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極東の魔女  作者: 流星うらら
森の守り人
1/4

一話「第二の人生」

この作品には〔過激な表現〕などが含まれます。

苦手な方はご注意ください。


「エリーオル様…」


リーが頬に涙を伝わせ、

部屋の奥からは子供たちの泣き声が微かに聞こえる

もう…潮時か


「子供たち…国を頼む、リー。」

「はい…。」


やり切った

英雄王と呼ばれ、国を持ち、妻子にも恵まれた

…もう少し何か、話しておけば良かったのだろうか、一緒に何か、してやれば良かったの…だろうか


「エリーオル様!?エリーオル様!」


意識が遠のいてゆく、涙を流すリーが薄く…、少しの不安と後悔が濃くなってゆく

後悔…か


《アイリッシュ王国

初代国王エリーオル・アイリッシュ

6月28日 86歳 永眠》


「っ!?」


鳥の鳴き声と陽の光でふと、目を覚ました

青…雲、空

目を覚ますとそこは城の天井ではなく、空だった

芝生…森の中か?


ガサッ


「?」


まだ重い身体を起こし、音のした方へ目線を向けると、女性が一人立っていた


「お前…何してんだ?」



「だから、お前ここで何してるんだって。」


目の前の彼女は真っ直ぐに伸びた髪を風になびかせ、宝石のような美しい瞳を輝かせていた


「えっと…その、目が覚めたらここに居て。」


ん?声が変だぞ…まるで少女のような…


「…?余所者か?はぐれた精霊か?」


彼女は鋭く疑いの目を向ける


「まぁいいか、とりあえず付いてきて。」


彼女に導かれるまま森の中を進むと、一つの家が建っていた


「外で話すのをあれだし、中で話そう。」


中へ入れば、微かにパンの匂いが漂っていて、

朝食後だったのだろう

窓からは木漏れ日が机を照らしていた


「好きなところにかけるといい、紅茶でも出すよ。」


椅子へ腰かけ、窓の外を眺めながら待っていると


「はい、口に合うといいけど。」


目の前に紅茶が置かれた。そこから覗く自分の顔は

生前の私の顔ではなかった。

どうゆう事だ…

平常心を保つ為にも、まだ少し湯気の立っている紅茶を口へ運ぶ


「あちっ…。」

「ははっ!猫舌か、少し冷ますといいよ。」


彼女は慣れたように紅茶を口へ運んでいる

よく飲んでいるのだろう


「それで…。」


カチッ

ティーカップを置く音と共に彼女が話し始める


「君はどうしてあんなところに居たんだい?

見たような顔じゃなかったしね、一応。」

「えっと…」

「…あぁ、名前を言ってなかったね。

私はエルディア。」

「エル…ディア。」

「そう、君の名前は?

私は名前を言ったんだから、答えるべきだろう?」


エルディアは頬杖をつきながら、目を鋭く光らせてこちらの顔を覗き込んだ


「名前…ない。」

「え、君名前ないの?」

「私は自分の名前を知らない。

出身地も、親も、ここがどこかさえも私は知らない。」

「ん”ー。」


エルディアは顔を顰めながら頭を搔いた

そしてまたこちらを鋭い目で数秒ほど見つめた


「…分かった。

とりあえず今日はここに泊まるといいよ。

明日から君の知り合いを探そう。」


そう言うとエルディアは席を立ってドアノブに手をかけた


「ここには隣人が沢山いるからね。」


少し目を細めて言うとエルディアは外へ出ていった

エルディアがいなくなった家は、鳥のさえずりと草木の靡く音で包まれていた

窓の外を眺め、木々の隙間から静かに零れる木漏れ日を見つめる

ガチャ

家の扉が強く開けられる


「ごめん!手伝って欲しい事があるんだけど。」





次回もお楽しみください。

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