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アイン  作者: さき
2/5

第二話 この世界

「なんで、お前らがいんだよっ!」


さっきとは打って変わって、男は声も表情も怯えている。

無理もない。


「いやー、たまたま近くいましてね」


神代が笑みを浮かびながら男へ歩み寄った。


「来るなっ!それ以上近寄るんじゃねぇ!」


男が二人へナイフを向けた。


「そっちは彼女か?」


王が鋭い目で男を睨んだ。


「そうだよっ!だったらなんだって言うんだ!」


「うーん、彼女にはそんな跡つけないんじゃない?」


神代が女性を指さす。


「うるせぇ!そもそもコイツが悪いんだ!

どんな跡つけようが俺の勝手だ!

コイツは俺の彼女なんだからよ!」


男は女性へナイフを向けた。


「お願い…やめて」

震える声で女性が言う。


「おい、お前そんなナイフで脅しか?」


王が低い声で言った。


「はぁー?」


王は一歩ずつ男へ近づく。


「来るなっ!殺すぞ!」


男が再び王へナイフを向けた。


「そんなナイフで俺を殺るつもりか」


男のナイフが震える。


「お前の炎はちいせぇな」


「黙れっっ、何処が小さいんだ!!殺せるにきまってるだろーーが!」


男の叫びに重なるように、王が言う。


「ナイフってのはさ、脅しに使うなら……

これくらいの大きさにしなきゃな」


その言葉と同時に、王の手から橙の炎が現れた。


炎はみるみる膨れ上がり、信号機の高さを超える。

そして——巨大なナイフの形へと変化した。


男の持つナイフとは比べ物にならないほどの大きさだ。


周囲の視線が、その巨大な炎の刃に釘付けになる。


私も思わず呆気に取られた。


(なんて大きさ…)


巨大なナイフに目を奪われていたが、

慌てて男へ視線を戻す。


男は、その大きさに驚愕したのか───

すでに泡を吹いて気絶していた。


「ちょっと、やり過ぎなんじゃない?周りの人びっくりしちゃってるよ」


「それに――」


神代が男へ近づく。


「泡吹いて倒れちゃってるよ。おーい、大丈夫かー?」


「知らねぇよ。俺はただナイフをコイツに見せてやっただけだ」


神代は王を見て、軽く笑った。


「大丈夫か?」


王が女性に声を掛けた。


「あっ…はい……ありがとうございます」


女性もその場に座り込んでしまったようだ。


「おい、後は頼んだ」


王は振り返り、後ろにいた警察へ言った。


警察も呆気に取られていたのか、

少し遅れてから答える。


「……はっ、はい…!ご協力感謝致します!」


警察ら王に敬礼した。


「行くぞ、海」


「はいはい」


「じゃあ解散、みんなも仕事ちゃんと行くんだよー」

神代が周囲の人々に手を振る。


「「「キャーーー!!」」」


呆気に取られていた人達も、神代の言葉に反応して歓声を上げた。


「やり過ぎですよ!王軍隊長!」


車へ戻った二人を、白石(しらいし)という女性がまた叱りつけていた。


「ちっ、うるせぇな。さっさっと行くぞ」


王はそう言って後部座席へ乗り込む。


「ごめんごめん。お説教は車で聞くからさ、ね?」


神代がなだめる。


「もうっ」


バタンッ!!


ドアを勢いよく閉め、白石は運転席へ戻った。


神代もそれに続いて助手席へと乗り込み、三人は走り去っていった。



(男を戦わずして、制圧した……)


なんという炎の大きさ

それに、あの圧倒感。


あれが……炎衛軍(えんえいぐん)橙炎(とうえん)部隊所属の軍隊長。

王零牙。


恐ろしい人だ。


人は進化をする。という言葉を覚えているだろうか。


身を守り、生き延びるために人は進化する。


だけどそれは、守るためであると同時に――

人間同士にとっては、脅威になることだってある。


私はそれを、きっと犯罪と呼ぶのだと思う。


この世界にも、もちろん()()という言葉はある。


だが、なんせここは炎を操れる世界だ。


炎を使って犯罪を行う者が大勢いる。


そういう人達を、私達は別の名で呼んでいる。


逆炎者(ぎゃくえんしゃ)と。


あの男も、つまりは逆炎者だ。


炎を操れる、といっても火事のような巨大な炎を出せるわけではない。


簡単に言えば、ホラーでよく見る火の玉や、

ガスコンロの火程度しか出せないのが普通だ。


でもそれは、()()()な話。


毎日走れば足が速くなるように、炎も努力と共に成長する。


もちろん、全員がそうなるわけではない。

成長しない者も大勢いる。


絶え間ない努力が必要なのだ。


犯罪を取り締まる警察。

彼らは、さっき言ったような一般的な炎しか出せない人達が()()()からこの国を守っている組織だ。


主に普通の世界と同じく、銃などを使って。


そしてもう一つ。


炎を使い、()()()を取り締まる組織がある。


それが――炎衛軍(えんえいぐん)だ。


最初に三色に区別されると言ったが、それぞれに呼び名がある。


赤炎(せきえん)

