壊れた絵本
ここは絵本の修理屋さん
長い間放置された絵本は、だんだん内容がねじれていって子供達によくない内容や、恐ろしい内容へと変化してしまう。
私は、そんな本を救いたい。そんな気持ちからこの工房で働くことを決めたのだ。
「ふみちゃん、ちょっときてやくれんかね......」
「はーい」
今のはこの工房の主、シャルムさん。もう歳だけど、私がくるまではこの仕事をずっと続けてきた人だ。
「また絵本が悪くなり始めてな、また直してきてはくれんか?」
「わかりました......じゃあまた本来の絵本の説明からお願いします」
そういうと、シャルムさんはゆっくりと腰掛ける。
「君も座りなさい......これからまた出かけることになるんだから」
私も席につき、シャルムさんの出してくれた紅茶を飲む。
「......美味しいですね。これ」
「そう言ってもらえて嬉しいよ、それじゃあお話を始めようか」
「昔々あるところに1人の少女がいた。森に住むおばあちゃんのお見舞いをすることになったんだが、寄り道している間に狼に目をつけられてしまうけど、最終的には助かるという話じゃな」
「なんかすごくざっくりじゃないですか......?」
「まあ有名な話じゃからこのくらいでいいかなと思ったんじゃよ」
「それで、どこがおかしいんですか?」
「それはな......とりあえず見てもらった方が早いじゃろう」
「わ、わかりました」
シャルムさんは杖を出すとぶつぶつと呪文を唱える。そして本の方に杖をむけると、パラパラと大きな音をたて裏表紙から本はめくられ物語の1ページ目が開く
「いいかい、危ないと思ったらすぐにわしに助けを呼びなさい。わしは外からずっと見ておるから」
「は、はい......」
「何度も言うがそちらで死んでしまえば、こちらにはもう戻れなくなる。くれぐれも気をつけるんじゃぞ......」
そういうと、シャルムさんは大きな声で最後の呪文のようなものを叫び、その瞬間私はその本の中に吸い込まれていった。
目覚めると、私は小さな家の近くで倒れていた。
何かが近づいてくる。
「か、隠れなきゃ......」
私は咄嗟に茂みに隠れると、二足歩行する狼がその家へと向かっていく。
(あれは、物語通りだろうな......ってあれ、これって物語の後半じゃない?)
コンコン。狼が戸を叩く。
「あ、まって!!」
私は思わず茂みから立ち上がってしまった。
(や、やばい。どうしよう)
狼はゆっくりとこちらの方へ近づいてくる。