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院長は誰より子供なようです。

ハートフルかつくすっと笑える、そんなお話をお送りする予定。胸糞展開は極力避けていきたいと考えております。

「「「起っきろーーー!!」」」


「んがっ!!」


「院長いつまで寝てんだよー」

「お寝坊さんには鉄槌下すべし」

「腹減ったご飯はよ」


「もう、そんな時間か…」


横になっている僕の上に飛び込んできた3人の子供達の目覚ましを受けて目を覚ました。が、


「寒っ!!寒い…」


布団の外の刺々しく冷え切った空気に思わず身体を縮こませ二度寝の体制をキめた。


「おーい!」

「観念して布団から出てくるの」

「育児放棄とは…どこに訴えてやろうか」


「院長はまだ眠いの。院長はみんなより寝ないと生きていけないの。院長は訴えられないの」


「「「子供か」」」


「ってことで君達もほーら!」


ガバッと側にきていた子供達を抱えて布団に引きずり込む。


「きゃー!///」

「わ!やめろよ院長!くそ、ホールド強すぎくるじい!」

「いい加減にしてくださいダメ人間」

「はぁー、君達暖かすぎ。もう離さない逃がさないおやすみ」


3人を抱きしめる力そのままにもう一度夢の中へ旅立とうとする。するとまたドアが勢いよく開いた。


「またやってるし。ほらあんた達早く出ておいで。今日はアタシがご飯作ったげるからその阿呆は放って居間においで」


「「カル姉ぇ助けて動けない」」

「私は院長が満足するまで付き合う所存」

丸まった布団の中から抗議の声が聞こえる。

1人はご満悦らしいが。


「ったく。世話がやけるし」


瞬間、布団は消え去った。さらに言えばベッドさえも消え失せ空中に放り出された。結果


「がはっ!」


床に叩きつけられ情けない声を上げる。3人の子供達の分威力はマシマシだ。


「カーちゃん、魔法はずるいんじゃないの?」


「カーちゃん言うなし!それ気に入ってないの!ほら、そのままみんなで降りておいでよ。スープ冷めちゃうよ」


「「はーい」」

パタパタと駆け出す2人と

「大丈夫?痛かった?」

背中をさすってくれる子1人。

「んにゃ、全然ヘーキ。カルキのご機嫌損なう前に行こうか」


きゅっとさすってくれていた手を握り、駆けていった2人に続いた。


------


「おふぁよぉ〜〜〜」

少女と手を繋いだまま居間への扉をくぐり食卓についた少年2人に挨拶する。

「「おそよう」」

「そんな言葉ないぞー」


悪態をついてきたので軽口で返す。


「院長、こっち」

「はい」


一緒に手を繋いできた少女、リラが2人の少年シルトとフロックの正面の椅子を指し座るよう促してきた。促されるまま席に着くとその私の上にリラは腰を下ろす。

「私はこっち」

「あ、はい」

んふふふ、と息を漏らす彼女をそのままに、向かいで苦笑いする2人に目を向ける。


短髪と切れ長の瞳で快活なのがシルト。中性的な顔立ちで利発な少年がフロック。膝上でホクホクしている少女がリラ。肩まで掛かるキラキラした銀髪で大人しい性格をしている。この3人が今この孤児院最年少グループで今年で齢10になる。それから


「はい、お待ちどう。ちゃっちゃと食べてさっさと片付けるし」


隣接した厨房の方からスープの入った鍋を抱えてやってきたのがカルキ。暗めの紅髮のポニーテールがよく似合う。彼女は今年で齢20になるが15の卒院式を済ませたものの、この院に残ってくれている。正直院の運営は僕1人で事足りる程度の仕事量しかないので外の世界に出ることを勧めたのだけど「アタシはここが好きだからいるだけだし」と言われたので、以後何を言うこともなく一緒に子供達の世話をしてもらっている。


「「「「いただきます」」」:

「はい、召し上がれ。で、今日はみんなどうすんの?」


すでにテーブルにあったパンをちぎりつつ、みんなの予定を確認するカルキ。


「今日は山に登るんだ!行くよな?フロック」

シルトがそう言うとフロックに目をやる。

「まあ、付き合ってあげてもいいけど」

フロックはスープを口に運びつつ返答する。

「リラもどうだ?」

「ん、院長も」

と、リラは僕を見上げてきた。

「悪いけど、今日お客さん来るみたいなんだよね」

「そう」

僕の返答にしょぼん…と明らかに気落ちするリラ。心苦しくなったので助けを求めるようにカルキを見る。

「いいよ、アタシが来客対応するし。そんかし、早めに帰ってきてよね」

「助かるよ。ありがとうカルキ」

「ありがとうカルキお姉ちゃん!」


それから他愛ない会話を交わして朝食を終えると、バタバタと子供達は冒険の、カルキは来客の対応のため

の下準備を始め、しばらく経った頃


「「「「行ってきまーす!!」」」」

玄関を出たところでカルキへ元気な声を掛ける。

「はーい、いってらー」

来賓室の方から声だけ帰ってくる。

「よし、じゃあ行こうか。皆お守りは持った?」

「「「持った!」」」

そう聞くと3人はお守りとして渡した札を手に掲げた。

「では、しゅっぱーつ!」

「「「おー!!」」」


僕たちは意気揚々と歩き出した。




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