2人で歩く帰り道／家に帰るとふと思う事『今後歩む路はアナタと一緒に／アンラッキーエンカウント』
少しだけ長いかもです。
「結局今日の話し合いはーーなんだか、モヤモヤが残る結果に終わってしまいましたね……。
まあその……。体育祭に向けての話し合いの方はまだ、どちらが場所を提供するとか……実際にどの程度の時間でスケジュールを組むとかーーそれら色々と話し合う事が出来たんですけど……。
ーーでも、モヤモヤの原因は……それじゃなくて……。」
「はい。それは私も理解しています。……おそらくですけど、相太くんはあのお2人の事を言っているのでしょう？
ーー巴ちゃんと未来さんのあのお二方。今回の話し合いで少し分かりましたが……。ちょっと冷たい言い方をすると……巴ちゃんだけでなく、妹さんの未来さんにも良くも悪くも少しだけ性格面に関する問題があるようですね。」
『第一女学院』での話し合いの帰り道。他の用事があるとの髙木委員長と校門前で「また明日！」と別れ、そのまま2人並んで帰る事になった俺と三葉先輩。
はじめは、今日の話し合いでの実務的な内容についてのお互いの意見交換。それに今後の委員会活動でどんな事が話し合われるのだろうか？などの話で、あまり当たり障りのない話をお互いに意識してしていたのだが……。
いざ、今日の話し合い自体の感想を言い合うとなるとーーこのように、お互いにモヤモヤした気持ちで一杯だという胸の内を、告白せざるを得なくなってしまうのだった。
そして今……三葉先輩が言った通り、俺と先輩がモヤモヤしている理由は、今日の話し合いで垣間見えたあちらの副会長2名の抱えている問題でーー
「そうですよね……。巴さんの生真面目過ぎる点は俺も驚きましたけど、それよりも、俺が気がかりに思ったのはーー未来さんの事……なんですよね……。」
「はい。私も未来さんの事が心配に思いました……。あれはーー巴ちゃんの……いえ、周りの環境の影響でしょうか？
その……彼女は少し後ろ向き？と言うのか、どこか自身の事を卑下するところがあるようです……。」
やはり、俺と未来さんのやり取りを見ていた三葉先輩にはそれが分かるようで、あの時、未来さんが一瞬だけ見せた暗い一面を先輩も気がかりに思っていたみたいだ。
ーー『ミクは必要ない』と言った時の彼女の表情。
その諦めとも言える、何も感じていない……感じていないようにこちらに感じさせるその表情に、俺は今思い出しても何とも言えないーーなんだかやりきれないような、モヤモヤした気持ちになってしまう。
すると、そんな俺の様子に三葉先輩の方まで同じ気持ちになってしまったたのか、難しい表情をしてしまう。
だが……こればかりは色々と個人に関わってくるとても難しい問題で、今の段階ではどうする事も出来ない事し、第1それを今、俺たちが変に気にするのもおかしな話なのだ。
「（とは言っても……。だからって一度そんなところを見てしまえば、それが気にならない訳がないんだよな。
一時とは言え同じ作業をする人だし……。それにーー巴さんだけじゃなくて、未来さんにも助けて貰うかも知れないって、俺は彼女にそう伝えた。だから、俺は彼女が本当に助けを必要としている時に、俺の力が必要だと彼女から言って来てくれるそんな時に……心から彼女の力になりたいって、そう思うんだよな。ま、まあ……ちょっとキザなセリフとは思うんだけどーーそれはホントに。）」
ありきたりな考えだとは思うが、実際にこれは俺の考えであり本心だ。
少しでも、未来さんが今の現状を良くないと思って、それを変えたいと自分から思わない事にはーー何も始まらないし、始まる事すらない。
やはり本人の意思。自身を変えたいというその意思がなければ意味がないし、変わりたい意思が無ければ、こちらとしても勝手に手出しをする事は許されていないのだ。
ーーと、まあ……。大それた事を色々と考えてしまったが……平たく言うと、ミクさんと巴さんの2人の事が俺と三葉先輩はとても心配なのだ。
だから、2人の力になれる事があれば手伝いたいし、何か胸の内に抱えているものがあれば、その相談に乗って助けたいーーただそれだけの事なのである。
そして、俺は同じように難しい顔をしていた先輩に、「ひとまずは、彼女たちの動向を注視していましょう。」と呼び掛け、とりあえずは重く考え過ぎないようにと気を使う。
「まあ、とりあえず今はどうする事も出来ませんし……。あんまり遅くなったらまずいので、早く帰りましょう。
三葉先輩も今日はそのまま帰りますよね……？こんな時間ですし、あまり出歩くのは危ないですから……。」
俺はそのままいつまでも2人、あてどなく悩み続けていても仕方ないと思ったので……。一旦ここで、未来さんたちの事を考えるのを止め、夕暮れ時の帰り道を急ぐことにした。
