体育祭に向けて『俺の先輩が可愛すぎてヤバイんだが……。』
1日開けての投稿です。
「じゃあ、体育祭の準備に向けて本格的に動いて行くからーーとりあえず、この後私と1年の相川くん、それに2年の大岡さんは『第1女学院』に向かいましょう。あちらの方で、各項目の説明と概要の話し合いが行われるとの事なので……。
そして、その他のメンバーは各自予め決められた所定の作業に、早速取り掛かってください。では、解散。」
今年度合同体育祭に向けて、本格的に動き始めた委員会メンバーが集う視聴覚室。
俺たちーー先日『第1女学院』を訪れたメンバーである俺こと、相川 相太とその先輩にあたる大岡 三葉先輩は体育祭実行委員長である高木委員長の指示を受け、作業に取り掛かる生徒たちを他所に2人待機していた。
2人少しの雑談を交えながら、今回の体育祭について……今後のあちらの動向なども踏まえながら、色々と話し合っていたのだがーーどうにも周りからの視線。それも数多くこちらに集まる好奇の視線が気になってしまう。
「ーーですから、私たちもあまり気負いし過ぎないようにしましょう。たしかに今回あちらから提示された提案は驚くべきものでしたが……それを理由に思い詰めていても仕方がありません。
私たちは私たちのペースで。あくまで自然な形で今回の提案をーーって、相太くん？どうかしましたか？そんな風にキョロキョロして……？誰か知り合いの方でも、こちらの委員会にいらっしゃったのですか？」
「い、いえ……。別に知り合いがいたとか、そういう訳じゃなくてーーただ、俺たち目立ってるなって……。
いや！別にそれが嫌だとそういう訳じゃないんですけど、なんか変な気分になっちゃって……。
って、ごめんなさい。気にし過ぎるなって先輩から言われたばっかなのに、変な事気にしちゃって……。」
やはり、この委員会でも俺たちの注目はかなりのもので、2人で視聴覚室に入った際も様々な視線に晒されたのだ。
それは好奇の視線もあったが、中には温度の低いーーあまり気分の良いものではないものも存在したのだ。
だから聞かれるがままに、素直に居心地が悪い事を三葉先輩に伝えたのだが……これは良くない。
そもそも、こうなる事はあちらの提案に乗った時点で分かりきっていた事だし、何より不必要に先輩が心配するような事を自ら言ってどうするんだ……。
俺は自分の軽率な発言に反省しつつ、あまり気にして欲しくないと、そう先輩に伝えようとしたのだが……。三葉先輩からの返答は意外にもそれに肯定的なものでーー
「まあ……それは仕方のない事ですよ。相太くん。
皆さんその手の話には敏感ですし、私と一緒にいれば自然とそうなってしまうので、それも仕方のない事です。
なので私は、別に相太くんのその発言も特に気にしていませんよ？ふふ、でも心配してくてありがとうございます。」
と、三葉先輩はそう言うと、ホントに気にしていないといった様子で「ふふふ。」と優しく微笑む。
その見惚れそうになる程の綺麗な横顔に、俺は思わずゴクリと生唾を呑んで、そのまま何も言えずにいるとーー
「はいはい！そこのお2人さん？相川くんも見惚れてしまう気持ちも分かりますが、今は自重してくださいね。
あと、こちらの準備も出来ましたので……今から3人で『第1女学院』へ向かいましょうか。」
そこへ話し合いを終えた高木委員長が苦笑気味でやって来て、『第1女学院』へ向かう準備が出来た事を俺たちに知らせてくれる。ーー三葉先輩の事を見つめ過ぎな俺を、優しく嗜めるという恥ずかしいオマケ付きで。
それには思わず自身の顔が熱くなるのを感じるが、これに関しては完全に自業自得だ。
そうして俺と三葉先輩ーーそれに高木委員長は、予めみんなに伝えた通り、視聴覚室を出て『第1女学院』へと向かった。そして、先日に続き2回目の『第1女学院生徒会』のメンバーと犬神体育祭実行委員長に出迎えられた俺たちは……全く予想していなかった、あちらでの俺と三葉先輩への注目の多さに圧倒されるのであった……。
・・・
・・
・
ーーーー第1女学院・学園周辺ーーーー
「ねぇ……あれが会長の言っていた相川さん？」
「え、ええ。きっとそうね。それに隣にいるあの女性。猫井さんが言っていた通りーーいえ、言っていた以上にとても綺麗な方が例の男の人と一緒に訪れると聞いているし、おそらく彼がその相川さんで間違いないはずよ。」
「うーん……。たしかにウワサの彼女は、聞いていた通りすごい可愛いんだけど……。巴姉さんから聞いてた通りーーなんか地味だね……隣の彼。」
「そうかな？私、ああいう大人しそうな男の人って結構好きだよ。ほら、大人しそうな男の人程意外と積極的ってーーあの漫画でも描いてたじゃない？
だから……意外と彼にも、そういうところがあるかもしれないよ？隠れた肉食系みたいな感じで！」
「「「…………。先を急ぎましょう（か）……。」」」
そろそろ『第1女学院』が近付き、その制服を着た女生徒たちが増え始めたーーそんな学院までの道中。
俺と三葉先輩は多くの女子生徒からの視線。学校でもよく受けた視線に似た好奇の視線を、その道中でも数多く受けたのである。
