院長が子守するそうです。
「それで、山で何するつもり?」
4人で仲良く手を繋いで歩く中僕はそう切り出す。
「気になる?やっぱ気になる??」
しししっ、と歯を剥いてシルトは得意げな顔を向ける。小馬鹿にされてる気もするが目を瞑る。
「ああ、院長に教えてくれよ」
「「魔法だよ」」
フロックとリラが答える。シルトは「あー!」と自分が種明かし出来なかったことに不満を漏らした。
「へー、もう魔法使えるのか」
「まだまだ微妙だけどなー」
シルトは口を尖らせてそう呟く。
「最近、冒険譚読んだ」
「ああ、それで」
物語に影響されて魔法を覚えようとする子供は珍しくない。ただ、皆が皆魔法を使えるかというとそうでもなく、魔法の才があるかないかがモノをいう。経験則で言うと才があるのは2割から3割というところだと思う。
「魔法を使うのはシルトだけ?」
「フロックも使うし「リラも」…使うぞ」
褒めて、と言うようにリラが袖を引いて見上げてくる。リラとフロックの頭に手を置いてポンポンしてあげた。リラはもちろん、フロックも満更ではなさそうだった。シルトからも羨望の眼差しを感じたので後でしてあげよう。
「カル姉がちょっと訓練してくれた」
フロックの言葉に合点がいく。どこで覚えたのか気になっていたけどカルキの指導を受けたらしい。彼女ならば充分に指導できるだろう。
「皆使えるのかー。院長としては鼻が高いなー」
と言いつつ内心複雑だ。そう、僕は魔法が使えない人間なんです。まだ内緒にしておこう。
「今日は猪を魔法でやっつけるんだぜ!」
少しブルーになっているとシルトが意気込んだ。
「猪って、魔法だけで?」
暗に倒せるのか確認すると
「多分問題ないと思うよ」
フロックが言う。この子が言うなら嘘ではないと思うのだけど10歳頃の、さらに言えば覚えたてホヤホヤの魔法で猪を倒せるとはにわかに信じられなかった。
「大丈夫。リラが守る」
どうやら僕が怯えていると思ったリラは安心させるためか僕の前に出てガッツポーズを決めて真剣な表情をする。すごく癒される。
「あはは、頼りにさせてもらうよ」
今はこの子達を信じよう。もし危険になるようなことがあっても、僕が魔法を使えないとはいえ、この子達を無傷で連れ帰る自信と方法くらいはある。それになんて言ったってうちの子達は優秀だからきっと大丈夫。僕達はそのまま歩みを進めた。
サブタイトル回収できてないかな?