なので、俺の言葉に「そうですね。では、行きましょうか。」と頷く三葉先輩に、そのまま俺は並んで歩きだそうとしてーーグイッ！
「……えっ？……ってーーああ。すいません。では、お手を借りて……。ど、どうです？力加減は……大丈夫ですか？」
「はい、力加減は大丈夫です。お気遣いありがとうございます。相太くん。ですがーーうん……しょっと。はい！これでちゃんとした恋人つなぎになりましたね？ふふ……。」
「ーーっ！そ、そうですね！？」
すると、歩き出そうとしていた俺の服の袖をギュッと、隣を歩く三葉先輩が握りしめたかと思うとーー気が付いた俺がスッと握ったその手を、そんな言葉を可憐な微笑みと共に動かして恋人つなぎに握り直すのだった。
そしてそんな事を微笑みと共にされた俺は、流石の先輩の思わぬ行動には内心ドギマギしてしまい……自身の頬が思わず赤くなってしまっているのが、何となくだが分かる。
「（こういう不意打ちなのは……色々とズルいって！ただでさえ綺麗な人なのに……こ、こんな可愛い行動を、何となしに平気な顔でしてくるなんてさ！）」
と、俺は心の中でそう呟き、ドキドキと忙しない鼓動を落ち着けようと……ふと、横を通ったショーウィンドウのガラスに目を向けるとーーん？
「えっと……何で顔真っ赤……？」
「い、言わないでください！……ホントはお姉さんぶって振る舞ったは良いけれどーー後からすごい恥ずかしくなってきたなんて……そんなの色々とカッコ悪過ぎます……。」
チラリと見たそのウィンドウガラスには、なぜか俺と同じく顔を赤らめた先輩の横顔が映っており、俺がそれに反応して先輩の方をパッと振り向くとーー
どうした事かと思う程、ボッと顔を赤くした三葉先輩が自分で言った通り、とても恥ずかしがっている様子で隣に立っていてーー何というかその……色々とお腹いっぱいである。
て言うか……さっきのあの可憐な微笑みの裏で、そんな風に俺に対して思っていたのか……。
別に先輩の事をそういう風に見れない訳じゃないが、出会って初めての印象とは違い、もっと親しみやすい歳の近い同級生か同年代の友達のようなーーそんな前とは違った印象なのである。
ーーだから、あんまりお姉さんって感じではなぁ……。
とは言っても……そんな事をバカ正直に先輩に言って変に落ち込ませてしまう程、俺もそこまで空気が読めていない訳ではないのでーー
「い、いやぁ〜……。カッコ悪いなんて、そんな……。
三葉先輩はいつでも優しくて、真っ直ぐで……なんて言うか、カッコ悪いなんてそんな事……全然ないですよ？
そ、それに！そんな風にお姉さんみたいにならなくても……。今の俺たちはその……こ、恋人（仮）なんですから！無理にお姉さん振らなくても大丈夫かな……？な、なんて……思ったり、思わなかったり……？」
と、少し照れが混じってぎこちなくなってしまったが、何とか先輩の事をフォロー出来た？……ような気がする。
『今は恋人（仮）だから姉さん振らなくても大丈夫。』
ーー自分から先輩に言っておいてなんだが、思い直すとそう言う話ではない感が大いにある……。
俺はこれでフォローになったのか？と、少し不安になりながらも先輩の様子を伺ってみたところーー
「そ、そうですよね！？私たち今は恋人（仮）なんですから……別に変にお姉さん振らなくても、その……普段通りの私でもーー相太くんの前でなら大丈夫ですよね！
今は相太くんが私のーーか、彼氏さんなんですから！」
「あっ……そ、そうですね……？い、今はその……そういう関係ですからね……俺たちはそのーーねっ……？」
すると、三葉先輩は思わぬ勢いで俺の言葉に「そうですよね！」と、うんうんと頷きながら激しく同意し、無意識なのかは分からないが……繋いだその手をぎゅっぎゅっと少しだけ力を入れて、俺の手を握りしめてくる。
そして、そのような可愛らしい反応に無事死亡しかけたのはもちろんなのだがーー何より、俺の前ではいつも通りでもと言ってからの、少しだけ幼くなったような先輩の表情や態度がとても可愛らしい。
「（普段はシャキッとした雰囲気なのに、俺の前だけは年相応かそれよりも幼くなるとか……普段でも、もちろんそうなんだけど、色々と可愛い過ぎて反則かよ！）」
そうして俺はその後も、三葉先輩の自然な魅力にクラクラしながら、2人楽しく談笑をしてお互いに帰路に着いた。
そして、2人がそろそろ別れる自宅付近に辿り着いた頃にはーーそれまでずしりと胸に抱えていた重たい気持ちは何処かに消え去り、いつの間にかスッと胸の内が軽くなっていた事に気が付いた。
ーー三葉先輩が隣にいれば、俺は自然と笑顔でいられる。
