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僕とブラックコーヒー

作者: 安留史貢

コーヒーをテーマに広がるヒューマンドラマ

「にが! 」コーヒーを初めて飲んだのは、小学1年生の時だった。それもブラックだ。

 お父さんが飲んでいたのをちょっともらった。ビックリした。何で大人はこんなマズイ飲み物を飲むんだろう。しかも毎日。

 こんなに黒くて体に悪そうで、薬を飲んだ時の様に変な味がする。ただ匂いは良いと思った。

 「コーヒー牛乳」が美味しかったから、当然、ただの「コーヒー」も美味しいと思ったら、大間違いだった。

  

 でも、時は過ぎ、高校生になった僕、少し背伸びして、好きな飲み物として「缶コーヒーの微糖」をあげるようになった。これならなんとか様になると思った。

 だが、これを毎日それこそ20年くらい続けていたら、あれって“微糖”とうたいながらも結構甘くて、つまりはそれなりに糖分が入ってるで、気がついたら、腹回りの肉が気になると年頃になっていた。

 もちろん全てが缶コーヒーのせいではない事は重々分かっている。多くが日頃の不摂生の賜物だと。でも缶コーヒーがその一役を買っているのは否めない。

 だから、僕は40歳を境にコーヒーを「微糖」から「ブラック」に変える決心をした。勇気ある行動だ。

 

 「ブラック」。大人の男の響きだ。大人の象徴、子供から大人への架け橋だ。


 「ブラック」。徹夜続きの仕事の合間に飲むオレは思う“オレって今頑張っているんだ”って、“オレってカッコいい”って。

 

 「ブラック」。喫茶店で同僚の前で食後のティータイムの時に注文する。きっと女子は思うだろう“この人はやっぱり男の中の男なんだな”って。


 そうしてる内に、本当にブラックコーヒーの美味さがだんだん分かってきた。

 この豆は美味いなとか、あら引きだなとか。

 

 僕にとってのコーヒーは社会の縮図だ。考えたら、若い頃は自分に甘かった。

 “微糖”が好きな頃だ。変に背伸びして失敗もした。そこから多くを学んだ。

“缶のブラックコーヒー”を好んで飲むようになった頃は、次第に中堅になって、仕事のコツも分かってきた時期だ。

 “自分で焙煎する”ようになった頃は、いつの間にか自分が若者を指導する立場になっていた。

 

 気がつけば「コーヒー牛乳」から「ブラック」に。

 まだ残された人生は長い。僕はこの先どんなコーヒーを飲むのだろう?楽しみだ。

 そんな事を思いながら、僕は今、タバコをくゆらせ、自分で焙煎したブラックコーヒーを飲んでいる。


★★★★★おわり★★★★★

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