橙炎(とうえん)

緑炎(りょくえん)


人種ごとに肌や目、髪の色が決まってるように、炎の色も生まれながらに決まっている。


話は戻して、炎衛軍の中には部隊があり、

赤炎軍・橙炎軍・緑炎軍の三部隊構成されている。


さっき、巨大なナイフを見せたのが

橙炎軍の軍隊長、王零牙という男だ。


そして、あの気だるそうな男。


神代海牙。

この男は橙炎軍の副隊長である。


二人は正反対の性格なので仲が悪そうに見えるが、幼馴染らしい。


名前も零牙と海牙。

一文字しか違わない。


炎の色も同じで、身長までも同じだそうだ。


まさに運命という言葉が似合う二人だ。


炎衛軍に所属し、逆炎者から人々を守る者達を――

人々はこう呼ぶ。

守炎者(しゅえんしゃ)と。


─────────


「ハァハァハァ」


私はあの後、全速力で走った。


「……ハァ…やっと…着いた…ハァ」


目的地に辿り着き、

ドアを勢いよく開ける。


「…おはよう…ございます…ハァ」


「遅くなってすみません……」


「おはよう、今日は遅かったね。何かあったのかい?」


ドアを開けた先には、古い紙の匂いが静かに漂っていた。

天井まで、ぎっしりと並ぶ本棚。

まるで昭和の時代にタイムスリップしたような、レトロな空間だ。


「…寝坊をしてしまいまして……」


「それと、来る途中逆炎者の騒ぎがあってつい野次馬を……」


「そうか、珍しいな寝坊なんて」


「そういえば、さっきサイレンがしていたよ。大丈夫だったかい?」


この渋くて優しい声。

目の前に居るのは、ここの店主時雨文蔵(じうぶんぞう)さんだ。


「私は大丈夫です」


「そうか、なら良かった。じゃあ仕事をしようか、ゆっくりで良いからエプロン付けておいで」


「はい」


急ぎばやしで、店裏にいった。


ここは、古本屋

時雨堂(じうどう)

私が働いている仕事場だ。


私は、エプロンに着替えて仕事を始めた。

古本屋での流れはこうだ。


まずは開店準備、九時から営業が始まるのでいつもは1五分程前から出勤する。


最初始めるのは、掃除だ。


「今日は掃除はしといたからね、表の札をお願いしていいかな?」


文蔵が言う。


「はいすみません、ありがとうございます」


今日は文蔵さんがやってくれたみたいだが、いつもは床をはく。

そして表の営業中の札を表にし準備完了だ。


ここはとても古い本屋なので、訪れるのはよほどの本好きしか来ない。

客の年齢層も高めで、若い人が来ることは滅多にない。


なので、お客さんもあまり来ない。


その間は、棚を掃除したり乱れていた本を並べ直し整えたり、新しく入荷した本をジャンルごとに並べたりする。


そうこうしていると……


カラン。

「こんにちは」


「「いらっしゃいませ」」


一人目のお客さんが来た。

中年男性の人だ。


「こんにちはー!」

「買取をしてるって聞いたんですが」


「えぇしていますよ、査定をするので本を見せて頂けますか?」


文蔵が答える。

そうここは、買取り業務もやっているのだ。


「はい、こちらなんですけど…」

そう言って男性は、紙袋から三冊の本を出した。


「かしこまりました、五分程で終わりますので店内を見てお待ち下さい」


文蔵が微笑みながら言う。


文蔵は持ち込まれた本を一冊ずつめくり、状態を確かめていく。

そして五分も経たないうちに……


「お客さん、査定が終わりました。状態は良かったのですが、結構出回ってる本なので三冊で百五十円程になります。いかがでしょうか?」


「ほんとですか!他の店で見てもらった時は百円もしなかったので、ありがたいです!買取りお願いします!」


男性の顔に笑みが広がった。


「良かったです。僕もなるべく高い値段で買い取ってあげたいですから」


そう言って、文蔵はレジの引き出しを開け、硬貨を数えて男性に差し出した。


「では、こちら百五十円です」


「ありがとうございます!また何かあったらこちらに来ます。」


「ありがとうございます」

文蔵が微笑む。


カランッ

男性はお金を受け取り、店を出ていった。


「「ありがとうございました」」

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