巴さんをからかった結果『からかわれ下手な巴さん』
土日は連続投稿しようかなって思います。
「じゃあ……早速だけどーー両校の体育祭合同開催の成功に向けて、第2回目の話し合いを始めようか。」
「「「「「「はい。よろしくお願いします。」」」」」」
ここは今回で第2回目の話し合いが行われる『第1女学院』生徒会室の隣にある大会議室。
そこには俺を含め『第1高校』からの話し合いの参加者が3名。そしてそれに対面する形で席に着く相手校の3名がその会議室にはいた。
そして、早速相手校の生徒会長ーー猫井 珠子さんの一声からその話し合いの開始が告げられ、実際に体育祭に向けての話し合いが始まるーーそう思われたのだが……。
「あっ、そうそう。始まる前に……相太くんに三葉さん。
君たち2人の今朝からのアレ、ウチの子たちからもすごい好評だったよ。それにさっき校門前でのアレも『まるで漫画みたい!』って、巴ちゃんも喜んでたし……みんなに好評だったのは何よりだよね?ねっ?」
「ぶふっ!い、いきなり何を言っているんですか!今から真面目に話し合いを始めるんじゃないんですか……?」
始めると言っておきながら、早速話を脱線させた猫井会長はいきなり俺たち2人の事を弄ってきて、さっき巴さん本人にも言われた事を改めて俺たちに伝えてくる。
まるで少女漫画みたいだったーーとか、なんとか……。
巴さんは見た目の通りーー品行方正な大和撫子といった様子なので、その彼女から『まるで少女漫画みたい』と言われた事には驚いたが……まさかそれを早速、猫井会長にも伝えていたとは……。
なので、俺は少しだけ恨めしそうなジトッとした目で、当の本人である巴さんの事を軽く睨んでいるとーー
「うっ……。な、なんですか?ホントにそう私が思ったのですから……べ、別にいいではありませんか?
それに……猫井さんが仰った通り、我が校の女子生徒からはかなりの好感触だったのですから、別にちょっとくらい色を付けてお伝えしてもよいではありませんか!」
「いえ……別に俺は何も言ってはいませんよ?それとも何です?そんな風に過剰に反応をするというのは、何かやましい気持ちでも巴さんにはあるんですか?」
「そ、それは……。ない……とは、その……言い切れませんけど……。その……うぅぅ……。」
「なんてーーちょっとした冗談で……『だって!私だって羨ましかったんです!』……す……よ?って……えっ?」
俺はちょっとした悪戯心で、巴さんの事をあえて問い詰めるような形で軽く揶揄って、その反応を見てみたいと思っただけなのだが……まさかの反応が巴さんから帰って来た。
ーーそれはもう、聞いてるこちらが恥ずかしくなる程の、言わなくてもいい事を沢山言ってしまうという……そんなびっくりなオマケ付きで。
そして、俺の『冗談』発言も耳に入っていないのか、巴さんは顔をボッと赤くしながら、早口で『俺たちの関係』が羨ましかった事について赤裸々に話し始める。
「そうです!私が相川くんたちの関係が羨ましかったから……ちょっと、相川くんたちの事を誇張してみんなに伝えて、少しでも困らせたいって思っちゃったんです!
そんな風に通じ合ってるって、そんな特別な関係がとても羨ましかったから!だからーー」
「と、巴さん!?じょ、冗談ですよ?別に俺も……たぶん三葉先輩もあんまり気にしてませんから!あのーー」
「分かってます!こんなの私の自己満足でしかないって……そんなの分かってます。……分かってますよ。あなたたちの事勝手に僻んで、勝手に迷惑をかけるなんて……私って嫌な女ですよね……こんなの、絶対に。」
と、今度は逆に、突然のマイナス思考の状態に巴さんは陥ってしまい、俺の話も相変わらず聞いてくれないのでーー色々と巴さんを落ち着けるにはどうしたものか……。
そして俺は、自分でこの状況を作っておきながら、本格的に頭を悩ませそうになってーーそうだ……!
俺はこんな事で何かを願い事するのはどうかとも思ったが、巴さんを一旦落ち着ける為だと考えて、1つだけ巴さんにあるお願いをする事にした。
「そうですね……。別に俺は巴さんの事を嫌な女だとは、そんな事全然思いませんけど、どうしても巴さんの気が済まないのであれば……1つだけお願いを聞いてもらえますか?」
「……ホント?私、嫌な女じゃない?今、1つだけお願いって言ってたけど……。そのお願いをちゃんと聞いて、それを実際に叶えたらーー私の事も許してくれる?」
「うっ……。は、はい……。もちろん俺はーーいえ、俺たちは巴さんの事をちゃんと許しますよ。
ですよね!三葉先輩?ーーお願いします。話を合わせてください……色々とこっちの方が罪悪感が凄いです……。」
「えっ?あ、ああ……そ、そうですね?わ、私も巴ちゃんの事を許します……よ?ほ、本当に……。
ーーそ、相太くん!ホントに気を付けてくださいね!ああ見えて、巴ちゃんは結構繊細な子なんですから!
