何とか急ぎ、職員室へ『合法ロリは呼び名にうるさい』
更新遅れました。
少しだけ長めの話です。
一部内容を変更しました。(主に先生の説明描写)
「はぁはぁ……はぁ~。なんとか、HRの時間までには間に合ったか……。
三葉先輩と一葉ちゃんには悪い事をしたとは思うけど、こればかりは早めに気がついて良かったな……。
黒板の方はまあいいとしても、日直日誌は朝のうちに取っておかないと、うちの担任……キレてくるからなぁ。」
と、俺は日直日誌を職員室に取りに行く道すがら、キレやすいうちのクラスの担任、望月 朱音先生の性格を思い出して、そんな事を一人呟いた。
あの人は、基本的にはテキトウな感じの先生なのだが、妙に生徒に絡むのが好きな先生で、生徒の個人的な記録を残す日直日誌の存在を重く考えているのだ。
なので、その日誌を朝イチまでに取らなければ……、HR後に朱音先生からお叱りを受けるのは必至となるだろう。
そして、ようやく俺は職員室に辿り着いたという所で、さっき校門前で別れた、先程まで一緒に登校していた2人の事をふと思い出した。
今朝の通学路、俺は三葉先輩と一葉ちゃんの3人で仲良くお話をしながら登校していたのだ。
しかし途中で俺は、自分が本日の日直であったことを思い出し、一人先に学園に行かせてもらった。
そして先に行く事によって、何とか時間までに間に合って、このように日誌を取りに来ているという訳だ。
まあでも俺は去り際に、三葉先輩と一葉ちゃんには改めて昼休み会う事を約束したので、名残惜しくはあったが後悔の方はあまり無かった。
「(まあ客観的に見れば、少しの間でも三葉先輩ほどの美人や一葉ちゃんみたいな可愛い女の子と一緒に登校出来ただけでも、男としてはラッキーと言わざるを得ない状況だったんだろうな。
別に俺は、2人の見た目が可愛くて綺麗だから一緒にいたいと思う訳ではないが、野郎どもからの嫉妬の視線は今まで以上に、おそらく麗奈のとき以上になるのかもなぁ……。)」
と、俺は今日の朝の登校時に感じていた視線の多さを思い出しながら、そんな事を思って少しだけ溜息を吐きたくなる。
だけど……
「(また、麗奈と付き合い始めた時みたいな、面倒くさい視線や嫌がらせみたいなものは出てくるんだろうが……
俺は俺を認めてくれる人たちの事を、ちゃんと大切にしていくってそう決めたからな。)」
そうだ。
俺はあの時、先輩の手を取ったあの瞬間からちゃんと前を向くって決めたのだ。
麗奈ばかりで見えていなかった、自分を認めてくれていた人たちの想いに応えるために。
「(それにもっと知りたいと……、もっと仲良くなりたいと思えるような人に出会う事が出来たからな。)」
三葉先輩や一葉ちゃん、それに静恵とだって今まで以上に仲良くしていきたい。
いろんな経験を共にしながら、笑ったり、泣いたり、喜んだり、悲しんだり。
そんな風にいろんな感情を共有して、共に前に進んでいく、そんな風な関係でいられたらと俺は思う。
だからこれからは、心を入れ替えて前に進んで行く。
「(って……、なんかこんな風な決意を前もしたような気がするな……。
自分のスタンスを見つめ直す事は必要だと思うが、これはちょっと思いつめ過ぎ?
まあでも、それを考える事で今の時間の大切さが改めて実感出来るからな。)」
と、俺は改めて心の中で自身の今後のスタンスを考えながら、職員室のドアを開け、その中に足を踏み入れる。
「失礼します!1-Bの相川です。日直日誌を取りに来ました!」
俺は元気よく声を出して職員室に入り、自身が入ってきた目的をそのように端的に伝える。
こういうのは、ハッキリした声でハキハキと目的を伝えることが大切だ。
もし仮に声が小さいと、扉周辺の先生方に「えっ?なんだって?」と、聞き返されてしまう事がある。
そんなことになってしまえば、大した用事でもないので、とても気まずい雰囲気になるのだ。
「(そんな事もあったから、中学の時から職員室に入るのはなんだか抵抗あるんだよなぁ)」
と、俺はそんな在りし日の苦い思い出を思い出しながら、日直日誌を手に取ろうと1-Bの棚に手を伸ばしたところ……
ヒョイ!
俺がその日誌を手に取る手前、誰かが俺が取ろうとしていた日誌を横から取り上げた。
俺は「誰だ?」と思い、隣に目を向けると……
「はい?何をしてるのですか?朱音先生……?」
俺が半眼で眺めるその先には……、イタズラが成功して喜ぶような、どこか少年を思わせる表情を浮かべた我らが担任、望月 朱音先生の姿がそこにはあった。
「何ってお前……、可愛い教え子と戯れてるだけだろ?
そうカッカすんなよ!相川!そんなすぐに怒ってたら、女の子にモテねーぞ?お前?」
と、相変わらずニヤニヤした笑みを浮かべながら朱音先生は、俺のことをそう言っておちょくってくる。
幸いなことに、もうすぐ授業が始まる時間なので他の教職員は職員室に居なかったが、他の教師が見れば確実にいい顔をしないような言動だ。
この先生は基本的にテキトウな言動をする事で有名な教員なのだが、授業自体はマトモに行う教員なので……、他の先生方からは『少しだけだらしない所のある先生』という評価で落ち着いている。
しかし今は、職員室には俺と朱音先生しか居ないので、その最低限の体面さえ気にしていない様子だ。
「はぁ……。余計なお世話ですよ。朱音先生。
もう授業まで時間無いんですから、遊んでないで、早くそれをこちらに渡してください。」
と、俺が至って当たり前の主張を朱音先生に述べた所、朱音先生はキュッと眉を寄せ、不機嫌そうな顔になり……
「ふん!あたしの事を朱音先生なんて他人行儀の名前で呼ぶ相川の言うことなんて、聞いてやる必要なんてないね!