そして、俺たち2人がこれからも……2人仲良く並んで歩いて、同じ景色を見続ける事が出来るのならば、それがどんな未来であっても俺はきっとーーきっとこの人の隣で俺は、これからも一緒に笑っていられると心からそう思った。
・・・
・・
・
「た、ただいまー……。ちょっとだけ遅くなったかな？」
その後三葉先輩との別れを告げ、そのまま自宅に帰宅した俺は……。そのように恐る恐ると言った様子で、自身の帰宅を告げながら、ゆっくりと重たい扉を押し開ける。
今朝から先輩と一緒にいた時には、少しだけ意識の外に出ていたが……。いざ家に帰るとなると、どうしてもーー
「（あー……。ちゃんとアイツと向かい合った時の俺はーーいつも通りの俺で静恵と話せるんだろうか……？
確かに、昼間のLINEでは『もう大丈夫。』と言ってはいたけど……。俺としては、今の静恵がどんな心境なのか、それを知る術は……直接会って話すしかないんだよな。）」
そう……それが、俺が今こんなにも緊張して落ち着かない事の一番の理由。そして俺が、こんなにも不安な気持ちでいる事の本当の理由なのだ……。
今、静恵がどんな気持ちでいるのかが分からない。それが何より不安でーーそれ故に、どのように接すればいいのかを悩んでしまっている。
ーーそんなまだ見ぬ静恵の事を色々と想像して、側から見ると杞憂だと思われる程……色んな反応を想定しながら。
とは言っても……。いつまでも、そのまま玄関で突っ立っていては仕方ないのでーーガチャリ。
「お、遅れてごめん……。ちょっと、委員会とか先輩のお見送りとか色々あって遅くなった。
先に食べて貰ってるとは思うけど……LINEもしてなかったのは悪かったーーって……えっ？誰もいない……？」
そして恐る恐るとリビングのドアを開け、中の様子を伺った俺が見たもののは……何もなかった。
ーーいや、正確には少しだけ違う。実際にはリビングには誰もいないのだが、2人分の夜食がそれぞれラップして置いてあっただけなのだ……。
「……なんだ。今はまだ静恵たちいないのか……。そういえば今朝、母さんは会社の人と飲みに行くって言ってたか？それなら……うん。そもそもここにいる訳ないよな。
それで、肝心の静恵については……うーん？今日は帰りが遅くなるとか……そんな事、言ってたかな？」
そしてこのような状況に俺は、自身のスマホを開き、静恵からそのようなLINEが来ているのかを確認してみるのだが……やはり、そのような通知はこちらに来ていなかった。
『もしかすると、何か部活の手伝いでもしていたりするのか？』と、ふとそのように俺は静恵の所在について考えてみたものの……とりあえず今の俺にはその真偽の程は分からないし、確認の仕様がなかった。
少し拍子抜けではあるが……。ある意味静恵に会うまでの猶予期間が出来て、心の準備をする時間が増えたのはーー俺にとって少しだけラッキーだったのかもしれない。
そう考えてみると、一旦ではあるが、何となく俺の気持ちは落ち着いて……ちょっとした気分転換をする目的で、お風呂にでも入ろうかとそんな事を思った。
「そうだな……。もし静恵が部活なら、もうすぐ帰ってくるはずだし……早めに風呂に入っておく事にしよう。」
そうして、先に風呂に入る事に決めた俺はカバンなど自身の荷物を部屋に置きに行き、早速お風呂に入る為、リビング横にある風呂場……その脱衣所へと向かう。
そして、俺は脱衣所に到着すると……少しため息交じりにその扉に手を掛けてーーガチャリ。
「はぁ……。ホントにこんな事でどうするんだよ……俺。
ああは言いつつ、今1番悩んでるのはアイツ自身だって言うのにーー『お兄ちゃん……？いるの……？』……へっ？」
俺は当然の如く風呂場にーーというよりも、家に誰も居ないと思い込んでいた為、突如風呂場から聞こえたその声に、思わずそんな気の抜けた声が口から漏れてしまう。
『なんで？どうして静恵が？』とそんな事を思ったが、俺は突然の妹との……それも風呂場での遭遇に動揺してしまい、思わずハッとその顔を上げてーー
「「……あっ……うわぁぁ（きゃあぁ）！！」」
ーーその時ちょうど、風呂場から脱衣所に体を半分だけ（主に上半身）を外に出した状態の静恵と、バッチリ俺は目があってしまい……このようなある意味不幸な状況に意図せず遭遇してしまったのだった……。
お久しぶりです。長らく投稿が開いてすいませんでした。
あまりまとまった時間が取れず、思いのほか話数を書けてませんが、少しずつですが投稿しようと思います。
牛歩ではありますが、執筆は続けていますので、よろしければご覧ください。
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