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体育祭実行委員『思わぬ呟きは勘違いのもと、その勘違いはドキドキのもと』

かなりお久しぶりです。


リアルでの試験日程によって、小説の投稿が行えませんでした。

残り試験があと1日分だけなので、1話分だけなんとか投稿しました。


夏休みはそれなりに投稿頻度が上がるとは思います。

 

「『また後で』って……、三葉先輩は言っていたけど。

 もしかして先輩。どこかで俺を待ってるって意味なのか?

 先輩にも何か用事があって、帰る時間が大体俺と同じくらいになるとか、そういう感じの事情で……。」



 俺は三葉先輩から先程送られてきた返信の文面を思い浮かべながらそんな事を考えつつ、視聴覚室に向かって歩いていた。



 本日の昼休み、俺が三葉先輩や一葉ちゃんと一緒にお弁当を食べに行っている間、1-B内での体育祭実行委員が決定されていた。


 西田の説明によると、生徒会からの催促があり、その場の多数決で俺に決まったようなのだが……


 西田の説明もあり、事後承諾という形ではあるが、俺から実行委員になるという事を正式に了承した。



 そして、実行委員の集まりが放課後行われるという事が決まっており、その集まりに参加するべく、放課後先輩を迎えに行く事が出来ない旨を伝えた訳であるが……


 先輩からのLINEには『分かりました。また後で会いましょう。』と書かれていたのだ。



 それが何を意味するのか?その文面からは読み解く事は出来なかったのだが……


 まあ、『今日は一緒に帰ろう』という事を言っているのだけは確かなのだろう。



 俺はそんな事を考えながら、そのまま廊下を歩き続けていた所、ようやく視聴覚室が見えてきた。


 そして視聴覚室の扉に近づくと、中からは集まって来た人たちの声が聞こえてくるので、もう何名かの生徒はすでに到着しているのだろう。



 俺はそこで、もう中に入ってしまうかを一瞬だけ逡巡したが……



「(いつまでも、ここで立ち止まってる訳にはいかないし……。サッサと中に入って、体育祭の資料にでも先に目を通しておくか。)」



 と、俺はそう思い少しだけ重たい扉をグイッと押し開ける。


 俺は少し空いた扉からヌルリと中に入り、まだあまり埋まっていない席を選んでそこに座る。



 ワイワイ……ガヤガヤ……



 皆の話し合う声が聞こえる。


 おそらく仲の良い友達や知り合い同士お喋りをしているのだろう。


 少し騒がしいが、全く誰も話さないシーンとした空間よりは何倍もいい。



 俺も誰かと話したいが友達と誘い合って委員になった訳ではないので、知り合いはおそらくいない。


 少し寂しい所だが、先に体育祭の資料にでも目を通しておこう。



「えっと……なになに……。今年の体育祭は他校と合同で行います。これまで以上の最大規模での体育祭となりますので、今回は体育祭実行委員会と生徒会、その両方が連携して準備や運営に関わっていきます。

 なので、本体育祭の準備・運営は他校の生徒を含む班ごとに分かれて行う事としていきます……って!えぇ!?」



 と、俺はその資料の冒頭の数行、そのとんでもない文言を見て驚きの声を上げた。


 周りの数人が少しだけこちらを見てきたが、この驚きの前ではそれもあまり気にならない。



「(だって、他校と合同の体育祭だぞ!?普通に考えてとんでもないことだろ!

