新しい日常へ『前を向いて歩こう。自分のことを認めてくれる人の為に』
励ましタイム
少し加筆しました。
バンッ!!!
「なにそれ!?信じらんない!そんなの絶対におかしいよ!お兄ちゃん!」
と、妹の静恵はそう叫ぶと…、ファミレスの…それも運ばれてきた料理が数多く並ぶその席を勢いよく叩いた。
ザワザワザワ……
すると…その席を叩く音と静恵の大声に反応した人たちが、「なんだ?」「どうしたの?」と口々に呟き、こちらの様子をチラチラと伺ってくる。
まだ店員のお姉さんはこちらに来てはいないが、厨房の方からも何人かの店員がこちらの方を見てきていた。
もしかすると、これ以上静恵が声を上げて仕舞えば…、俺たちは店から放り出されてしまうかもしれない。
そう思った俺は、とりあえず静恵のことを宥めることにする。
「し、静恵!俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど…、もう少しここでは静かにしてくれ…
やっぱり、他のお客さんもこっちを迷惑そうに見てるからさ…」
と、俺は静恵を落ち着かせるように…、その席を叩いた静恵の手を軽く握り、周りを気を遣って小さな声でそのように注意する。
すると…それを聞いた静恵はハッと辺りを見渡し、自分たちが周りの人たちから注目されていることを理解すると…、「ごめんなさい…」と小さな声で俺に謝罪し、その顔を俯かせる。
その顔は本当に申し訳なさそう表情で…
なんだか…見ているこちらの方が心配になってきた。
でも俺は、そんな風に俺のために声を上げてくれた静恵に、そんな顔をさせておきたくはなくて…
「静恵…ありがとな。お前がそんな風に心配してくれるから、俺の重かった気持ちもだいぶ楽になった。
周りの人からしたらうるさかったかもしれないけど…、お前がそんな風に声を上げてくれて…正直俺は嬉しかった。」
と、俺はそう静恵に伝えると、感謝と慰めの意味も込めて…、くしゃくしゃっと静恵の頭を軽く撫でる。
すると、それを聞いた静恵の暗くなっていた表情は…、その言葉と行動によって少しだけ明るくなるのだった……
そして再び落ち着いた雰囲気になった俺たちは…、運ばれていた食事の方に、ぼちぼち手を付けていく。
その間にも…、少しだけ先程の『別れた話』についての、その話の続きについてボンヤリと思い出す。
「(俺は俺なりに、麗奈との付き合いも頑張ってた方だと思うんだけどな…
今となってはもう遅いんだが…、あの頑張ってたこととかが、麗奈からするとウザかったのかなぁ)」
と、冷静になって俺と麗奈との付き合いを思い出してみると、もしかすると…俺の方にも悪いところがあったのかもしれない。
人生初めての彼女で…、なおかつ、あの学園の憧れの生徒会長と付き合えたということもあり、当時の俺は少々舞い上がっていた。
そのため、彼女のためと思って動いていたことや彼女と会うために色々犠牲にしていた事も、もしかするとそれは、彼女からはしつこいと思われていたのかもしれない。
と、そんな風に考え出すと…、どんどん俺の良くなかったかもしれない所などが思い出される。
「(やっぱり…、俺と麗奈では釣り合わない関係だったのかな…
同じ人間でも、あっちは学園1の美人でアイドル的存在…、そして「生徒会長さま」ときている。
それに比べて俺は…、成績も並みで、運動神経もそこまで良いわけじゃない。
少し良い所をあげると…、優しいとこって静恵には言われたけど…それは妹の身内びいきだろうしなぁ。)」
そもそも、立場の全然違う2人…、付き合えた事自体が奇跡みたいなものなのだ。
関係の始まりは、なぜか彼女の方から俺に「付き合いましょう」と言ってきて、俺がそれを了承して始まった訳なのだが…
もしかすると俺と付き合ったのは、周りからの告白を断るための…、いわば隠れ蓑を作るための行動だったのかもしれない。
ていうか…、その説が1番濃厚まであるのだ。
「なんかそう考えると…、俺がやってきた事って全部無駄だったんだな…
別にそれを恨んだりはしないけど、ちょっとだけしんどいな…、今までの全部が意味なかったなんて思うのは。」
と、俺は少しだけ悲しさがぶり返して、心に浮かんだその気持ちがポロリと言葉となって…その口から溢れてしまう。
自分の行動が相手にとって無意味であり、煩わしいだけの行動だったのかと思うと、少々やり切れないような…そんな気持ちになる。
そして俺は、再び後ろ向けになりかけたそんな気持ちで、水にドンドン溶け出し…その重みを失ってスルスルと沈んでいく、カップの中の氷のことを眺めていると…
「そんなことない!そんなことないよ!お兄ちゃん!
