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極東の魔女  作者: 流星うらら
森の守り人
2/4

二話「あなたの付けた名前」

この作品には〔過激な表現〕などが含まれます。

苦手な方はご注意ください。

カチッカチ

皿とカトラリーが触れる音と小鳥の囀りだけが響き鳴る


「どう?美味しい??」

「美味しいです。今回は焦げずに焼けたんですね。」

「ま、まぁね…。」


あの後、行先も何一つ無かった私はエルディアと暮らすことになった


エルディアは意外にも家事全般が苦手だった

料理をすれば爆発させ、洗濯をすれば服を流す

掃除をすれば部屋が散らかる

だから家事は私がする、その代わりに帝級魔導師というエルディアが魔法を教えてくれる


「今日はいつ、魔法を教えてもらえるんですか?」

「んー、今日は少し遠出をしよう。

ま、この島から出る訳では無いけれど。」


そう、ここは極東の島

『フェリー』

精霊や妖精が住む島だ


「その遠出は役に立つ事なんですか?」

「えぇー、そうゆう感じじゃないんだけどなぁ。」


エルディアがスープを口に含み飲み込む


「まぁ君の場合、今後の役には立つかもな。」

「……分かりました。

では準備を進めておきますので、エルディア様は余計な事はしないでくださいね。」

「わ、分かってるって。

私は少し散歩でもしてくるよ。」


そう言うとエルディアは苦笑いをして家を出ていく

皿を洗い、洗濯物を干し、家を掃除する

風通しの良い服に袖を通し、玄関を出る


「あ、やっと来たか。」

「家事をしてたんですよ。」


玄関の扉を開くと

鳥と戯れるエルディアがいた


「それで、どこに行くんですか?」

「遠出だよ、遠出。こうゆうのは知らない方がいいんだぜ。」

「………分かりました。」


森の中を少し進むと、滝が流れ、水が叩きつけられる激しい音が聞こえてきた


「ん、着いたな。」


着いた場所は開けた滝の釣り場で、ここで魚を釣ろうと思っているらしい


「魚を釣るぐらい、魔法でもできますよ?」

「あのなぁ、こうゆうのが大事なんだよ。

魔法や、便利物に頼り過ぎるのは、駄目だと思うんだよ。

昔の人類は魔法も、便利物も無い中、自分達で試行錯誤して生きていたんだ。

そうゆうのが人間らしさだと思うんだよ。」

「そうゆうものなのですか?」

「そうゆう考えが大事なんだ。」


そう言うとエルディアは、釣りを始めた


「…どれぐらい待てばいいんですか?」

「さぁな。」

「……。」


それから、10分程経った時に、エルディアの竿が動いた


「おっ!結構重いぞー……よっ。」


エルディアの竿の先に着いていたのは魚ではなく、

1枚の服だった


私のだった

エルディアに流された服だった


「…………。」

「……ま、見つかってよかったな!」


そう言うと、また釣りを始めた

少し経った時、エルディアが突然話し始めた


「なぁ、あんたの名前考えてみたんだけど。」

「名前ですか。」

「あぁ。」


エルディアは呼ぶ時、「おい」や「なぁ」などと呼ぶ

だから、名前を呼ばれたことは無い

名前が無いから


「で、アンジュ・ノワールってどーだ。」

「アンジュ…ノワール。」

「あぁ、どーだ。」

「別に…いいと思います。」


私は釣りを始めた


「あのなぁ、名前ってのは人生でずっと隣に居てくれる存在なんだぜ?そう簡単に決めたりしちゃいけない。」

「エルディア様なら安心なので大丈夫です。」


竿が少し動く、かかったのかもしれない

エルディアは目を見開いて、少し微笑んだ


「さ、もっと釣らないとな。」


そう言うと竿を勢いよく川へ投げ、釣りを始めた



「結構沢山獲れましたね。」

「あぁ、これを村のみんなへ配るんだ。」

「村?」


家周辺でしか動いていなかったため

ある意味外の世界を知らない


「そうだ、ほら。」


エルディアの指を指した先には村が広がっており、崖になっているここからは、良く見えた


「意外と大きい村なのですね。」

「あぁ、私達の居る所は崖の上だから、あまりこっちの川まで魚を獲りに行けないんだ。だから私が定期的に送る。」

「そうだったんですね。」

「さっ、行くよっ!!」


そう言うとエルディアは私の手を引いて

数百mはある崖を飛び降りた


「えっ!?」

「ははっ、情けない顔!」

「せ、先生は毎回この様に村へ向かっているのですか!?」

「なわけっ」


少し小馬鹿にするように笑う

エルディアの長い髪が風と陽の光の反射で輝いていた

どんどん下へ落ちていく


「手、しっかり掴んどけよ。」


そう言ってエルディアは魔法を使って空を飛んだ

私もエルディアの手をぎゅっと握り、風に乗る

あれから知り合いを探しているが、見つかっていない

村に行けば、知っている人もいるかもしれない


「さ、降りよう。」


どんどん急降下していく


「ふっ、怖い?」


エルディアが、ニヤリとして聞く


「いいえ、それより大丈夫ですか?」

「えっ。」


エルディアが余所見をしている間、急降下は続き

地面が近づいていた、

そのままエルディアは地面にぶつかり、砂埃が舞った


「っ………。」


私は地面に足をつけ

砂まみれになる事はなかった


「言えよ…。」

「すみません、私もさっきまでは気付きませんでした。」

「はぁ…不運な事ばかり起こるな。」

「魚ではなく、服が釣れたことは不運な事ではありません。」

「す、すまなかったって…。」


エルディアは付いたも砂をはたいて、擦り傷を魔法で治した


「行こうか、ここがフェリーク村だ。」


ここが、精霊の村…フェリーク村

誰か私を知ってる人に出会えるだろうか




次回もお楽しみください。

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