短話『お弁当による込めた想い』
題名の通り、すごい短いです。
「ふぅ……。なんとか間に合った……か?急いで帰ってきたしなんとかーーまあでも、まさかあんな的確なタイミングで本鈴が鳴るとは夢にも思わなかったけどな……。」
昼休みの本鈴が鳴り終わったーーちょうどその1・2分後の教室。
俺は思わぬ屋上での邂逅の後、三葉先輩たちと一緒に屋上を後にし、急いで自身の教室に帰って来たのだ。ーー授業に遅れてしまったと、そう思って。
しかし、慌てて教室に辿り着いた俺が見たのは、普通に楽しそうにお喋りをしている女子たちや、ふざけてお互いジャレあっている男子たちであった……。
俺は不思議に思い、近くにいた男子に尋ねようとしてーー
「(あっ……。そういや、5分だけ休み時間延長されてたんだった……。あのときは、たった5分増えたところでとか思ってたけど、今回はある意味では助かったのかもな。)」
ふと、休み時間がいつもより5分だけ延長されていた事を思い出しーー少しだけ……そして色んな意味でホッとした。
そして、俺はなんだかその事に安心してしまい、教室の扉の前にぼーっと突っ立ているとーーピロン♪
「ん……?こんなタイミングで誰からのLINEだ?えーっと……えっ?静恵から……?なんで……?」
突然、俺のスマホが鳴ったかと思い、LINEを確認してみるとーーそこには静恵からの通知が……。
しかし何故だろう……?なんだか今朝の事もあって、その文章を見るのがとても不安だ。
だが……いつまでも静恵からのLINEを怖がって、それを見ないわけにもいかないのでーー俺は恐る恐るといった様子で、そのLINEに書かれている文章を確認する。
すると、そこに書かれていた静恵からの文章に俺は思わず「ぶは!!」と、驚きのあまり吹き出してしまい、クラスメイトから変な目で見られてしまう。
しかし、俺はそれらの視線にも気にならないくらい驚き、そしてなんだか恥ずかしい気持ちになっていてーー
「(だって!こんなの書いてくるなんて……。色々と反則過ぎるって静恵!マジで!!こんな、こんなーー嬉し恥ずかしい事を普通にLINEで書いてくるなんて!)」
俺は自身のスマホを握り締め、我ながら気持ちの悪い表情をしていると自分でもなんとなく理解する。
なぜなら、静恵からのLINEには今朝の出来事についての説明と昼間のハートのお弁当の件についての説明が、赤裸々にその心情を含め書かれていたのだ。
ーーそして、静恵からのLINEはこんな感じだ。
『今日の朝の事について、お兄ちゃんにちゃんと話したいと思っていたんだけど、お兄ちゃんが委員会で忙しくなると思うし、LINEでお兄ちゃんに私の気持ちを伝えておくね?
まずはーー今朝、せっかくの三葉さんとの初めての登校だったのに、私の感情が昂ぶって、突然みんなの前で泣いちゃったのは本当にごめんなさい。
突然の事で、お兄ちゃんも三葉さんもビックリしたと思うけど……あのときは2人とも、あまり突っ込まないでいてくれてありがとう。三葉さんにはお兄ちゃんから『ありがとう』って伝えておいてくれると助かるかな。』
それから2トーク目に続いてーー
『っで……。話は今朝の涙についてだけど……あのとき私が泣いちゃったのは、お兄ちゃんが三葉さんに取られたみたいに感じて、それが悲しかったっていう気持ちはたしかに心の中にあったんだけど、それ以上にーー私の居場所がなくなったみたいに、お兄ちゃんに私がもう必要なくなったみたいに感じちゃってーーそれで思わず泣いちゃったんだ。
でも心配しないで……って、そう言ってもお兄ちゃんはきっと私を心配してくれるから、敢えてそうは言わないけど……勘違いしないで欲しいのは、それだから私をもっと構って欲しいってーーそういう事じゃないんだ。
ホントに私が願うのは、お兄ちゃんがこれまで通りの静恵の大切なお兄ちゃんでいてくれる事、それが私のーーお兄ちゃんの妹である私からのお願いなんだ……。』
と言った感じで、今朝の登校の際に起きた自身の感情の変化について、事細かにーーそして、少しの寂しさを滲ませながら、静恵は俺に向けたLINEにそのように書き記していたのだった……。
俺はそこまで読んで、今後どうしていくべきかを思い悩みそうになるが……まだその下に、もう少しだけ文章が続いていたという事に気がつく。
なので、俺がその続きを読み進めてみるとーー
『P.Sーー今日のお弁当のアレ。本当は冗談半分というか……面白半分でハートのお弁当にしてみたんだけど……。
なんて言うか……まだ私の方が三葉さんよりもお兄ちゃんの事をよく理解してるって言うか、まだ私の方がお兄ちゃんの隣に相応しいって、今の私の中ではそう思ってるからーーせめてもの、三葉さんへの抵抗として……また私が定期的にお兄ちゃんのお弁当を作る事にするね?
あっ!もちろん、またハートのお弁当も作るよ!お兄ちゃん♪それも含めて……今後は色々と覚悟してね?』
と、なぜか静恵は三葉先輩に対抗する姿勢を見せており、今後も俺のお弁当にハートを定期的に投下していいか(する事)を確認(宣言)してくる。
自ら俺の弁当を作ると申し出てくれるのは嬉しいのだが、あんまり、ハートのお弁当を作られるのは困る。
流石のそれには俺も苦笑気味で、『ま、まあ、とりあえず……色々とお手柔らかにお願いしたいかな?』と、控えめな文章をLINEで静恵に送り返したところーー
『うん!一葉ちゃんと一緒に、私も三葉さんに張り合えるように頑張るから……楽しみにしといてね!お兄ちゃん♡』
なんとも不安を覚える文面が、おそらく向こうは授業中にも拘らず、ホントに最速と思われる速度で返信されてくる。
たしかに、あっちの授業時間を考えずにいきなりLINEを送ったのは、確実に俺の方が悪かったが……。そんなに早く返信をーーそれも兄のLINEに『♡』を送り付けるのは、色々と兄として心配になってしまう。
「(静恵が俺の事を好いてくれる事は素直に嬉しいんだが、兄としては妹の今後が若干不安になるんだよな……。
今朝みたいな悲しい想いを、今もしていないというのはよかったんだけど……思いのほか天然な一葉ちゃんと一緒に頑張るって文言が普通に怖いんだよな……。
ーー主に、心臓に悪い事を突然してきそうで……。)」
俺はそんな不安ととりあえずの一安心を同時に味わいながら……5分の延長休みを終えて、俺は次の授業をなんとも言えない気持ちで受講するのだった……。
これでストックは最後ですが、これまでご覧いただきありがとうございます。
なぜか、多くの方々に見て頂けているようで、作者自身とっても驚いています。
この後も完結に向けて執筆を続けますので、この後も見て頂けてると嬉しいです!
よろしければ、ブックマーク・評価をお願いします!




