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転生した先は王族でもなく、悪役令嬢でもなく、魔動物を管理している貴族でした。  作者: 虎ノ介


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プロローグ

―ああ、もう死んでしまおうか。

こんな人生生きていて意味なんかあるのだろうか?

どれだけ頑張って働いても貯まらないお金。

給料日からまだ三日しか経ってないのにもう財布は軽い。

そこら中に蔓延る嘘の情報、もはや何が真実なのか分からないこの社会。

こんな社会生きていて意味はあるのだろうか?



私は会社から帰る道で考えてみる。

やっぱり、こんな世界生きていても意味ないよな。

死んだらその後はどうなんだろう?

最近流行の『なろう系』の物語の様に転生するのだろうか?


それは事故で死んだ者にとって嬉しいだろう。

だが私の様に自殺して死んだ者たちにとってはいいのだろうか?

転生なんかしてまた『人生』をリトライしなくてはならないのか?


私はやだな。

そんな事を考えていると一匹の黒猫が前を通り過ぎる、何故か目が離さなかった。

そういえば実家には猫が居たっけ?

私にはあまり懐いてなかったな、一度でもいいから膝の上に乗って欲しかったな……

黒猫が歩いて行く方を見ると、黒猫は裏路地の方へ入っていく。


「今日は特にすることないし追いかけてみようかな......」


猫が歩いて行った裏路地に入ってみるとそこは真っ暗だ。

これじゃ何も見えない。えーとスマホ、スマホ。

スマホを取り出してライトをつけると黒猫が見える。



トボトボと黒猫について行くといつの間にか知らない場所まで来ていた。

街灯があったからスマホのライトを消し、カバンの中にしまった。


「何ここ?」


裏路地にしてはここは珍しく壁には落書きなど一つも無く街灯の光を反射する白壁ばかりだ。

それにやけに音が響く、かと思いきや足音と実際の歩きがあわない。

空を見ても星や月は一つも見えない。

跳ね返る光のせいで黒猫は黒光りしながらどんどん裏路地を進んでいく。


裏路地を進んでいくと歩いている道さえも綺麗な白色になっていく。


「この裏路地なんで全部白色ばっかなの?」


黒猫と私だけが黒くまるでゲームでキャラだけロード中になっている時の様だ。


時計を見ると長針と短針が十二時を丁度指したようだ。

もう十二時か流石そろそろ帰ろうかな。

後ろを振り向くとそこには今まで歩いてきた道は無く

ゲームのロードする時の様な黒色の鉛の様な物で全て埋め尽くされていた。


さっきあそこには道があって私はそれを歩いてきたんだよね?

黒い鉛の様な物を触ってみると自分の体が溶けていくのがわかった。

不思議と痛みはなく最早気持ちがいい。

これは触れちゃいけない物なの?

しょうがないもう少し歩いてみようか......

前を見ると黒猫は私を待っているかのようにそこにいた。


私が歩き出したのを確認すると黒猫はまた歩き出した。

急にその黒猫が怖くなってきた。

急いでスマホを取り出して警察に連絡しようとしたがスマホの右上には『圏外』と表示されている。



これは何か私への何らかの戒めなのだろうか?

いや、はたまた救済なのだろうか?

この情報といういかれた生物が蔓延った世界から私を逃がすための、救済。

もう何時間歩いただろうか足は鉄のように重くなっている。

バッグは捨てたから少しは楽になったが、もう限界だ。

黒猫は相変わらず疲れた様子もなく歩いていく。


もう倒れこんでしまおう、私は十分頑張った。

こんなバカげたキツさと後ろからくる黒い不安だけの道を何時間も歩いたんだ。

私は頑張った、もういいじゃないか......

そう思って私は道に倒れこむ、不思議とその道は柔らかい。

こんなにも気持ちがいいのなら早く諦めていればよかったな。


「最後にあの黒猫触りたかったな、多分柔らかくて暖かいんだろうな。」


黒い鉛のようなものが私の体に触れ少しずつ私が溶けていくのがわかる。


「それなら触るが良い、人間。」

声がしたので顔を上げるとそこにはさっきの黒猫がいた。


私は何も言わず手を上げて猫を触ろうとすると、手が溶ける。


「何で?」


「諦めた者には我は触ることはできない、お主はもう諦めたのだろう?」


「あれだけ頑張ったのに、私は猫さえも触れないの?」


「君は幸せを願ったんだ、諦めた者に幸せを得る事は出来ない。」


体は、そろそろ上半身まで溶け始めようとしている。


「確かにあきらめたんだから私は何も無いよね、馬鹿だね私ってそれくらい分かってたのに……」


「お前はやり直そうと思わないのか?」


「それが出来るの?」


「それはお前がどうしたいかにもよるがな。」


私はまたこんなキツい人生をやり直さなくちゃいけないのだろうか?

まだ私は幸せを望むの?こんなにも人生は辛いのに?


もう首元まで黒色の鉛は迫っている。


「もしやり直せば私は猫を触れる?」


「もちろんだ」


「それじゃあお願い、出来れば違う世界がいいけどね。」


「承知した。」


そう黒猫が言った瞬間、私は光に包まれた。




「にゃあ〜」


気がつくと柔らかな何が頬を撫でている。

私はこの暖かく柔らかい毛を触ることが出来たのだ。

読んでくれありがとうございました。

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