私の婚約者の心を奪った女の断り文句が斬新すぎた。惚れる
「あ・・・」
最近、気もそぞろになった婚約者からの連絡が途切れるようになり、昔から行く隅田川沿いの道をあてもなく歩いていたら、彼と、彼をこんなふうにした女を見つけた。
彼女は知り合いでもなかった。ただ、彼が惹かれているだけ。
それなのに二人でいる。
告白するんだろう。
告白した後?
そんな前後の微妙な空気。
まだ、二人は私に気付いていないようなので、隠れて近付く。
「俺と付き合ってください」
「あなたの趣味は?」
「え? ゲームですけど?」
「お仕事は?」
「サラリーマンです」
「じゃあ、無理です。わたし、恋人は無人島にも連れて行ける人じゃないと、ダメなんで」
「で、でも、サバイバルには自信があります」
「サバイバルはどうでもいいの。だって、わたし、ガールスカウト入っていたし」
「え? じゃあ・・・?」
「料理が趣味でプロ級か、料理のプロでないと、無人島に行った時に、美味しいものが食べられないでしょ?」
「はあ?!」
「あなただって、旅行に行って無人島に流れ着いて、料理がまずいからって、別れを告げられるより、今、告げられたほうがいいでしょ」
「ちょっと待って! 何で、無人島に流れ着く前提で話しているの?!」
「わたし、付き合うかどうか、時間の無駄かどうか、最低限のラインが無人島で美味しいものを食べさせてくれるかどうかなの」
「・・・」
「ちなみに、結婚するなら、同じ価値観の人じゃないと嫌だから、告白に花を持ってくるなら、1本だけなら許すわ」
彼の手に握られているのは、どう見ても一本じゃない小さなブーケ。
完全に彼女の好みから外れている。
「そうじゃなかったら、相手の好きなものもリサーチせずに、自分勝手な価値観を押し付けるモラハラ野郎だもの。振られた時のコスパも考えられないなんて、価値観が違いすぎて、一緒にいるだけでストレスが溜まってしょうがない」
「・・・」
唖然となる婚約者。
「・・・」
私も唖然となった。
そうか。価値観を押し付けるのは、モラハラなのか。
言われてみれば、そうだ。
価値観が違うのは当たり前で、その価値観になった理由や背景がわかって、ようやくその人の価値観を受け入れられる。受け入れられない価値観はスルーするか、モラハラで押し付けられるしかない。
婚約しているのに他の女に告白か・・・。
ないわ。
私の価値を安く見積もる男なんかと結婚できない。ドMじゃないからモラ男に虐げられるなんて、ストレスでしかない。
後日、私は婚約解消した。




