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結果から言うと、俺の魔力は何10倍にも跳ね上がっていて、当たり前といえば当たり前だが設定した魔法は問題なく使える。スキルの方はステータスで付いているのは確認出来ている。
今まで魔法が基礎魔法しか使えなかったり、魔力やらの基礎値があまりにも低かったのは俺の記憶が覚醒するまでは設定した魔法を使えないため、それが弊害となっていたことがうかがえる。
学園では落ちこぼれ扱いを受けていた。エルスガレット王国国営の魔導士育成学園のため基本は学習意欲の高い生徒しか入学しないので落ちこぼれなんかに構っていられないのだが、下級貴族のくせに王からの信頼が厚く、収入が上級貴族をも上回るときたら目の上のたんこぶだ。
そのうえ、目はキリッとしているが高圧的な印象は与えず、瞳と髪は綺麗な純黒で、柔和な顔立ちをしていて、俗に言う、イケメンで、頭脳明晰というおまけ付きだ―これはキャラクター設定時いポイントを使ってイケメンと天才にした―。
そのため、男子からは軽いいじめを受けていた。何故、軽くで済んでいたのかというと、女子には好かれていたためである。
男子という生き物は単純である。女子に嫌われたくないが故に表立ってはいじめてこない。
だから、俺は学園に行く際は今も通っているアレシリア大通りを良く通る。
アレシリア大通りは人通りが多く、冒険者ギルドなどの国営機関や商業施設が立ち並び、このエルスガレット王国の建国に多大な貢献をした英雄アレシリアの名をあやかっているらしい。
色々な考え事をしていたらいつの間にか学園の入口の大きな門についていた。国営のため門には王家のわしの紋章があしらわれている。
門番に学生証を渡し、門をくぐると女子たちが挨拶をしてくれたので手を振って返す。それだけで喜んでくれる。神様と出会った時にも感じたが、美形というだけで得をするみたいだ。
綺麗に手入れされた花を横目に校舎までの道を歩く、男子は相変わらず冷え切った視線を送ってくるが、今の俺の実力を知ったらどんな顔するか楽しみだ。
「アレス君、おはよう、朝からいいことでもあった?」
挨拶をしながら、にこやかに手を振ってくる。明るいブロンズの長いストレートヘア―、顔は小さな卵型をしていて、大きく綺麗なブロンズの瞳。桜色の唇が黄金比を織り成している。スタイルも良く、出るところは出ていてモデル体型だ。
黒を基調とし胸元に赤色のリボンが着いている制服もみんなと同じはずだが彼女が着ると違うものを着ているんじゃないかとさえ思わせられる。
彼女はエルスガレット・ミラーナといい、王家の第2継承者で学年代表を務めている。魔導士としての素質もすごく高く、容姿端麗、成績優秀、品行方正とこちらは非のつけどころのない完璧人間なのである。
落ちこぼれだった俺の面倒をよくみてくれた人で、とても癒されている。
「ミラ、おはよう、魔法がある程度使えるようになったんだよ」
「本当!?それはよかったよ」
まるで自分のことの様に喜んでくれるミラに少し罪悪感を抱きつつも、ミラのために頑張っていこうとは思えた。
「そういえば3日も学園を休んでいたけど体調は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、もう元気が溢れ出て困るくらいだよ」
元気だということをアピールするためにピョンと跳ねてみる。ミラが微笑を浮かべる。少し笑っただけなのに花が咲いているように感じられる。
「今日から転校生が来るらしいけど、どんな子かな?」
「そうなんだ、こんな時期に珍しいね」
実際、今はモウラスの季節で入学式があったのが2か月前のクーノの月だ。
「そうだね、優しい人だといいね」
どんな子かなっていう質問を無視したことに対しての意地悪からか優しい人の部分を少し強調された気がする。
一応、今は落ちこぼれだから、なんて答えれば言いかが分からない。偏見のない人だとかいじめてこない人がいいとか言ったら、自分で落ちこぼれだってことを認めている気がする。
「ミラと同じくらい、優しい人だったらいいね」
「私!?あ、ありがとう?」
俺の返答が少し斜め上だったからか、少し声が上ずっている。返答としては悪くなっかたのだろう、今さっきまではふてくされていたのが、今では嬉しそうに会話をしている。
女性の気を損ねたら褒めておけばいいのだろう。
俺は楽しく会話をしながら教室まで向かった。