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陛下は諦めムードのようです。

王族視点からお送りします。

「どうしてこうなった!!」

「陛下、どうか冷静に」

「冷静になどなれるものか!私の研究もあと一歩、ほんの僅かで完成というのに!あの愚か物め!!」

「心中お察ししますが、いまは自身の命を優先すべきです!疾く避難を」

「くそ!くそ!!」

「火の手が迫っております!さあ!」


いつも窓から見える従者によって手入れの施された庭園は、既に燃え盛る炎に包まれている。


「…よい」

「は?」

「もう、よい。私はもう放っておけ」

「しかし陛下!」

「奴はしつこいぞ?そう、魔狼のように。私の首を取るまで襲撃してくることだろう。それに私にはこの研究が全てであった。故に、もうよいのだよ」

「…」

「さあ、行け。お前を含め配下の皆には世話になった。逃げ切れる見込みは高くないだろうが、0ではないはずだ。残る配下を引き連れ、抜け道を進むがいい」

「…は!このプライマリー•マール、必ずや逃げ延びることを約束致します!」

「達者でな」

「は!」

マールは最敬礼をすると、踵を返し駆けていった。

「…彼らの旅路に幸多くあらんことを切に願う。この願いは、どうか聞き入れてくれ、神よ」


私は王家に生まれたことで権力と財力を持った。だからこそ研究などという道楽ができ、だからこそ侵略されることとなった。

「王家で管理する水源がなければ侵略されなかっただろうが、同時にこの研究を進めることは叶わなかった。上手くいかんものだな。この発明で民を、この世の多くの者を救うことができたであろうに…」

隣国の兵であろう幾らかの小隊がこの棟に入ってくる様が見えた。

「残された時間は僅かか。しかし、本当に間の悪い奴だ。大方水源を失ったが故の侵略だろうが、その侵略で新たな、さらに言えば無限の水源を失うのだから愚か者としか言いようがない」


かつかつと階段を登ってくる音がする。

「来たか。辞世の句はざまーみろで決まりだな」

ギィ、と背後のドアが開く。


「遅かったな。未練は尽きないが近い将来の貴様らの阿鼻叫喚する様を思うと悪くない。さあ殺せ」

「…言い残すことはないか?」

「ふん、ざまーみろ」

「だって。院長どんまい」

「悪ノリは止そうね、カルキ」

振り返ると稀有な格好の男女が立っていた。

「貴様らは?兵のようには見えんが…」

「ご安心ください。我々は貴方の味方です、陛下」

「そういうことだから諦めるのはまだ早いし」


なにがなにやら分からんが、どうやら私の幕が下りるのはまだ先のことらしい。





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