 そして何よりも……そんな体育祭の実行委員になっちゃったのかよ!俺は!)」



 まさかこれ程までのイベントとは思わず、言われるがまま実行委員になってしまったが、正直この資料を見て迂闊に了承するんじゃなかったと少し後悔してしまった。


 他校と合同。それも生徒会と協力して行うレベルの大規模なものを行うことになるとは……。



 そうして俺は、今更どうしようもない事だが大変なことになってしまったと思い、資料片手に頭を悩ませていると



 ザワザワ……ザワザワ……



 突然視聴覚室の前の方にいた生徒たちが、俄かにざわめき始めた。


 その声は先程までの雑談とは違う、なにかをウワサするような……そんな声色だ。



「ん?なにかあったのか?」



 俺は騒がしくなった生徒たちの声に反応して顔を上げてみるが……、前にいる人影が邪魔になっていて、その原因をここからは確認する事は出来ない。


 だが、どうしてざわめいているのかと疑問に思った俺は、その理由を知るべく耳をすませてみると……



「え!?なんで三葉さんがここに?」


「お、おい!大岡先輩って体育祭実行委員だったのか?」


「マジかよ……。俺実行委員をやらされただけだったけど、普通にラッキーだったじゃねーか……。」


「あたしこの体育祭を機に、大岡さんと仲良くなりたい!」



 と、男女問わずそんな困惑と歓喜の声が聴こえてきて……。


 あろう事か、それらの声がだんだんと俺の元に近づいて来ているような気がする。


 というか、近づいて来ていた……。



「な、なんで……三葉先輩がここに……?」



「私()相太くんと同じ、実行委員の1人だからですよ?」



 と、俺は思わず目の前に現れた女性……皆が騒ぎ出した原因である三葉先輩その人にそのような声を掛けていた。


 俺からすれば、三葉先輩がここにいるという事が信じられないとの思いで、そのように先輩に声を掛けた訳であるが……


 なぜか三葉先輩の方は予めそれを知っていたような口ぶりだ。



 すると三葉先輩は動揺する俺を他所に、いそいそと俺の隣の椅子を引いて



「相太くんの隣……。座らせていただきますね?」



「あっ!はい!どうぞ。」



 と、事後承諾のような形で俺の横に座り、ふぅと満足気な表情を浮かべている。


 ざわめく視聴覚室内の雰囲気など三葉先輩は気にしていないようで、「昼間のお弁当はどうでした?」などと笑顔で俺に話しかけてくる。


 その笑顔はいつも浮かべている笑みとは違う、俺にだけ向けられた、特別なもののように思えて……



「……っ!可愛い過ぎかよ……」



「ん?相太くん……。今何か言いましたか?」



「い、いえ!な、何も言ってませんよ!?」



 と、思わず呟いた先輩への想いを当の本人に聞き返されてしまい、俺はしどろもどろになりながらも何も言っていないと言ってそのように誤魔化す。


 先輩の笑顔が眩しくて、思わずそんな風に考えてしまったが、なにも俺だけに向けてくれる笑顔だなんて……、そんな風に自惚れてはいけない。



「(そんな特別な笑顔を三葉先輩から向けて貰えるように、俺自身が頑張る必要があるんだ……。

 麗奈のときみたいに降って湧いてきたようなお付き合いとは違う、自分から振り向いて貰えるようなそんな努力をしていくって決めたんだ!)」



 正直三葉先輩は少なからず俺に気を許していて、色々なドキッとされられる事や俺に気があるんじゃないか?と思うような行動をする所がある。


 しかしそれは、男友達が出来なかった反動でそうなっているだけなのかもしれないので、俺だけが特別だと自惚れて勘違いしているようではいけない。


 なので今は三葉先輩とのこの関係を大切にしながらも、しっかりとアピールする所ではアピールして、先輩に意識し貰わないといけない。



 まあ、でも……。とりあえず今は先程の俺の言葉によって心配そうな表情を浮かべる、三葉先輩の事をフォローする方が先だ。



「本当に意味のある事なんて、何も言ってないですよ?

 ちょっと呟いただけって言うか、心の声が漏れてしまっただけって言うか……。」



 と、俺はそう言って三葉先輩を宥める。


 少し誤魔化した言い方ではあるが、そこまで重要な事を呟いた訳ではないので、殆ど嘘はついていないはずだ。



 なので俺はそこまで気にしないでも大丈夫との思いで、そのように三葉先輩をフォローした訳なのだが……



「……本当に何もないのですか?相太くんは何か心配事があっても1人で抱え込んでしまうので、私はとても心配です……。

 ですから何か少しでも思う事があると言うのなら、なんでもない事でもいいので私に話してくれませんか?

