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狐の計画的犯行

やっと名前が出せます、狐顔の美丈夫視点です。

エリザベス視点とは雰囲気が違いますが、少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。

「お兄様、私は義理のお姉様はロンド伯爵家のお嬢さんが良いの。それ以外は認めないわ。嫁にして。絶対娶って。顔は良いんだから頑張って下さいまし!」


「…なんて?」


私の名前はエドガー・グリーン。

祖父の代から続く商人であり、私の代で先日遂に子爵位も手に入れた。

成金等と陰口を言うものも勿論居るが、私は自分のしたい事をしているだけなので気にはならない。

先の妹であるマリーから良く分からない指示を出され、気付けばロンド伯爵家と取引が確定する一歩手前にまでなっていた。

何をした、妹よ。

妹は兄の私が言うのも何だが、美人である。

世が世なら傾国と呼ばれる部類だろう。

中身は目的の為なら手段を選ばない部分がある程の苛烈さを持ち合わせているが。

そんな妹が義姉に欲しいと言うロンド伯爵家の長女は、とても大人しそうな女性であった。

珍しくもない鳶色の髪、凡庸な顔立ち、瞳だけは光の加減で色が変わるラブラドライトなような煌めきを持って居たが、外見はそれだけだった。

だが、中身は一昨年出来たばかりの国立大学へ進めた数少ない女性の一人である。

国でも有数の才女だ、その知識は確かに価値がある。

そう妹に語ってやれば、馬鹿なの?馬鹿でしょ?馬鹿だった!と言わんばかりの目をされた。


「お兄様は馬鹿なの?あの凄くキラキラする瞳より価値のある宝石なんてないわ。元婚約者を見つめていた瞳が良かったの。お兄様は、それを知らないだけなのよ。勿体ない」


「せめて、実の兄に馬鹿と口に出して言うのは止めてくれ。確かに不思議な色だとは思うが…」


結局は妹に鼻で笑われ、部屋を追い出される。

その足で、新しく取引出来る事になった酒を伯爵主催のパーティーへ持ち込んだ私は、妹の言葉の意味を理解した。

焼酎と呼ばれる東の国の酒を飲んだ彼女の瞳は、それはそれは美しかったのだ。

キラキラしてユラユラと、まるで瞳自身が光を撒き散らしているかのようだった。

妹が欲しいと言った意味が、その瞬間ストンと胸に落ちて来た。

それと同時に元婚約者の男は、こんな瞳の彼女を手放したのかと嘲りたくなる気持ちも湧く。

話せば焼酎への造詣は深く、想像以上だった。

ぎこちない彼女とどうにか文献の題名を教えて貰う約束を取り付けて、その日は別れた。

婚約破棄して1年未満の今だと、彼女が周りから何を言われるか分からないからだ。






律儀な彼女は、パーティーから1週間後には文献の題名と私の仕事に役立つであろう部分の写しも添えて手紙をくれた。

伯爵へは芋から作られたという焼酎を贈ったのだが、他の種類も市場に流すのかという疑問も添えて。

彼女はとても良い口実をくれたのだ。


「お兄様、良くやりましたわ!次は逢引きをするべきです。もっと仲良くなって下さいませ」


「何故、兄に向かって上から目線なんだい?まぁ、距離を縮めるのは同意だが。だが、彼女は婚約破棄をして1年未満だ。私のような独身男性と2人きりは何を言われるか分からんだろう…」


「まぁ!まぁ!お兄様が女性を気遣ってらっしゃる!?流石ですわ、ロンド伯爵令嬢。それでこそ、未来の私のお義姉様です!私も一緒に…でも良いのですが、どうせ結婚するんですもの向こうの親も巻き込みましょう。取引先ですし丁度良いでしょう?」


「その傲慢さはエリザベス嬢の前では隠してくれよ?」


当たり前ですわと高笑いをする妹は、何処の舞台女優だと聞きたくなるような貫禄があった。

ただ、兄である私は知っているのだ。

そうやって傲慢に振る舞う時は、本当に嬉しい気持ちを隠したくてやっている事を。

はて?二人に接点はあっただろうか。

まぁ、そんな些細な事は良いだろうと、私は周りを巻き込むべくペンに手を伸ばすと手紙を書いたのだった。






「いや、グリーン商会とここまで大きな仕事が出来るとは思ってもみませんでしたよ。これからも宜しくお願いします」


「いえ、ロンド伯爵それはこちらの言葉です。お嬢様の知識のお陰でスムーズに輸入数等の取り決めが出来ました。市場での評価も上々です。誠に有難う御座います」


私は焼酎の輸入事業をロンド伯爵家との共同事業へと押し上げた。

エリザベス嬢の知識をお借りしたいと、少し狡くはあったが彼女が才女である事を前面に押し出して提案を進めたのだ。

だが、そのお陰で飲み方の工夫や商品展開を増やす事が出来、売上は順調である。

今日は、そのお祝いとばかりに焼酎を揃えた小さなパーティーを開いている。


「…天国じゃん?」


「?どうしたんだい、エリザベス?」


「え!?いえ、お父様…わたくし以外の女性にも焼酎が受け入れられている事に感動してしまって…」


「こんなにも我が国に焼酎が受け入れられたのは、エリザベス嬢が努力と提案を続けて下さったお陰ですよ。これからも宜しくお願いします」


「ひぇ…」


何かポツリと呟いた彼女は、伯爵に確認されると目に見えて慌て始めた。

そんな彼女へと笑いかければ顔を真っ赤にさせてラブラドライトの瞳を煌めかせる。

最近、やっと私を見ると瞳をキラキラさせてくれるようになったのだ。

少し前までは笑顔を向けると顔を赤らめてはくれたが、瞳はキラキラとしていなかった。

元婚約者のような姿の男には、キラキラとした瞳を向けていたにも関わらず。

そんな事で柄にもなく苛立ってしまっていたが、今は気にならない。

そんな事を思っていれば、赤い顔のまま焼酎のお茶割りという新しい飲み方でグラスを傾けていた彼女が、またポツリと言葉を溢した。


「芋焼酎と一緒に肉味噌食べたい…」


「…エリザベス嬢、大学を卒業したら私と一緒に東の国へ行ってみますか?」


「え、行く〜!お刺身も食べよ?」


キラキラとした彼女から言質はこれで取れた。

もう外堀も完璧に埋めているのだ。

少し離れたテーブルから、妹がニッコリと良い笑顔を向けてくれた。

最後までお読み頂き有難う御座いました!

相変わらず拙い作品ですが、自宅で過ごす事が推奨されている現在の暇つぶしになれたらと思っております。

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