2人の副会長『素直な人には誠実を』
大変長くの間、こちらのサイトに投稿していませんでした。それまで読んで頂いていた方には、大変申し訳ありませんでした。
理由に関しては、モチベーションやリアルの方の重圧などもあり、結果的に投稿を行う事をしていませんでした。申し訳ありません。
冒頭で長々と自分語りをしても仕方ありませんので、よろしければご覧頂けると幸いです。
「あっ!そういえば巴ちゃん、未来ちゃん。アタシたち先にお茶して待ってたから、相太くんとのお茶請けにお菓子とか紅茶とか勝手に使っちゃったけど……まあ、いいよね?足りなくなった分はアタシが買い足すつもりだし。別にいいよね?ねっ?ね?」
「「……は、はい……。珠子さん(ちゃん)……。」」
生徒会室に遅れて到着した女生徒、おそらく副会長であろう両名に向かって『第1女学院』猫井生徒会長がそのように問いかける。
彼女のその話し方自体は、会長らしからぬ緩い口調で気の抜けるようなものであったが、自身の意思を明確に表示・伝達しており、そのハッキリとした態度はやはり一高校の生徒会長なんだと、改めて実感させられる。
「(ていうか……猫井生徒会長がさっきの会話でも使った『ねっ?ね?』って、同意を求めるその言葉が恐ろしいんだが……。実際に話をして本性を知っているだけに、その言葉の圧を物凄い感じる。
パッと見ニコニコしているだけに、そのギャップがまた恐ろしいもんだ……。)」
と、俺がそのように考え、改めて猫井生徒会長が抱える二面性に対して戦々恐々としていると……
「じゃあ……そろそろ体育祭の事について話し合おっか?
今は放課後で、あんまり時間に余裕がない事だし……。
じゃあみんな、それぞれ席について?『第1女学院』側と『第1高校』側に分かれて、向かい合うような形にして。」
と、猫井生徒会長はその顔を真剣なものにして、本来の目的である話し合いを始めようと、そう呼びかける。
その言葉にはみんなからの異論などはなく、会長の指示通りにそれぞれ自身の席に着く。
「(猫井生徒会長とはそれ程悪くない感じだったけど……気を抜かないように頑張ろう。
なんとしても……。高木委員長や犬神さんたちからの期待にしっかり応えてみせる!)」
と、俺はそんな決意を胸に話し合いに挑むのだった。
ーーーー10分前・生徒会室にてーーーー
ここは『第1女学院』生徒会室。今年の体育祭の合同開催に関して、色々と問題が発生したため、俺は今回こちらの学園にお邪魔していた。
そこでこちらの学園生徒会長、猫井 珠子生徒会長と俺が副会長両名の到着を待つため2人雑談をしていたところ……突然扉からノック音と複数人の女の子たちの声が外から聞こえてきた。
そして猫井生徒会長がその声に反応し扉をガチャリと開くと、そこには4名の女生徒の姿があった。
そのうち2名は俺と同じ『第1高校』の生徒……。1人は『第1高校』体育祭実行委員長である高木 優菜。
彼女は今期体育祭実行委員会で初めて知り合った方で、三葉先輩と同じ2-Dの先輩。ここに来るまでの道中、さまざまな先輩とお話をさせてもらったが、普通に真面目で親しみやすい人……そんな印象であった。
だから、今回初めての体育祭実行委員長らしいので、出来る限り俺の手伝える事をしていきたいとそう思う。
そして、もう1人の同じ『第1高校』の生徒。個人的には、まさか一緒に付いてきてくれるとは思っていなかったけれど、自分から「相太くんを手伝いたい。」と言って一緒に来てくれた……そんな頼りになる、優しい先輩……。
我が校の5人の最も美しい姫として例えられている学園の『五美姫』。