しかし、自分たちの高校と違うのはその視線の種類だ。先程の女子生徒のように若干失礼な事を言っている人もいるが、その視線自体は興味深いものを見る目であり、こちらに否定的なものではないという事である。
そして、それら視線やその声色に共通して言えるのはーー
「（若干だけど、俺たちを見る目に羨望……みたいなものを感じるのか？多分、男が珍しいって感じではあるんだけど、何処と無くこっちを羨ましそうな目で見てるんだよな……みんな揃って、ちょっと不思議な事に。）」
やはりというか、なんというか……。どんな女の子もみんな、男女のそういう関係については憧れがあるようでーーその相手が俺みたいな平凡な男でも、彼女たちからは羨ましいものに見えるみたいだ。
そして流石女子高なだけあって、中にはとても綺麗な人もいて、その美人さんもこちらに羨まし気な視線を送っている状況に、なんだか不思議な気分になっているとーーギュッ！
「－－っ！三葉先輩！？ど、どうかしましたか？」
「いえ……。なんだか、周りの女性たちが相太くんに熱い視線を送っている気がしまして……。
ちょっとだけ、周りにそういうアピールをしようと思いましてーーはっ！で、でも別におかしくはないですよね！？今の相太くんは……私の彼なんですから！」
突然、隣を歩く三葉先輩が俺の腕に抱きついたかと思うと、そんな……まるで本物のそれのような発言を少しだけテレた様子で言ってーー途中で自らの発言が恥ずかしくなったのか、その正当性を自ら食い気味に主張している。
ーーしかしそれによって、それまで以上に周りからの好奇の視線が集まる事も知らずに……。
そしてそれを間近で聞いて、尚且つ公衆の面前（好奇の視線を向ける女の子たちの前）でギュッと先輩から腕を抱き寄せられたところの、俺はというとーー
「（いや……なんか色々と先輩が可愛すぎてヤバイんだけど……。そのテレた顔からそんな可愛らしい言い訳を言うのはーーホント反則だって……。
普段から可愛い人がこんなセリフをーーそれも今だけは俺の大切な彼女として、そんな冥利に尽きる事を言ってくれるなんて……。そんなの隣で言われたらーー）」
そんな風に内心、心臓がバクバクで、今すぐ三葉先輩の事を抱きしめたい衝動に駆られるが……ここは一旦落ち着け。
周りに人がたくさんいて、それが恥ずかしいというのはその通りなんだが、それ以上にーー今ここでそんな事を先輩にしてしまえば、周りからの男の（俺の）評価や先輩を含めた俺たちの印象までもが悪くなってしまうかもしれない。
それはーー今回のあちらからの提案にも反する事だし、何より、先輩とのこの関係はまだ本物のそれではないという事を忘れてはならない。
そしてそこまでを、あまり働かない頭で何とか考えた俺ではあったが、それでも……三葉先輩だけに恥ずかしい思いをさせてはいけないと、そう思ってーースッ……。
「あっ……。」「……今はこれで許してください。」
俺は先輩に抱き寄せられた腕をスッとそこから引き戻し、それと同時に先輩の右手を軽く包み込むような形で握りしめる。－－それは俗に言う所の『恋人つなぎ』で。
そして、繋いだ手から伝わる体温が、自身のものか……それとも先輩のものか……。それが自分でもイマイチ分からなくなってきたーーそんな時。
「－－あの……。私の存在を……完全に忘れてはいませんか？相川くんに大岡さん。
色々と言いたい事はありますが、それよりもーーホントにお2人はまだお付き合いされてないのですか？
あの時は、大岡さんがハッキリと否定していましたが……実は？……みたいな、ホントはそんな感じで。」
背後からヌッと俺たちの前に回り込んだ高木委員長はそう言うと、普段の知的な様子からは考えられないような、そんなわくわくした目で俺たち2人の顔を交互に見る。
そこには、俺たちを揶揄おうとか……そんな意思はなく、ただ純粋に詳細を知りたい。－－1人の女の子として、恋バナを聞きたい。そんな好奇心にも似た、女性としての本能的な興味がそこにはあった。
そして、俺たち2人はその問いになんとも言えず、どう言えばいいのか、2人顔を赤くして答えに窮しているとーー
「んん！それくらいでいいですか！あなたたち！
校門で待っていても、何時まで経ってもこちらに来ないと思ったら……。まさかこんな所で……。そ、その……イチャイチャしていましたなんて！
大変甘酸っぱくて、まさに少女漫画みたいでーーそのまま、見ていたい気もしましたけど……。こ、この後の話し合いの事も考えてくださいな！特にその微笑ましく手を繋いでいるお二方！あなたたちですよ！」
すると、どこからともなく現れた巴さんーーわざわざ、何時までたっても来ない俺たちを迎えに来た『第１女学院』生徒会副会長の橘 巴さんが、そう言って顔をほんのり赤くしながら、俺たちを注意するのだった。
そうして、そんなドタバタがありながらも、無事『第1女学院』に着き、今後について両校2回目の話し合いを行うのであった……。
ご覧頂きありがとうございました。
これからも、楽しんで頂けるように執筆を頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
