神の使いが来院したようです。
つ、月一更新はできるように頑張ります。。。
リーンゴーン
院のベルが鳴る。このベルは外から誰かが敷地内に入ってきた際に知らせてくれる優れもので、卒院生の1人が作った魔道具だ。
「ようやく帰ってきたようなので出迎えて参ります。お待たせして申し訳ありません」
「いいよいいよ、気にしないで。それから院長だけ呼んでもらえればいいから。子供達、放ったらかしにしたら可哀想でしょ?」
「ありがとうございます。すぐ伺わせますので」
「はーい」
カルキは深く頭を下げ玄関先へ向かった。
「「「ただいまー!!」」」
そう言いながら出迎えてくれるカルキの下へ3人は駆けていくとその腰にひしっと抱きつく。
「はいはい、おかえりちびっ子たち。怪我しなかった?」
「余裕だよ余裕!アーマー・ボア?ってやつ、やっつけてきた!」
「僕も!」
「リラも!」
「へー、ちびっ子たちの雄姿を見たかったし」
言いながら子供達の頭を撫でる。
「ただいま、カルキ」
「うん、おかえり。例の人、応接室で随分待たせちゃったから早く行ってあげて」
「そっか。対応ありがとね」
「ん、別にいいし。ほら行くよちびっ子たち。姉ちゃんについて来られたらお菓子あげちゃうし」
「「うおぉ!」」
ダッと駆け出すシルトとフロック。くっつき虫のリラは一瞬僕の顔を見た後「待ってー!」と駆けて行った。カルキの作る菓子、美味いもんね。さて、まだ日が出てるとは言え恐らくかなり待たせてしまっただろうし、丁重におもてなししないと。応接室へと歩を進め、カチャと扉を開く。
「ひさしぶり、院長。すっかり首が長くなっちゃったよ」
「あはは、お待たせしてすみません。アーネスト様。本日のご用件はやはり」
「ああ、また君にお願いに来たよ」
「そうですか。前回は確か」
「冬の真っ只中だよ。この辺りの降雪には参ったよ。天使といえど流石に応えた」
彼はアーネスト。一見ただの青年のような風貌だがその実、天使である。なぜ天使が…と疑問に思われるだろうがここでは割愛する。
「そういえば雪の積もったお姿で新手の魔物と勘違いしたカルキに攻撃されてましたね」
「そうそう、さっき彼女ともその話になってね、気にしていたらしくえらく謝罪されたよ。あの件は私に非があるから気にしなくていいと言っておいたが、また君からもフォローしておいておくれ」
「ええ、わかりました」
「それでは早速本題だが、今回はとある国を救って欲しいんだ」
「国…ですか」
「うん、まあ正確には王族の数人でいいんだけど、あまり人が死ぬところは望むところではないよね」
「なるほど。では攻撃を受けている訳ですね」
「話が早くて助かるよ。そう、今まさにクーデターが起きているところなんだが、件の王族は将来歴史的偉業を達成するんだよね。ところが今回のクーデターで命を落とす運命に変わってしまったんだよ。そこで君に任務、と言う訳だ」
「…そうですか。ちなみにお断りした場合は」
「もちろん、君に拒否権はないよ。断ればその瞬間に君は塵芥に変わるだろうね」
「まあ、そういう契約ですものね」
そう、僕はこの天使と契約をしている。正確には彼の上司にあたる神様と契約を交わしたのだけれど。またしてもその契約の経緯については割愛するけども、要は命の恩人に対して協力しなければ無に還る、というなんとも無慈悲な契約だ。ただし
「そう気負うことないよ。今回も異能ガチャとフレンドを連れて行くことができるし余裕余裕」
そう、この異能ガチャおよびフレンドがこの無慈悲な契約唯一の救いと言える。ガチャとは一体?と初見は戸惑ったがランダムで能力を授けてくれる、とそういったもの。ランダムなのが玉に瑕だが。そしてフレンドは僕の周囲の誰かを同行させることができる。つまり、
「では、またカルキに手伝ってもらいます」
「うんうん、それがいいよ。彼女は何より有能だしね。下手したら任務中の君よりも」
「あの子と比べたら大概の人がボンクラに成り下がりますよ」
補足になるけれど、僕はこの任務中のみ魔法や異能が使える。というのもこの依頼、僕が院長となった時から不定期にやってくるのだけれど毎度ガチャを引いておりその異能は任務中のみ全て使用可能という仕様になっている。つまり何が言いたいかというと、神様厳選の特殊能力を複数持った僕よりカルキは有能である、ということ。
「じゃあ、用意ができ次第いつもの転移陣に乗ってくれればいいから。よろしくね?」
「ええ、今回も精一杯働きますので。万が一私が命を落とした場合はカルキ含めて孤児院のみんなをよろしくお願いします」
「もちろんわかってるよ。まあ、君が死ぬなんてことはそうそうないと思うけどね」
じゃ!というと翼を顕現したアーネストは窓から飛び去った。みるみるその姿は小さくなり天上へと消えた。
「はー、気は進まないけど準備するかー」
そう独り言をこぼし応接室を後にした。