そのうちの『三』を表すとされる三つ葉の華……学園屈指の人気と美貌を誇る大岡 三葉先輩その人が、今回一緒に『第1女学院』に来てくれたもう1人の同行者なのだ。
三葉先輩に関しては、言葉で言い表せないほどの想いが俺の中にはあるのだが、ただひとつ言える事があるとするのなら……その存在はまさに聖母そのものと言った所であろう。
その穏和で包容感のある雰囲気もさる事ながら……なんと言っても1番に目を惹く、三葉先輩最大の特徴である……
「あ〜!カレシくんがミツバちゃんをエッチな目で見てる〜。カレシなのにイケナイ子だぁ〜。
ダメだよ〜。女の子はカレシくんが思ってるよりも、エッチな視線にはとっても敏感なんだから〜。」
と、三葉先輩を横目でチラチラ見て、ぼーっとしていた俺に突然そのような声が掛かった。
俺はその声に驚いてそちらを見ると、こちらを見つめる2名の副会長のそれぞれ違った視線が……。
1人はニヤニヤとイタズラを注意しながら楽しむような、そんな視線を。
もう1人はキッと眉を寄せて、少し怒ったような……何処か俺を睨むような形で、両者それぞれ異なる視線を俺に向けてくるのだった。
そして、その視線に戸惑った俺が「ど、どうしましょう……?」と三葉先輩の方を伺うと、俺を睨んでいる方の女の子が、俺と三葉先輩の視線の間に割って入るような形でスッと割り込み……
「三葉をいやらしい目で見るのはやめなさい!
三葉の彼氏か知らないけど……。そ、そういうエッチなのは絶対にダメなんですから!
もし、どうしてもって、アナタが言うのなら……。わ、私の胸を見なさい!三葉の代わりに!ほ、ほら!」
と、そう言って自ら俺の方に近づいてくると、「ど、どうよ!つるぺたでしょ!可哀想でしょ!?」と、何故だかヤケクソ気味にそう言って俺に詰め寄り、自らの発言に半泣きになっている……。
そして、彼女は自らの胸を見せつけるようにアピールして、俺と三葉先輩の間に割って入っているのだが……
「(み、三葉先輩の冷たい視線が……!この人が勝手に俺に見せつけてきているだけだけど、何故だか三葉先輩はこの状況が面白くないみたいだ。現にフグみたいに頬をぷーっと膨らませて、自身の不機嫌な気持ちを表してる……。
初めに俺が三葉先輩のを見ていたのは悪かったけど……この展開はどうしようもなくないか!?)」
俺は内心そのような気持ちで、三葉先輩からの冷たい視線に動揺していたのだが、意外な事にそれらへの助け舟は思わぬ人物から出された。
「まぁまぁ……。落ち着いてね?巴ちゃん?未来ちゃん?
相太くんは別にそんな意味でその子の事を見てた訳じゃないと思うよ?
それに巴ちゃん?アタシはそんな風に相太くんを困らせたらダメだと思うな。ちゃんとみんなの気持ちを考えて、具体的には後ろのその子の事も考えてから行動して欲しいかな。
あっ!あと、男の子に自ら体をアピールをするのはちょっとはしたないよ?そこも含めて気をつけてね?っね?」
と、膨れていた三葉先輩を横目に猫井生徒会長は、貧乳副会長もとい『巴ちゃん』の事を嗜める。
確かにその『巴ちゃん』という響きは、なんだか可愛らしくて、ロリッ子体型なこの人にピッタリなのだが……俺はこの人と知り合って間もないし、心の中でだけ『巴ちゃん』と呼んでおこう。
あと「相太くんはそんな意味で見てた訳じゃない。」と言った辺りで、猫井会長がチラリとこちらを見たのは……まあ、これは貸しだぞって意味だろう。
猫井生徒会長に貸しを作るのは少々怖いが、とりあえずは『巴ちゃん』を抑えてくれたので助かった。
すると、猫井生徒会長に窘められた形となった『巴ちゃん』はボッと顔を赤くして