 それとも……私では相太くんのお力になれませんか?」



 と、三葉先輩はそのように言うと、少しだけ寂しそうな表情をその顔に浮かべる。


 その表情からは、『俺に話を聞きたくても強く聞き出す事は出来ない……。でも、やっぱり俺の事が心配……。』といった、三葉先輩のそんないじらしさが感じられた。


 また、その言葉の端々からは俺への心理的配慮も感じられ、とても大切に、そして真剣に俺の事を心配してくれている事が理解出来た。



 そして極め付けは『私ではお力になれませんか?』との発言。


 これを言われてしまっては、俺はもう三葉先輩に……



「ーー先輩。ーーぎです……。」



「え……?今なんと言って……」



「……っ!で、ですから、『三葉先輩可愛い過ぎです!』って言ったんですよ!さっきの俺()

 ああ、もうこうなったら、さっきのも含めて洗いざらい、思ってた事を全て言わせて貰いますけど……。

 そもそも、先輩が可愛い過ぎるのがいけないんです!

 さっきも俺の隣の席に座る瞬間、ニコって満足そうに微笑んで……、あんなの見せられたら、ドキッとして可愛いって思っちゃうじゃないですか!

 それで、そんな先輩を見ていたら思わず本音がぽろっと溢れちゃって……そしてそれを、先輩が耳にしていて……。」



 と、思わず先輩に感じていた『可愛い』という想いを、なぜか先輩に逆ギレするような形でそのように言ってしまう。


 自分でも言っているうちに訳が分からなくなり、自身の本心をありのまま……。建前や口上の無いそのままの気持ちで先輩に伝え続けてしまう。



「だから……その……、三葉先輩の事を信頼していないから、先程の話を伝えなかったという訳ではなくて……。

 寧ろその……、先輩の事を信頼して尊敬しているからこそ、あそこで場違いな『先輩が可愛い過ぎてヤバい』という感想を伝えるのが恥ずかしくて……。

 だから先輩に話したくないとか、そういう訳では!」



 と、釈明に加えて色々恥ずかしい事まで、俺は三葉先輩に口走ってしまう。


 なんかもう、先輩に対して恥ずかしいやら心配させて申し訳ないやらで、様々な感情がごちゃ混ぜだ。


 そしておそらく、自分の今の顔は側から見ても分かる程に真っ赤になっている事だろう……。



 するとそれを聞いた三葉先輩の顔も、みるみるうちに赤く、真っ赤なりんごのように変化していって……



「す、すいません……!そ、その私……色々と勘違いしていたみたいで……。

 相太くんが麗奈さんの事で悩んでることや思っている事が、まだ他にもあるんじゃないかって思ってしまって……。

 それで相太くんが心配になって……その……。

 で、でも……ありがとうございます!相太くんにそう言って貰えて、私とても嬉しいです。」



 と、真っ赤な顔ではにかみながらも、そんな風に答える三葉先輩がこれまた可愛いくて……


 俺も同じ真っ赤な顔で「は、はい!」と、もの凄く動揺しながら答える他ないのだった。



 だがこうして2人、お互いに照れながらも顔を見合わせる時間は、恥ずかしくもありながらどこか心温まるような、そんな幸せな時間に感じられて……


 俺たち2人はそこが大勢の生徒から見られる視聴覚室であるという事を忘れ、お互いに熱く見つめ合うのだった。





 そうして、真っ赤になって見つめ合う2人に、視聴覚室内の生徒たちがざわつきながらも好奇の視線を送る中、皆とは違った視線を送る生徒が2名。


 1人は驚きを隠せないといった様子で動揺した視線を、もう1人は俯く2人を見て興味深そうな視線を、それぞれ異なる思いを胸にその2人へと送る。



 2人の心が同様に浮かべた、眩しいという気持ちを置き去りにして……







次話から本格的な体育祭実行委員会のスタートです。

体育祭の説明を委員長から聞く相太だが、ある可能性をその話から予感して……?


よろしければこの話に引き続き、次話もご覧下さい!


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