム。目標を確保しました。回収を要請」
<了解した。回収部隊を向かわせる。コールサインはジュリエット3-1>
「了解。周囲を監視します。ストーム out」
「さて・・・お前には洗いざらい話してもらうからな。覚悟しろよクソ野郎」
私達は確保した男が舌を噛み切って自害されないように猿轡をして拘束する。
数分後にはジュリエット3-1のM1114が到着。男を尋問する為に作戦本部へと向かった・・・・・・・・・。
作戦は急展開を見せる。拘束した男のにより真犯人が許貢だとわかり、ライルは裏切り者に制裁を下す為にハンターキラーによる討伐作戦を実施する。
次回“真・恋姫無双 海兵隊の誇り,Re”
[裏切り者の粛清]
孫呉を裏切ろうとする輩を叩き潰す。