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休み時間にプチ修羅場?『三葉の巨美姫と零の賢美姫の邂逅』

甘々な話にしようと思っていたのに…、私の説明描写が長くて、次回に延期してしまいました。

申し訳ないです…

 

「相太……。私の手伝いの方を優先するわよね?」



「相太くん!私と後でお話しするって、そう約束してくれましたよね?朝の階段でお別れしたときに!」



 そう俺に言い放った二人は、なぜか二人顔を見合わせて、バチバチと火花を散らしている(ように見える)。


 そして、二人同時に俺の手を取ると……



「「もちろん、私を優先する〔します〕よね?

 相太〔くん〕!!」」



 と、二人同時にそう言って、俺の手を左右にぎゅっと引っ張ってくるのだった……



 俺はその二人を交互に見て、静かに溜息をつくと同時に思う、どうしてこうなってしまったのかと。



 そしてこうなってしまった理由は、今から10分程前に遡る……



 ・・・

 ・・

 ・



 ーーーー1年B組・教室にて(昼休み)ーーーー


「あー、色んな事に頭がいっぱいで、普通にお弁当を家に忘れて来てしまった……」



 俺はぼーっと外の葉桜を眺める事を止め、昼休みになったので、お弁当を食べようとしたわけであるが……


 あれだけ忘れないようにと静恵から念を押されていた弁当箱を、自宅の玄関の所に置き忘れてきてしまった事を今更ながらに思い出した。



 そしてそれを思い出すと俺は、朝早くからわざわざ早起きして静恵が作ってくれた手作り弁当を、自分の不注意で忘れてきてしまった事に罪悪感を覚えた。


 なので俺は静恵にその事を謝罪すべく、スマホでLINEを開き、弁当を忘れて来たことについての謝罪のメールを静恵に入れていたところ……



「失礼します。相太……。いえ、相川くんはいらっしゃいますか?生徒会の用事で彼を探しているのですが。」



 突然、教室の前扉がガラガラっと音を立てて開いたかと思うと、廊下からそのような凛とした声、俺の事を呼ぶまゆずみ 麗奈れいなのその声が1-Bの教室に聞こえてきた。



 すると突如教室に響いたその声に、クラスメイト一同ザワザワと麗奈と俺の方を交互に見て、ざわざわと騒ぎ出す。



 しかし、それを麗奈は気にするようなことはなく、教室の中をキョロキョロと覗き込んで、俺の姿をそこに確認すると……


 そのまま麗奈はスタスタと一直線にこちらに向かって歩いて来て、ピタリと俺の机の前で立ち止まった。



「ちょっといいかしら?相川くん?

 今から生徒会室まで、学園雑誌用の紙を運び込まないといけないようになってしまったの。

 それが多くてちょっと大変だと思うから、あなたも手を貸してくれないかしら?相川くん。」



 と、俺の前で立ち止まった麗奈は眉一つ動かさず、そのようにお願い。というか要求?を俺に述べてきた。



 その瞳は俺が断らないことを確信しているような、そんな無機質で冷たい瞳のように見えて……


 俺はキュッと胸が苦しくなり、その痛みから麗奈への視線、その向けられていた瞳からスッと目を逸らした。



 するとそれを見た麗奈の顔に、初めて感情らしい感情が現れる。



「ど、どうして目を逸らすのかしら?

 あなたはいつも私の手伝いをしてくれていたでしょう?

 だから私は今回もと思って、あなたに手伝いを頼んだ訳なのだけど……」



 と、少し動揺したような、俺が頷かないことを戸惑うような表情で、そう俺を説得しようとしてくる。


 俺は麗奈が初めて見せるその表情にチクリと胸を痛めながらも、その表情を解消させるであろう「分かった」というその言葉だけは、どうしても口にすることが出来なかった。


 というか、その言葉以外の言葉ですら何も言うことが出来ず、そのまま二人沈黙した時間が流れていった。



 そして俺と麗奈、二人が微妙な空気の中、お互いに相対したまま立ち尽くしていると……



 ガラガラ!!



「すいません、失礼します!ここは1年B組の教室で間違いないでしょうか?

 間違いでなければ、相川 相太くんはいますか?

 今日は相太くんに用があって、ここまで来たのです。

 あっ!名乗り遅れましたが私は2年の大岡 三葉です。」



 と、麗奈に続いて教室の前扉が開いたかと思うと、そんな生真面目な声、再び俺の事を呼ぶ大岡おおおか 三葉みつば先輩のその声が1-Bの教室に聞こえてきた。



 すると教室中が先程と同じ、いや先程以上にザワザワとし始め、クラスメイトたちは三葉先輩と俺たち二人を見ては何かをヒソヒソと話し始める。



 そしてそんな中、三葉先輩は扉から覗き込んだ教室に俺の存在を認めると……



「相太くん!そんな所にいましたか!

 今日の朝に言っていたお話の約束、それを果たして貰うためにここまで迎えに来ましたよ。」




 三葉先輩はそう言うと、麗奈の前で一人立ち尽くす俺の元へと、テクテクとその長い脚を動かしながら近づいてくるのだった。


 そして俺の前まで来た三葉先輩は、その顔に笑みを浮かべて……



「あっ、あと屋上でお弁当を一緒に食べましょう?

 そこでなら、そのお話を誰にも邪魔されずに聞くことが出来ますから。そこで朝の件についてのお話しをして?

 って、あれ?麗奈さん?なんで麗奈さんが相太くんと一緒にいるのですか?

