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ボクから見た彼女は『檻の中から桜を見た小鳥は、その行く末を気に掛ける』

遅くなってすいません


今回は、詩織視点です

 

「………なるほど。それで麗奈は昼休みに一人で荷物を運んできて、いつも生徒会に顔を出していた彼は麗奈とは一緒に来てなかったんだね……。

 噂のことはボクも少し耳にしていたけど、別れたって話は本当のことだったんだ。」



 ボク、長谷川 詩織(はせがわ しおり)は、後輩でありながら生徒会長でもある友人、黛 麗奈(まゆずみ れいな)の話を聞き終えてそう呟いた。


 ボクは放課後、生徒会の活動を始める段階からどこかぎこちない麗奈のことを気にしていた。


 他の役員たちもそのことに気付いてはいたようなのだが、麗奈が彼氏と別れたことを噂で耳にしていたため、彼女の異変について誰も触れなかったみたいだ。



「(まあ……でも、みんなが触れなかったからこそ、ボクが麗奈に話しかけた訳だしね……。)」



 そしてそんなボクの呟きを聞いた麗奈は、少しだけ顔色を曇らせて……



「そうです……。確かに私は、彼に私から交際の終わりを告げました。

 でもそれはっ!彼が嫌いになったとか、そういう訳ではなかったのです……。

 彼と一度別れて、もう一度元の関係に戻れば、また彼が私のことを()()に見てくれると、そんな風に思ってて……。でも現実には、そんなことにはならなくて……。」



 と、そこまで言って……、麗奈は顔を俯かせる。


 ぎゅっと握りしめたその手からは、自身の行いへの後悔が見て取れる。



 おそらく麗奈は彼と会って、会話して初めて気が付いたのだろう。


 彼が自身を見る悲しそうな瞳に……、別れたにもかかわらず仕事の手伝いを頼んだ自身を見る、関わること自体を嫌がるような、どこか怯えるような彼の瞳の存在に。



 それは普通であれば……、別れてすぐの相手に手伝いを頼むなんて非常識だし、何より図々しいと思われる行動だろう。


 ボクが彼の立場であっても嫌がるだろうし、もしかするとそれを言ってきた相手に、ヒドイことを言ってしまうかもしれない。



 それが()()()で、()()()()()()()()()()()()な相手なのだと、よく理解していなければ……



「たぶん……、彼から目を逸らされてしまった。だよね?

 麗奈のことを()()として見てもらうどころか、彼から目を逸らされて拒否されるという形で……。

 それで、彼と再び()()からやり直そうと伝えるための誘いであった昼の手伝いの話も、同じく拒否されてしまった……。

 こんなところかな?麗奈の昼休みの行動とその真意は。」



 と、ボクの知っている麗奈の内心とその行動原理を検討して、そのような推理を麗奈に伝える。



 おそらく麗奈が彼のことを素っ気なく振ったという噂も、麗奈自身、彼の傷つく顔が見ていられなくて早足に……、そして彼の返答を待つことなく立ち去ったことが、そのように周りから受け取られてしまった結果なのだろう。


 自身の想いとは裏腹の行動、それがより一層麗奈の心に痛みを与え、そしてその行動で彼が傷ついたという事実が、麗奈の足をその場から離れさせた。


 そんな風に色々と麗奈には、言葉足らずで不器用な所がよくあるのだ。



 これは、同性で数年生徒会を共にしたことのある()、彼女と()()()()()()の私だからこそ分かるその考えなのであって……


 普通の人間からすれば冷たく、そして素っ気ないと誤解されることになるような対応なのだ。



 そして現に、その行為を受けた普通の相手、それも異性である彼からすれば、到底理解できないし冷たい行為にも見えたことだろう。



 そして実際にそんなボクの予想が当たっていたのか、麗奈はその言葉を聞いて驚きの表情を浮かべ、「なぜ分かったのですか?」とボクに問いかけてくる。



「ど、どうしてそれを知って!誰にも、相太にもまだ言っていないことなのに……。

 なんで詩織先輩には、私のそんな所まで理解出来てしまうのですか?

