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1話

私は一人っ子だった上に、ずーっと一人だった。放課後は児童館じゃなくて家にいて、お母さんが仕事から帰ってくるまで絵を描いていたんだ。

友達とも遊びもせずに、絵を描いては名前を付けて、妄想をしながら遊んでいた。いわゆる一人遊びというやつだ。

描いた絵をお母さんに自慢すると「凄いじゃない!菜羽はきっと絵描きさんになれるね!」って、喜んでくれた。

そんな私は中学生になった。そして、一人のリビングで机に置いた地理の穴埋めプリント相手と睨めっこをしている。

相変わらず絵を描いているけど、中学生って大変なんだね。

明日は小テストなのに宿題は埋まらない。ついでに白紙だ。

プリントには『社会科テスト〜亜細亜編』の文字。

プリントを埋める前に教科書をざっと読んでおこう。

「まずは、、、日本だよね。えっと、太平洋に浮かぶ極東の島国で首都の東京は、高層ビル、ショッピング、ポップ カルチャーで知られている、、、」

お腹いっぱいなせいで、眠たくなってきた。

「まず、ビジュアルが浮かんでこないからダメなんだよね」

教科書をもっと楽しくしたら良いんだよ。

例えば―――日本を擬人化したイケメンキャラが自己紹介してくれるように教えてくれたら良いのに。

髪型はオシャレに黒髪で、和服を着ている。小柄で細身な体格の男の子

うん、上手に描けた。

余白に設定も書いてみる。白ご飯をこよなく愛すして、魔改造大好き。自分の意見をなかなか口にしないため一見するとミステリアスだが、実は感受性豊か。親切で優しくお人よしな性格。

この調子で他の国も描いてみようかな。

教科書をペラペラと(めく)って、目についた国を擬人化していく。

『中国くん』は長い茶髪を一つに束ねている男の子。

せこい所為か全く年長者っぽくは扱って貰えないよう。年上なので財布が寂しくても何かと奢りたがる。

趣味は料理。フランスと一、二位を争う美食家で舌はかなり肥えているので、スーパーで今日のご飯は何にしようか悩んでほしいかも。

『韓国くん』は極東の大陸から伸びた半島の南半分。

表情豊かで明朗快活(めいろうかいかつ)徴兵(ちょうへい)制度があるので、筋肉質な体格をしている美形で、背もアジアの中では高め。

『アメリカくん』は北アメリカ大陸の半分以上を占める超大陸。明るくパワフルで正義感が強い。

『ロシアくん』は極寒育ちのため、基本コートなどの厚着仕様。極寒で鍛えられた忍耐力はピカイチ☆

「わぁ、ペンが(はかど)り過ぎる、、、!!」

やっぱりキャラクターを創るのって、楽しいな〜。


テレーン、テレーン。

机に置いた目覚まし時計の音で我に返った。

「あれ、、、?」

窓から差し込む太陽の光がスケッチブックを照らしている。

そこには沢山の国のイケメン男子のキャラと細かい設定。

身長や好きな食べ物の基本情報からかけっこの速さ順まで。

わぁ〜、いっぱい書けた〜☆、、、って、違う!!

時計の針は六時半。夕方じゃなくて朝の。

プリントの穴埋め問題は白紙。テスト範囲はアジアだけで良かったのに〜!!!

「終わった、、、」

フッと目の前が遠くなった。

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