「す、すいません!猫井さん!それに三葉も。私、つい暴走しちゃって……。三葉がいやらしい目で見られていると思うと居ても立っても居られなくて……。
その……相川くんにもごめんなさい。猫井さんが言ってたのもあるけれど、本当に不快な視線であれば三葉本人がちゃんと声を上げているわね。
改めて、突然疑ったりしてごめんなさい……。」
と、少しだけしゅんとした顔でこちらを見て、そんな謝罪の言葉を俺と三葉先輩に述べる。
俺はそんな彼女の様子を見て、人は見かけや雰囲気によらない物だと思った。
その雰囲気や立ち振る舞いから、気の強い女性で自分から謝ることなんて絶対にしないと勝手に思っていたのだ。
しかし実際には謝るところはちゃんと謝る、自分の非は素直に認める……そんな真っ直ぐな人であった。
そして謝る彼女の隣で、ほわ〜と謎の言語を呟きながらその様子を眺めていた『未来』と呼ばれていた方のもう1人の女の子は、周りの視線が自分にも集まっている事に気がつくと……
「ほよっ!?な、なにかな〜?みんなしてそんなにコッチの方を見て……。ミクは失礼な事なんて、何も言ってない……う、嘘です〜!ご、ごめんなさぁい〜!
ミクもカレシくんに色々失礼な事言っちゃいました〜。」
と、彼女はあわあわしながらも俺にぺこりと頭を下げて、そのような謝罪をしてくる。
その様子を含め、先程の『巴ちゃん』の謝罪もある事から、俺は慌てて2人に顔を上げてもらう。
「お2人とも顔を上げて下さい!俺は気にしてませんから!
未来さんも巴さんも三葉先輩の事を心配して、それぞれ声を上げてくれたんです。それを理解こそすれ、別に謝ってもらうような事じゃありませんよ!それにお2人のそんな心配する気持ちも理解出来きますしね……。」
と、本当に先程の発言を気にしていない事と同時に、彼女たちの考えへの理解を示す。
今回は体裁上と猫井生徒会長のフォローがあって、ありのままの真実は2人に伝えない事にしたのだが……なんだか罪悪感がすごい。
おそらく、三葉先輩を心配した事や素直に俺に謝罪した事などから考えて、2人はとても素直で純粋な人たちなのだろう。
そんな純粋な人たちにあまつさえ嘘をついて、その嘘の内容が三葉先輩への下心だなんて……。
そして彼女たちの性格や態度から考えると、もしかすると今回の合同体育祭への抗議も、他の女子たちの不安な気持ちを心配した結果だったのかもしれない。
俺はそんな事を思いながら、顔を上げた2人の様子を伺うと、2人はスッと俺の前に立ち、先に『巴ちゃん』の方からこちらに手を差し出して……
「相川くんの寛大な対応に感謝します。それと遅ればせながらになったけれど自己紹介をするわね?
私は『第1女学院』生徒会副会長の橘 巴よ。学年は猫井さんと同じ2年になるわ。
今回は、あまり明るい話題を話す事にはならないとは思うけのだけど……。今日はよろしく。相川 相太くん。」
「あっ!はい!こちらこそよろしくお願いします!
えーっと、橘さん?いや……橘先輩?」
「ふふふ。別に下の方の名前で呼んでも構わないわ。というか、むしろ下の方の名前で呼んで頂戴。
特に橘さんという呼び方は色々とややこしいからね。」
「え?それってどういう……。」
俺は巴さんが言っている事の意味が分からず、思わずそのように聞き返すと
「これは私が……。いえ、ここは未来に任せるわね?
あなたも自己紹介はまだだったはずだし……。」
と、その隣でぽーっとしていた未来さんに話を振る。
すると、突然話を振られた未来さんはあわあわしながらも、今度はしっかりと巴さんに応える。
「う、うん!ミクも自己紹介、ちゃんとするね〜?
