狼さんと一緒
(もうだめだ、シャルムおじさんの助けを呼ぶしか......)
その時だった。
「あの......どうしました?」
目の前の狼は首を傾げている。
「え、あっ、え?」
依然として狼は私を襲う様子はない。
「今待ってって聞こえたんだけど......」
「あ、すみません......えっと、私を食べないんですか?」
狼はぽかんとしていると思うと突然笑い出した。
「いやいや、人間を食べるなんていったいいつの話ですか? そんなのむかしのはなしですよっ」
「え、じゃあ襲わないんですか?」
「当たり前じゃないですか。それとも......なんですか? まさか食べられたいとか」
「いえいえいえ! 結構です。それより、狼さんはどうしてその家へ?」
よく見ると、狼は手に籠を持っている。
「ああ、そういうことですか。ここのおばあさんとは知り合いで......今病気になっているそうなので薬草でも届けてあげようかと」
(狼優しすぎない??いや、確かに物語としては全然違うけど、これだったら特に問題はないんじゃ......)
「あ、そういえばお嬢さん。見たところこの辺りの人じゃないみたいだけど、この辺りは少し危ないので、良かったら近くの町まで送りましょうか?」
「は、はあ......危ないとはどういうことですか?」
「いや、僕もよくわからないんですがね、最近この辺りでヒトの死体をよく見るので。何かがいるのは間違い無いかと......」
(なにそれ......怖すぎる)
「先程は失礼しました! ぜひ、同行してもらえれば......」
「いやいや、別に気にしてませんよ。見た目が見た目なので未だ怖がる人間がいることも事実ですから。それじゃあ一緒におばあさんの家に行きましょうか」
私は茂みから出て、狼さんと一緒におばあさんの家へ向かう。
コンコン。私はドアを叩く。
「し、失礼します......」
ゆっくりと扉を開くと私は息を呑んだ......