今までお兄ちゃんが頑張ってたこと、その全部が無駄になる事なんて絶対にないよ!
私はお兄ちゃんがその人と釣り合うために、少しずつでも勉強を頑張ってたことだって知ってる!
運動だって…、体力ないってその人に思われないように、私がいない間なんかに走り込みに行ってる事だって知ってるよ!
だからそんな風にその人のために頑張ってきた…、そんなお兄ちゃんの頑張りが…、その人一人の否定だけで全部無駄になる訳なんて、絶対にない!」
と、それまで食事後のコーヒーを飲んでいた静恵が、俺の弱気なつぶやきを聞いて…、そう必死な様子で俺のことを元気付けてくれる。
流石に2回目という事もあって、声のボリュームは大分絞っていて、聞き取りづらい声ではあったが…
その言葉はとても暖かく、優しい言葉で…、俺の沈みかけていた心にはとても大きく、そして力強い言葉として響いた。
「だから…ね?元気だして?お兄ちゃん。
もしその人が…、何も知らずにお兄ちゃんのことを否定してきたとしても…
私はちゃんとお兄ちゃんの頑張りを知ってるし、ちゃんとそのことを認めてるんだから!」
と、静恵はそう言うと…、俺が静恵に先程したように俺の頭をくしゃくしゃとしながら、その髪を撫でてくれる。
その手は多少乱暴で荒々しいものではあったが…、確かに静恵の温かさを感じる…優しい手つきだった。
「(そっか…、そんな風に俺を認めてくれてる人がちゃんといるのに、こんなにくよくよしてるなんて申し訳ないよな…)」
と、俺はそう思うと、なんだか少し元気が出てきて…
それでいて、妹を相手に慰められているというこの状況が、なんだか恥ずかしいような気持ちになる。
「はは!そうかそうか!静恵は俺を認めてくれてるんだな!だったらこんな風に…くよくよなんて、していられないな!
それに…思春期真っ只中の妹に認められてる俺って、結構いい男ってことだよな!」
と、気恥ずかしくなった俺は冗談めかしてそう言い…、その仕返しとばかりに静恵の頭もくしゃくしゃにする。
突然の俺の逆襲にポカンとしていた静恵だったが…、俺がやっと立ち直ったことを理解すると、小さく微笑み「やめてよ!お兄ちゃん」と、くしゃくしゃに頭を撫でる俺の手を剥がそうと奮闘し始める。
そして俺はそんな静恵を見ながら…、これからも…これまでの努力を続けて行こうと思った。
「ちゃんと自分を認めてくれる人がいる」その事だけでも、これからも頑張っていけるような…、そんな気がした。
「……ありがとな…静恵。」
「う?なによ?お兄ちゃん?」
……これからは麗奈のために頑張るんじゃない、俺が俺自身のため…、そして俺を認めてくれる人に恥ずかしくないように生きていくために、頑張っていこうと、そんな風に思うのだった……
なんか説明描写が多くなる気が…
会話多めの小説書いてる方たち、尊敬します!
マジで…