ミクは『第1女学院』生徒会長副会長の橘 未来だよ〜!ミクの事は気軽にミクって呼んでね〜
巴ちゃんの後になっちゃったけどぉ……ミクたちを許してくれて、ホントありがとね〜
ミクもカレシくんと同じ1年生だから、1年生同士、一緒に仲良くお話しようね〜」
と、相変わらずほわほわとしたのんびりな口調で未来は俺にそう言うと、巴さんと同じように俺に手を差し伸べて来る。
俺は2人の手を取ってそれぞれ握手してから、改めて2人が男性に対して嫌悪感を持っていない事を理解した。
先程考えた予想がもしかすると正しかったのかもしれない。……この2人が体育祭に反対しているのは、他の生徒からの声に応えただけではないか?という話だ。
当初の予想では、女子校特有の男子生徒に対する嫌悪感や畏怖、それらを2人の副会長が持っていたり、それに同調する声があったため、今回反対の意見が問題となっているのだと俺は思い込んでいた。
しかし実際に2人と話をして、その態度や言動を見る限り、そのような事実は存在しない事が分かった。
なので、コミュニケーションによって彼女たちを説得するという、最初のハードルはクリアできた訳である。
「(思わぬ誤算ではあったけど、ちゃんと話し合いが出来る相手で本当によかった……。
話し合いはどうなるのか、まだ分からない感じだけど……とりあえずは、こちらの対応次第って感じだな。)」
俺はそんな事を考えながら、2人と簡単な自己紹介などをしていると、「あっ!そういえば……。」と言って、巴さんが話を切り出す。
「相川くんにはまだお茶も出してなかったわね。
三葉にはここに来る前、お茶とお菓子を出して、少しだけお話をしていたのだけれど……。
ごめんなさい。今からでも軽い紅茶を用意するわね?」
と、そう俺に話しかけてきた巴さんは、俺が猫井生徒会長から紅茶を出された事をまだ知らないみたいだ。
その事を知らない巴さんは、先程紅茶の置いていた位置に目を見やり、そこにあったはずの紅茶をキョロキョロと探して……
「あら?確かそこに、後輩の子たちから貰った紅茶のティーパックがあったはずなのだけど……。どうして、そこに見当たらないのかしら?」
と、そう言いながら紅茶が元々置かれていた周辺をガサゴソとあさり、「どこにいってしまったのかしら……。」と、困り顔でそのように呟いているので
「あ、あの!お気遣いはありがたいんですが……俺は大丈夫ですよ?さっき紅茶を出して貰いましたから……。」
と、俺はそう述べて、巴さんに紅茶の用意は不要であるという事を伝えたところ
「そうなの……。じゃあ、紅茶を出す必要はないわね。
さっき出して貰ったというのなら、今も特に喉は渇いていないーーって、えぇ!?だ、誰に出して貰ったと言うの!?ま、まさか……。猫井さんが自らそれを?」
と、俺の話を聞いた巴さんはそんな驚きの言葉を口にする。
はじめは落ち着いた様子で俺の話を理解していた巴さんは、俺が猫井生徒会長から紅茶のもてなしを受けたということを暗に理解して、そのことに対し驚きを隠せないようだ。
意外なことに、俺の話にはミクもびっくりした顔をしているというのも印象的だった。
そして2人の何やらただならない様子に、俺は思わず何も言えないでいると、猫井生徒会長が巴さんとミクに「あっ!そういえば……」と、声を掛けたという訳である。
そうして、俺たちの話し合いがこうして始まった訳であるが……まあ結論から言おう。
話し合い自体はちゃんと纏まった。纏まった事は確かなのだが……一筋縄ではいかなかったとだけ言っておこう。
とりあえず、話し合いの中身については後半に続くーー
更新が途絶えてしまい申し訳ありませんでした。
何度も止まっているので、説得力はないのですが、これからも執筆の方は続けたいと思っています。
まだ1度も物語を完結まで書けた経験がないので、それも含め、完結まで書いてみたいと思います。
そして、もしよろしければ、本作を少しでも多くの方に読んで頂けると幸いです。