 もしかして本当に……、詩織先輩は魔法使い?」



 と、麗奈は真剣な顔をしながらも、そんな突拍子のないことをボクに向かって言ってくる。


 いくらボクが麗奈の思考を読んで、そう推理したからといっても、魔法使いとは……、的外れもいい所だ。



 まあ一部の人間からは、そんな風に言われることもたまにはあるが、それはボクが人より鋭い所があるからそう言われる。ただそれだけの事なのだ。



 とにかく今は、そんな魔法使いモドキだと言うボクに頼ってきた麗奈のためにも、少しだけ気を引き締めてアドバイスしておく。



「まあ、なんで分かったのかは別にいいじゃないか。

 それより今は『どうして麗奈がそんなモヤモヤした気持ちでいるのか?その原因はどこにあるのか?』について考えることの方が先でしょ?

 じゃないと、また同じようことでモヤモヤした気持ちになるかもしれないよ。

 それに彼に逃げられてしまったことは、この際置いておくとしても……、そのモヤモヤの原因を知り、自分の本当の気持ちに向き合って行動しなければ、この後麗奈は、必ず後悔することになると思うしね。」



 と、少し大げさかもしれないが、今後の麗奈と彼の関係を心配して、ボクは麗奈にそのように伝える。



 実際彼がどのように麗奈に対応して、その場から離れて行ったのかは、今のボクには分からない。


 けれど、それをただ呆然と見送るだけになっていた麗奈の気持ち。

 そのモヤモヤする気持ちの正体ぐらいは、ボクにも推測することが出来る。



 そしてそれを考えると同時に、ボクは理解していた。


 その気持ちが心に浮かんだ麗奈の絶対に乗り越えなければいけない壁。その矛盾の存在を。



 しかし今の麗奈はそれ以前の問題なのだ。


 自身が彼に対して思ったその気持ちの正体、彼を引き止めるべく一歩前に踏み出すことが出来なかった、その理由を知らない、今の麗奈には。



 そしてボクのその言葉を聞いて、「モヤモヤの原因?」と呟き、いまいちピンときていない麗奈に少しだけのヒントを与える。



「ちょっとピンと来てないみたいだから、少しだけヒントを与えるね?

 想像してみて?『彼が麗奈とは別の女の子、それも麗奈と同じかそれ以上に綺麗で可愛い子と、手を繋いで二人仲良く歩いている所を。』

 もしそれが想像出来たなら……、今麗奈は想像してどんな気持ちになったのかな?

 ボクの予想では、きっと今麗奈は『悔しい』と感じたはずだよ?違う?」



「……っ!そ、そうです……。

 詩織先輩の言う通り、悔しいと感じました。

 ほ、本当になんで分かるんですか……?」



 と、ズバリその気持ちを言い当てられた麗奈は、ボクのことを信じられないものを見る目で見てくる。



 でもそれは、麗奈からすれば信じられないことなのかもしれないが、女の子であれば誰でも……


 もしかすると男の子でも、その気持ちを理解することが出来るかもしれない……。そんな簡単で単純な気持ちだ。



「そりゃ分かるよ。だってそれは、麗奈が彼の……。

『完全下校時間です。教室にいる生徒は速やかに帰宅をお願いします。繰り返します。完全下校時間です。教室にいる……。』ごめんね。もう時間みたいだ。」



 と、ボクが麗奈にその気持ちの核心に繋がる言葉を告げようとした、ちょうどそのタイミングで、完全下校時間を告げるアナウンスが校内放送で流れてきた。



 この放送が流れてから10分以内に外に出ないと、校門が閉められ、外に出られなくなってしまう。


 そのため、早く生徒会の鍵を閉めて、外に出なければならない。



「はい。まだ話足りませんが……、時間なのでしょうがないです。

 今日は私の相談に乗って頂いて、本当にありがとうございました。

 まだ、はっきりしない部分もありますが……、自分でも一度気持ちを整理したいと思います。

 この後最後の戸締りを私が行いますので、詩織先輩はどうぞお先にお帰り下さい。」



 と、麗奈はボクに感謝の言葉を述べてから、先に帰るようにボクにそう指示を出す。



 ボクはそれを拒否する理由もなく、麗奈に言われた通り、先に生徒会を後にする。



 そして誰もいない廊下で一人、ポツリと呟いた。



「魔法使いか……。そんな者に、本当になれると言うのなら……、ボクはその力で()()を手に入れるよ」と。



 そんな夜に鳴く小鳥の声を、誰も耳にすることはなかった。





投稿遅れてすいません…


今回の話を出せるレベルにするまでに、随分時間が掛かりました…申し訳ありません


やっぱり別の人視点はメチャクチャ難しいです…


それでも、この話を少しでも面白い・続きが読みたいと思って頂ければ、ブックマーク・評価をお願いします!

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