第2ステージ 新たなメンバーは小学生!?みんなの妹(弟)誕生!
有馬君が正式にメンバーとなり私達のグループは2人になった。
水樹からの指示により男性である事は家族以外に知られてはならない……なぜなら女性枠として祭りに参加するのでバレてしまっては男性枠での出場となり、既に男性枠は人数の関係上参加は不可能だからである。
そしてこのまま祭りに参加しても私達を見に来る人が少ないかも、いやもっと呼び込もうと言う事でSNSサイトのYutterにて専用のアカウントを作成し、本番まで知名度を上げる事になった。
私は本アカウントが男と公表しているため、MARS♪のファンという設定の【Mars♪】としてアカウントを新たに作成し、有馬君も【Mercury☆】名で日々の活動内容や地元のどこの飲食店がオススメなどを発信する"地域密着型アイドル"を目指すことに。
そしてその宣伝のためどちらも夏の暑い中、公園でメイド服を着て走り込みや筋トレ、そしてダンスの練習などをしている最中であった。
「はい今日のメニューは以上!各自Yutterの更新忘れずに」
水樹プロデューサーから指示が飛ぶ。
私と有馬君は汗だくになりながら水樹が持ってきたクーラボックスからスポーツドリンクを手に取り、ゴクゴクと勢いよく飲んで水分補給をしていた。
「水樹……いくらなんでも……これはきついぜ……」
「こら"Mars♪"!女装して外いる時は男言葉禁止!」
「……水樹、あっついよー!外じゃなくて家で練習しよーよー♡……これでいいか……」
軽く水樹は頷き、これも体力作りの一環、それに本番である鴻巣のお祭りは8月下旬でまだ暑い中での開催、本番でバテないようにするためだと偉そうな顔で語っている。
「僕……私もこれは疲れちゃうなー……あっつー」
「"Mercury☆"はクールなお姉さんキャラで売る予定なんだから口調気をつけるように!あと手で仰いだり、パタパタしてスカートの中に風送り込んだりしない!」
担当プロデューサーからの激が飛んでいた時、小さな男の子がとことこと歩いてきて私達に話しかけてきた。
「えっと……お姉ちゃん達はここで何してるんですか……?」
「祭りでライブするために体力作りよ。それで私達に何か用?サインはまだ考えてないからまた今度で……」
「そうじゃなくてこれ……」
そう言って彼が見せてくれたスマホの画面には
不審者情報
【事 案】不審者
【場 所】鴻巣公園
【不審者】年齢:10~20歳くらい 性別:女 頭髪:金髪、青髪 服装:メイド服、ゴシックロリータ
【概 要】公園付近の徘徊、占拠
と書いてあり私達3人はそれを見て空いた口が塞がらなかった。頑張りを皆に見せているつもりが不審者として見られていたとは思わなかったからだ。
「お姉ちゃん達って……本当に不審者……?」
彼が少し震えて怯えていたので、私が彼の元に近付き肩を掴んで必死に説得した。
そうすると彼の顔が少し赤くなり私と目を合わせないよう俯いて視線をそらしていたので、不思議に思い何かあったか聞いてみることにした。
「えっと……友達とここよく遊びに来てて、お姉ちゃん達最近いつもいるなって思ってたんだけど……その……すっごく可愛い人達だって思って……だからその……僕、お姉ちゃんの事好きになっちゃったみたいで……」
あまりの衝撃に彼を掴んでいた手を離し、私は笑顔を浮かべたまま動けなくなってしまった。
こんな小さい子……しかも男の子に告白されるとは思ってもみなかったからである。
断りを入れようとした時、後ろにいた水樹がこちらに駆け寄って来た。
「ごめんねーボク、彼女アイドルだからお付き合いとかそういうのは出来ないの。でもね、彼女の力になれる事が1つあるんだけどやってみない?」
「そうなんですね……お姉ちゃんのためになるなら僕に出来ること何でもします!」
