喫茶店……なのか?
「一回外に出ようか」
「………………うん」
パタン
……………なんだあれ?!まさに異世界だったぞ?!
「なるくん………世の中には、まだ知らない事がいっぱいあるんだね………というか、知らない方が幸せな事もあるんだね……」
「紅華?!」
紅華が遠い目をしている!戻ってこーい!
「……………とりあえず、もっかい入ってみるか?まだ朝だから、ここしか営業してないっぽいし……」
「うん……………………………………………そうだね」
同意するのにものすごい間があったな、そんなに知りたくなかった世界だったのか……
「よし、開けるぞ……」
カランカラン
「だぁかぁらぁ!店長が制服はないから服はなんでもいいって言ったんだから、私が何着てこようが勝手じゃん!」
「その勝手にも限度ってものがあるでしょう?!なんでメイド服なのよ!ここはメイド喫茶じゃないのよ?!」
「だって可愛いじゃん、メイド服。それに、紫里さんだって完全にバーテンダーじゃん!それこそここはバーじゃないんだよ?!」
「だってカッコイイじゃん、バーテンダーユニフォーム」
「ほらぁ!私と理由ほとんど一緒じゃん!」
「いやだから、二人ともあってないんだけど……」
「一番合ってない人が何言ってんの?!なんでタンクトップにエプロンなのよ?!」
「そもそも!なんで喫茶店でラーメン出してるんですか?!まずそこからおかしいじゃないですか!」
「うぅ………二人ともイジメないで………」
お姉さんと中学生ぐらいの女の子に怒られるガチムチのおっさん……………ヤベェ、脳が理解することを拒んでやがる
「うん!帰ろう!帰って寝よう!これは悪い夢だ!」
「なるくん?!ダメだよ!現実を見て!」
バッ!
あ!ヤベ!デカい声出したから気づかれた!
「あ!いらっしゃいませ!ささ!こちらへどうぞ!」
「席までご案内しまーす!」
くそぅ!これはもう出れない雰囲気だ!
「なるくん……」
「なんだ……?」
「席に……つこっか……」
「………そうだな」
俺と紅華は、考えるのをやめた
▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂
「ご注文お決まりでしたら、お呼びください」
「あ、はい」
「それでは、ごゆっくり」
服装以外は、普通の店員さんなんだなぁ………いや無理だわ。メイド服が気になりすぎて普通の店員だと思おうとしても思えねぇわ
「なるくん?なんでさっきの子の事見つめてたの?ねぇ、なんで?」
「こ、紅華?」
あれ?怒ってらっしゃらない?
「ああいう服装が好みなの?」
「いや、そういう事じゃなくてだな……」
「じゃあどういう事?なにかやましい事でもあるの?」
「いや、だから……」
「あるの?」
怖いよぉぉぉぉ!目にハイライトがないよぉ!これ答えミスったら死ぬやつだよね?!
「いや、あの……」
「なに?」
「なんで喫茶店にメイド服なんだろうなぁ、って思ってただけなんだけど……」
「…………………………………本当に?」
「本当だよ!」
「ふぅーん、ならいいけど」
ホッ、よかった、即死ルートは免れたみたいだな
「…………………私も後でメイド服、着てみよう」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、なんでもない、それより注文しよ?」
「あ、そうだな。すいませーん!」
「はーい」
ん?今度はバーテンダーユニフォームのお姉さんが来たな
「ご注文は?」
「あ、はい、俺はナポリタンとコーヒーで」
「私はカルボナーラとミルクティーで」
「はい、かしこまりました。では少々お待ちください」
……………バーテンダーユニフォーム、カッコイイな。着てみたいなぁ
「なるくん?節操なしにも程があるよ?」
「え?!違うよ?!そういうので見てたんじゃないよ?!」
「じゃあなに?どういうので見てたの?」
「いや、バーテンダーユニフォーム、カッコイイから着てみたいなぁ、って思ってただけなんだけど……」
俺は他の女の子を視界に入れる事さえダメなのか……
「…………………………………バーテンダーユニフォームを着たなるくん………いい」
な、なんだ?今度は恍惚とした顔をし始めたぞ?
「なるくん!」
「うおっ、なんだ?」
急にデカい声出すからビックリしたぞ……
「今度バーテンダーユニフォーム着て、私とお家デートしよ!」
「お、おう。それは別にいいけど……」
「やった♪」
どういう考えからその結論に至ったのかは分からんけど…………
「お家デート♪お家デート♪カッコイイなるくんとお家デート♪」
紅華が喜ぶならなんでもいいか!
「あの、お、終わりました?」
んん?!
「あ、すいません……料理が完成したので持ってきたのですが……」
まさか……見られてた?!
「お二人の世界だったので……入りづらくて」
見られてたぁぁぁぁぁ!
「ち、ちなみにどの辺からですか………?」
「あ、えーと、節操なしにも程があるよ?ら辺からです」
思いっきし全部じゃねぇかぁ!
「うがぁぁぁ!恥ずかしいぃぃぃぃ!」
「あのあの!私となるくんって、お似合いだと思いますか?!」
紅華さん?!何を聞いてらっしゃるので?!
「はい!それはもう!まるで夫婦のようでしたよ!」
バーテンダーさんもやめてくれぇ!恥ずかしさで死ぬぅ!
「ちょっと、なにしてんの?早く戻って食器洗うの手伝いなさい………って、何この状況?」
あっ!さっきのメイドさん!この状況をどうにかしてくれ!
「ああ、姫香、聞いて!このカップル、すっごいラブラブなのよ!」
バーテンダーさん?!なにを言ってくれやがってるので?!
「え?紫里さんなに言ってんの?」
そうだメイドさん!このバーテンダーもどきのお姉さんに言ってやれ!
「そんなの当たり前じゃない、ずっと厨房から見てたけどものすごい甘々な雰囲気だったよ、この二人」
誰か俺を殺してくれぇぇぇぇぇぇ!!!!!