普段はしっかりしてて、そんな風には見えないですけど、見ての通りーー巴ちゃんは正義感が強くて優しい子なので、色々とナイーブになりやすいんです。
だからあんまりイタズラでも、巴ちゃんの事を揶揄い過ぎないでくださいね?ーーなんと言っても、揶揄った後の罪悪感が凄い事になっちゃうんですから……。」
そして、俺と三葉先輩は2人で口裏を合わせ、なんとか巴さんの事を説得して、1つ願い事を聞いてもらう事で納得して貰ったのだが……先輩の言う通り、今後は巴さんを揶揄うような事は辞めようと、本気で俺はそう思った。
ーーしかし、上目遣いで「許してくれる?」って、こちらを見た際の巴さんが、とても可愛いと思ってしまった事は……俺の心の中だけに秘めておく事にしよう。
すると、俺と三葉先輩がこそこそと話をしているのを見たーーそこまでこちらを静観していた猫井会長が、ふと俺に目を見遣り、そのまま声を掛けてきた。
「ーーっで?相太くん?一体どんなお願いを巴ちゃんにするのかな?かな?
あっ!もちろん分かってるとは思うんだけど……そっち方面のエッチなお願いなんかはダメだよ?それ以外でーー相太くんは何を巴ちゃんに言うつもりなのかな?どうするつもりなのかな?ふふふ……。」
「いや!ちゃんと普通のお願いをするだけですから!
そんな……え、エッチなお願いなんてしませんよ!ーーというか……お願いとも言えないくらいのお願いですよ!俺が今から巴さんに頼もうとしている事は!」
やはりというか、何て言うか……相変わらずこの人は、どこか掴み所のないような態度で俺の事を揶揄い、その慌てる様子を見て楽しそうにしているのだがーー脱線した話し合いを、元に軌道修正するつもりなどは更々ないようだ。
すると、俺が言った『お願いとも言えないお願い』の言葉に、猫井会長はもちろん、三葉先輩や高木委員長も興味を持ったのかーー皆「何々?」と、こちらを興味津々と言った様子で見つめてくる。
しかし、別にその内容自体、何も面白みもない物なので……そんな変に期待した顔をされても困る。
そして、何故かお願いされる側の巴さんもーー少しだけ期待をしたような、何をお願いされるのか?と、ワクワクした顔でこちらの方を見て、俺の言葉の続きを待っている。
ーーという、ホントに何でワクワクしてるんだ……。
「ま、まあ……。そんな期待されても困りますけど、別にそんな驚く内容でもないと思いますよ?
ただーーこの体育祭で今後起こるであろう、何か問題などがあれば、そのときはフォローというか……巴さんの助力を頂けるとありがたいなっていうーーそういうお願いです。
今回の合同体育祭とか今の状況とか……俺も含めて、色々とイレギュラーな事が多いですしね……。」
「なるほど……。それならお安い御用です。ーーというよりも、そんな事でよろしかったのですか?猫井さんが言っていたような……え、エッチなお願いはダメですけど!それ以外でなら、基本的には何でもその『お願い』を、お聞きしようと思っていたのですけど……。」
そして、俺が巴さんにある意味定番の、そんなありふれたお願いをしてみたのだが……。
しかし、まさかの巴さんから返されたそれに対する返答は『なんでも言う事を聞くつもりだった(エッチな事以外で)』というものでーーな、なんか……とてつもなく損した気分になってしまうのは、一体なんでだろうか?
しかしながら、それを聞いて「じゃあ!やっぱり違うお願いで!」などとは言えない訳で……。
「そ、そうですか?で、でも俺はいざという時に、巴さんが助けてくれる事の方が……う、嬉しいですよ?ホントダヨ?
だから……申し出は嬉しいんですが、今後のフォローなどをよろしくお願いします!巴さん!」
と、少しだけぎこちなく、それでもそれまでと変わらぬお願いを巴さんに伝えたけれどーー最後には本心から、そしてきっとこの体育祭を成功させると、心の底から、俺は巴さんに今後の助力を頂きたいとお願いした。
すると、俺のそんな気持ちが伝わったのかどうかは分からないが、巴さんは笑顔で力強く「はい、任せてください!」と、そう俺に伝えてくれたのだった。
そして、始まりから脱線し続けていた話し合いは、その後ようやく元の体育祭についての話し合いに戻りーー両校の生徒たちのそれぞれの反応について、その後の話し合いに続いてゆくのだった……。
ご覧頂きありがとうございました。今回もそうですが、事務的な話し合いの一部を除いては、基本的に登場人物たちのセリフか回想のみになるとは思います。
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