純粋無垢な瞳を輝かせ私の力になりたいと彼が申し出ると、今度は水樹が彼の肩をガシッと掴み何か裏がありそうな笑みを浮かべ彼に言い放つ。
"あなたもアイドルになればいい!"と……
「これが僕……」
場所を水樹の部屋に移して、話しかけてきた彼を水樹が小さい時着ていた女性用のスカートとノースリーブTシャツを着せ、目元まで伸びた若干クセのある髪を整えるとノーメイクでも女の子に見え、丸顔で幼い顔立ちが服装に合っていた。
「やっぱり私の見込んだ通りね。この子一目見た時ピーンと来たのよ、この子が"3人目"のメンバーだってね!」
不審者容疑がかけられているのに小学生男子を自分の家に連れ込み女性用衣類を着用させる……文字だけみればやっている事は明らかに不審者そのものだ。
水樹が得意げに自慢していると彼は不思議そうに「僕、男ですから皆さんと一緒にって無理だと……」と発言していたので、私が男だという事、そしてそれをバレないようにしている事をプロデューサーが説明すると、最初は驚いた様子だったが次第に彼はキラキラと目を輝かせて私を見ていた。
「お姉ちゃん、男の人だったんですね……それでも僕"お姉ちゃん"の事好きです!僕もメンバーに入れてください……お姉ちゃんの力になりたいんです!」
彼の意思は硬そうだ……名前を聞くと、七熊 明君と名乗り、学年は小学4年生と教えてくれた。
こうして彼は"彼女"となったのだった。
七熊君のアイドル名は天王星である"Uranus♡"とプロデューサーが命名し、後はユニット名を決めるだけになった。
「さてユニット名だけど……ここはプロデューサーの私じゃなくユニットリーダーに決めてもらいましょう。そういう訳でMars♪、ユニット名決めて」
いつの間にリーダーになっていたのかわからないが、この中で1番歳上だし女装歴も1番長いのでこうなるのは当然の結果か、と半ば諦め半ば"彼女ら"の期待に応えなければと思うプレッシャーがあった。
「全員惑星名だし、それを英語にしてplanet……個性を出すためにメンバーの記号と、それぞれの苗字の頭文字を大文字にして【plANeT♪☆♡】なんてどうだろう?」
この意見に反論意見はなく私の意見は採用され、【plANeT♪☆♡】はここに誕生した。
「さて、ここから忙しくなるわよ!まずはSNSのフォロワーを増やして注目度を増す。そして本番に向けた練習はもちろん曲とか衣装も考えなきゃだからね。それぞれ役割担当を決めてあるからよく聞くように!」
水樹はそれぞれを指差し何を担当するか指名していく。
まずは作詞作曲担当は水樹、そして衣装担当はお母さんが器用だと言うので七熊君。
YutterのSNS担当は有馬君、そして私は振り付け担当兼他のメンバーの手伝いとなった。
担当が決まった所で七熊君が「掛け声は何かないのですか?」と疑問に思っていた事を私達に投げかけてきて、確かにアイドルなら何か行動する時やライブ前など掛け声がある事が多いな、と感じていると、有馬君が案があると言う事で彼の意見を聞くことにした。
「一応は考えてあるんですけど、みんなで何か決めて行動する時は、プロデューサーが前、私の挨拶で使用した宇宙の始まりである『BIGBANG!』で、ライブ前は普通に『ライブイン!』でいいと思うんですけど……どうでしょう?」
BIGBANGは捻りがあっていいと思ったけどライブインは少し普通すぎでは?と一瞬思ったが、凝りすぎて覚えにくいのも親しみにくいし、変な言葉にして滑った時恥ずかしいので有馬君の案を採用し、早速やってみようと、それぞれ手を前に出して重ねて私が合図する。
「よーし♪皆これから本番のお祭りに向けて頑張ってこー!せーの……」
《BIGBANG!!!!》
(次回へ続きます)