 何か事務的な用事であれば、早く終わらせていただきたいて、相太くんを私に返して欲しいのですが……」



 と、そこまで言ってようやく、隣に立つ麗奈の存在について気がついたようだ。



 麗奈ほどの目立つ存在を無視して、ここまで夢中になってこちらに話しかけてくるなんて……


 ある意味すごい人だ。



 すると、突然の三葉先輩の出現に驚いてポケっと気の抜けていた麗奈は、その言葉を聞くと「ハッ!」と我に返って……



「い、いえ、私のは……、その……。事務的な用事ではないのです!ですから、彼をお返しすることは出来ないので……。

 そうです。生徒会!生徒会のお手伝いが相川くんにはありますので、大岡先輩は今回ご遠慮下さい!」



 と、麗奈はなぜか焦ったようにそう言うと、俺の服の袖を掴み自身の方に引き寄せる。



 その様子はいつも凛としている麗奈とは違い、まるでそれは、罪悪感を感じながらも欲しいものを手に入れようとする子供のようで……


 とても違和感を感じるような言動であった。



 そして、その変な違和感を三葉先輩も麗奈から感じ取ったようで……



「それは本当のことでしょうか?麗奈さん。

 確か相太くんは生徒会に所属していない、無所属の人だと彼からは聞いていたはずなのですけど……?

 それに生徒会のお手伝い?であれば、他の役員にまず頼むべきではありませんか?

 自分がいた頃の生徒会ではそうなっていたはずなのですが?」



 と、少しだけ鋭い視線で麗奈のことを睨みながら、そのように三葉先輩は麗奈に切り返す。



 俺はその様子を見て、三葉先輩のことをあまり怒らない先輩だと勝手に想像していたので、今朝の様子も踏まえ、今のような問い詰め方をするとは全く想像していなかった。



 そして麗奈の方も、そんな先輩の様子にたじろんだようで……



「そ、その……。相川くん。いえ、相太は前から私の手伝いをしてくれていたんです。

 ですから、生徒会とは関係なく私を手伝ってくれたので、それで……」



 と、麗奈は弱々しくハッキリしない口調で三葉先輩にそう言い返す。


 名前を言い直した部分などは謎だが、俺を先輩に譲る気は無いという意思をその言葉からは感じることが出来た。



 それは理屈などではなく、習慣を理由に俺に手伝いを頼んだという、そんな理由付けを行ったようである。



 しかし、それを聞いて引き下がる優しい三葉先輩ではない訳で……



「そうですか。それだけの理由であれば、代わりの生徒、及び別の役員の方に頼ることをお願いします。

 私の場合は()()()()()()()()()()()()()が、麗奈さんの場合は相太くんでなくても、他の方々でも別に構わないはずの内容なので。」



 と、三葉先輩はそれだけを麗奈に言うと、もう話は終わったと言わんばかりに麗奈が掴んでいた俺の袖を引き離し、そのまま俺の手をぎゅっと掴むと同時に、自身の方に俺の身体を引き寄せる。



 しかし、そこで手を引き離された麗奈はキッ!っと三葉先輩のことを冷たい視線で睨み、俺の方に近づいてきて……



「相太は私との用事の方を優先するんです!

 もう生徒会とは関係のない大岡先輩はこの事に口を出さないで下さい!

 それに私と相太は……。いえ、とにかく!私と相太の問題なので、大岡先輩は邪魔しないで下さい!」



 と、麗奈は三葉先輩を睨みながらそう言うと、三葉先輩とは逆の手、もう片方の空いている手を掴み、自身の方に俺の身体を引き寄せようとしてくる。





 そしてこの後からが、先程冒頭で行われた二人の会話。


 このようにして、『俺がどちらを優先するのか?』という話にまで、この問題が発展してしまったという訳である……



 正直ここまで、三葉先輩が強気に麗奈に対応して、俺との昼食の時間を設けようとするとは思っていなかったし……


 何より麗奈が、そこまで俺に手伝いを頼む事を拘るとは夢にも思っていなかった。



 少し前の俺ならば、それを喜び、麗奈の役に立つことが出来ると、その依頼を快く受け入れていたと思う。



 だが、そう簡単に受け入れるには……


 俺と麗奈の関係は、三葉先輩との新しい出会いなどをキッカケにして、これまでとはまるで違ったものに変化していた。



 俺と麗奈はもう今では別れていて、そんな俺には新しい知り合いの三葉先輩がいて……



 そしてこれは、そんな二人との関係を踏み出すか足踏みするのかを決める大事な一歩。



 麗奈を選び、叶わない関係をズルズルと引きずっていくのか……


 それとも三葉先輩を選んで、新しい関係への一歩踏み出して行くのか……



 そんな選択に頭を抱え、悩みに悩み抜いた上で俺が出したその答えとは……



「俺は……。三葉先輩との先約を優先するわ。

 だから、ごめん麗奈。いや()()()

 また別の……、()()()用事がないときになら、生徒会の手伝いもしてあげることは出来るけど、今日だけはどうしても無理だ。

 だからごめんなさい……。黛さん。」



 俺はそう言って麗奈の手、その俺の片方の手を握りしめていた手をそっと離し、三葉先輩の方へとその足を向ける。


 そして、それを見た三葉先輩は俺の手をきゅっと優しく握り締めると、俺をその止まってしまった空間から救い出すような、そんな優しい笑顔を浮かべて、外の世界へと引っ張っぱり出してくれたのだった。



 そうして俺は三葉先輩への新しい第一歩、先輩との約束……、今朝の涙の理由わけを先輩に教えるという約束を果たすことで、麗奈からの誘いを断るという第一歩を無事踏み出すことが出来たのだった……

日間ランキングにここまで登場することが出来て、本当に感謝しかないです!

ご覧になって頂き、誠にありがとうございます!


そして、少しでも面白い・続きが読みたいと思って貰えたなら、ブックマーク・評価をよろしくお願いします!

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