あたしの事は親しみも込めて、朱音ちゃんと呼べっていつも言ってるだろ!」
と、朱音先生もとい朱音ちゃんはそう言って、ズビシッと俺の先生に対する呼び名を槍玉にあげて、先生は俺への日直日誌の受け渡しを拒否してくる。
中学からの唯一の持ち上がりの教師、この望月 朱音先生は俺たちが中学1年生の時からの担任の教師で、これまでの中学3年間俺たちと共に時間を過ごして来て、これからの高校3年間も共に過ごす予定の先生なのだ。
そしてそんな、中学からの生徒たちと距離が近い朱音先生は、自身のことを「朱音ちゃん」と、中学からの持ち上がりクラスである1-Bの生徒には、特にそう呼ぶように自ら呼び掛けている。
なんでも、生徒との距離が近くないとイジメや悩みなど、細かい生徒の変化に気づけないからだそうだ。
なので、この担任の1生徒である俺に対しても、このように「朱音ちゃん」呼びを勧めてくるのだが……
「嫌ですよ。俺だけが先生の事を朱音ちゃんなんて呼ぶのは……。
呼んでるのは女子生徒だけだし、俺がそんな名前で先生を呼べば、他の野郎どもから絶対殺されます。」
と、俺は断固として朱音先生を「朱音ちゃん」と呼ぶ事を拒否する。
確かにこの教師は「朱音ちゃん」と呼ばれるにふさわしい、小さい身体と幼く聞こえるロリボイスの持ち主だ。
そのため、女子生徒からは本人が推すように、幼い身体と声を持つ教師……合法ロリの「朱音ちゃん」と広く呼ばれている。
しかし、この呼び方は女子であるから大丈夫なのであって、もし仮に男子がそう呼ぶともれなく女子から白い目、若しくは冷たい目で見られてしまうのだ。
「このロリコン野郎」という、謂れのない誹りを受けながら……。
なので男子一同、朱音先生の事を「朱音ちゃん」とは呼ばないようにと、暗黙の了解のようなものが存在しているのだ。
もし、誰か一人でもそう呼んでしまえば、先生の「朱音ちゃんと呼べ!」という要請を断りづらくなるという理由も含めて。
だから俺も含めて呼ばない訳なのだが、中学の頃から俺に着々ちょっかいを掛けてくるこの教師は……
「はん!そんな事関係ないね!あたしは朱音先生なんて堅苦しく呼ばれるのが1番嫌いなんだ。
だからあたしの教え子の……、しいては、あたしが手をかけた生徒であるお前には、絶対にそう呼ばすと決めている。
さぁ!早く朱音ちゃんと呼んで、あたしを満足させないと、日直日誌を渡す事は出来ないぞ?うん?」
と、朱音先生は過去の出来事、俺が先生にお世話になった事を引き合いに出して、そのように説得してくる。
これは参った……。その話を出されては、俺も強くは出られない。
俺は中学3年生の夏、とても朱音先生にはお世話になっているのだ。
そしてその事は、今でも先生に深く感謝していることでもある。
と、そんなどうしようもない状況に立たされて、俺が選んだ解答とは……
「はぁ……。分かりましたよ。朱音ちゃん。これでいいんですか?もう……。
流石に外ではそうは呼びませんけど、2人だけの時なんかは朱音ちゃんと呼びます。それでいいですよね?朱音先生?」
と、かなり譲歩した案を俺は朱音ちゃんに提案する。
さっきも言った通り、生徒たちの前でそう呼ぶのは厳しいと思うが、これであれば、見つかりさえしなければ大丈夫な範疇だ。
俺がそう考えて提案した案に、朱音ちゃんは……
「チッ!まあ、いいか。今回はそれくらいで妥協してやる。
普通だったら、そう皆んなの前でも呼ばせて、相川が男子どもから吊るし上げられてるのを楽しむ所なんだが……、片割れとの事もあるから、それは見送ってやる。
ほらよ、日直日誌だ。もう今日みたいにギリギリで登校してくんなよ?」
朱音ちゃんはそう言って、ホイッと日直日誌を俺の手に投げ込んでくる。
「ちょっと先生!投げないで下さいよ!」と、俺が抗議しようと朱音ちゃんを見ると、朱音ちゃんは俺から背を向けて反対方向に向けていた顔を、一度だけチラリとこちらに向け……
「あぁ、あとこれはお節介になるかもしれないが……、片割れの事についてはお前も注意しとけよ。
お前には幸い理解者が近くにいたようだが、アイツには今、それ近いものが本当の意味では存在しない。
どうせお前の事だから、アイツに心残りや思い残しがあるだろうし言わせて貰うが、アイツから手を離してもいいが、心だけは離れさせるな。アタシから言える事は唯それだけだ。」
と、その言葉を俺に吐き捨て、朱音ちゃんはスタスタと職員室を後にする。
俺はその言葉に立ち止まり、日直日誌を握りしめ呟く。
「手を離しても、心は離れるな……?」
そんな当て所ない問いが、無人の職員室に虚しく響いた。
そうして、その直後予鈴のチャイムが鳴り我に返った俺は、急いで先生が向かった教室……1-Bの教室に早足で向かうのだった。
ここで新キャラクターの登場です!
合法ロリ教師……、一体彼女の担うその役目は如何に。
進捗が遅いとは思いますが、そこは気長にお考えください。
(あんまりサラッと書いて、軽い描写になるのが嫌なので)
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